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海峡に立つ

"私にすればイトマンも石橋も、納得するわけにはいかない冤罪である(中略)己の都合だけしか考えない者達の嘘で私は貶められたが、私は嘘などつけない。"2019年発刊の本書は、かって"戦後最大の黒幕"と呼ばれつつも"日韓のブリッジビルダー"としても尽力してきた著者による初の自叙伝。

個人的には、お店のある中津出身の"有名人"という事で、あらためて向き合ってみようと手にとりました。

さて、そんな本書は大阪人なら誰もがニヤリとしてしまう、若かりし時に【道頓堀から飛び降りる】描写を序章にして、中津の長屋での貧しい暮らしからヤクザ社会へ、また狂乱のバブル経済の中で東京、京都と政財界で活躍(暗躍)するもイトマン事件で逮捕され、釈放された後に韓国を拠点に活動している現在までを【著者自らの視点】で振り返っているのですが。

まず、前提として。『イトマン事件の真相や著者が悪人かどうか』は、私は関係者でも何でもないので【一度置いておくとして】自分にとって、今の日常で馴染み深い中津はもちろん、大阪ミナミ、京都を舞台にして、著者が語る『これまで』は、地名に加えて政治家や財界人の実名がばんばん登場してくる事もあり、何とも【リアリティのある異世界】を読まされているようで、不思議な気持ちになりました。

また、自叙伝というわけで当然に?【口約束を守り、やるといったらやる】と暴力から札束を振り回して行動する【昭和的な男気溢れる】半生であった事が本書では著者により"何度も繰り返し強調されている"わけですが【その真偽も置いておくとして】しかし、何かしらの魅力溢れる人物であったことは間違いないのだろうし、著者なりに【日本と韓国の架け橋】になろうとしてきた、している想いは素直に認めなければいけない。と『私は』思いました。

イトマン事件の真相。というより著者自身に興味がある誰か、また戦後からバブル崩壊までの政財界の闇を感じたい人にオススメ。

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