古代への情熱
"彼は学説にしばられず、専門学の伝統にわずらわされなかった(中略)穴だらけのアウトサイダーであった。しかしこれらの欠陥を予知の眼力で埋め合わせて、さまざまな問題の核心をとらえ、必要な証拠物件を瓦礫の中から明るみに出したのである。"1891年発表の本書は考古学史上、もっとも劇的な成功を遂げた著者による『小説的』自叙伝。
個人的には冒険や探検に憧れた童心を振り返ろうと、気分転換的に本書を手にとりました。
さて、そんな本書は二章構成になっていて。前半4分の1位は【発掘作業に取り組むまで準備期間】としての(おそらくは虚飾入り乱れた)著者自身による自伝。そして後半は関係者により書かれた【年代順に整理された発掘作業記録】となっているのですが。
過去だけでなく現在でも経営者や政治家、アスリートや芸能人が【成功してから】往々にして【過去を美談化、ねつ造して】自伝をファン向けに出版することも多い事から【資料としての信憑性はとにかく】それほど本書の自伝部分をデタラメ的に目くじらを立てて非難する必要はないと個人的には思いますが。しかし、驚異的な十数カ国語をあっという間に取得する【語学能力の高さ】には(記述通りなら)驚かされます。
また最後の『後記』において補足されている、いわゆる【素人、アウトサイダー】として【自ら稼いだお金で】発掘作業に取り組み、自説を発表していくものの。当時においても【専門家から無視されたり、非難されていた】状況を理解してくると、前半部分の自伝において強調されている【トロイア発掘自体への純粋な情熱】も、どうしても伝えたかったのかな?と好意的な見方へと変化しました。
考古学好き、小説的な自伝好きな方へ。またギリシャ旅行へのお供の一冊としてオススメ。
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