見出し画像

笑い

"笑いはこの泡のように生まれるのだ。それは社会生活の外面において、軽い謀反のあることを告知する。それはそれらの動揺の流動的形態を即座に描き出す。それもまた塩分を含んだ泡である"1900年発刊の本書は"生の哲学者にしてノーベル賞受賞者である著者が古典喜劇を題材に【笑いの要素や社会的有用性】を哲学的に論じた刺激的一冊。

個人的にはドイツ系哲学者の論理的で隙のない文章は確かにわかりやすくも多少の息苦しさも覚える為に癒し的に度々手にとってしまうのが『生命の跳躍(エラン・ ヴィタール)』も有名な著者作なのですが。この本に関してはまだ未読だったので今回手にとりました。

さて、そんな本書はまず人々が笑いを好む事に着目して、笑いの発生には【人間的であること、無感動・無関心、関係性が必要な事】を指摘したり、社会全体が緊張をもって次第に均衡的な流動性や優美さを求め、その延長として【普遍的、個別性のある芸術】があるのと反対に笑いは機械的ぎこちなさを『繰り返し』『関係ない事柄の交差』『言葉の創造』といった形で類型的、反復できる事で【社会的放心として有用な機能を果たしている】事を述べているわけですが。当時においては非常に先駆的な内容だとは思いますし、相変わらず美しい文章ですが。その読後感は【率直に言って難解】です。(モリエールの古典喜劇を知っているのが前提な感じですし。。)

とは言え、著者が【楽しみながら本書を書いている】ような印象が時間を超えて文章から伝わってくるような感覚は割と意外で新鮮でしたし、また題材にしている古典喜劇を【無理やり吉本新喜劇のお笑いに置き換えて】本書をやわらかくイメージしながら読み直すと、何となくではありますが私なりに咀嚼できた気がしたり。ええ何となくですが(笑)

笑いの積極的効果に【いち早く着目した本】として、しばしば引用される一冊として。またお笑いについて哲学的にうんちく話をしたい方にもオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?