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市民の図書館

"図書館員の専門性を、組織的、集団的に形成していくことが必要である。それを通して、住民の"読む自由"をまもりひろげる活動を追求することにより、図書館は社会の民主的な進歩発展の基礎を培うことに貢献することができる"1970年発刊の本書は国内図書館の普遍的運営モデルを提示したバイブル的一冊。

個人的には立場こそ違えど、本に関わる一人として『図書館』の重要性については当たり前だと考えているが、一方で、存在や役割についてちゃんと考えてこなかったな。と反省する気持ちがあって、名前だけは知っていた本書をようやく手にとりました。

さて、そんな本書は貸出と児童奉仕を重視した活動で注目を浴びていた日野市立図書館の活動を中心に1963年刊行の『中小都市における公共図書館の運営(中小レポート)』をより理論化、フィードバックして日本図書館協会より刊行された『中小公共図書館運営の指針』として。『公共図書館とは何か』に始まり、図書館の現状を踏まえて【貸し出しや児童サービスを広げるためには】また、図書館は『建物』を単に指すのではなく"資料提供という働きを行う公的機関である"として【組織網や図書費を獲得するには】といった内容が、驚くほど実践的、そして何より真摯な文章で書かれているわけですが。

指針ということで、おそらくは一般読者向けというよりは図書館関係者向けに書かれた内容とはいえ、そこは小説からアニメ、実写映画化もされた有川浩の『図書館戦争』の図書隊の一員に入った気持ちになって"図書隊は守るために戦うんだ!"的に盛り上がって読み進めることができましたが、時代こそ違えど、驚くほど【図書館側を取り巻く外部環境は変わらない】のだな。と少し愕然としてしまった。

また、本書で紹介された利用者の貸出記録が残らない『ブラウン方式』が【個人のプライバシーの観点から望ましい】貸出方式として公共図書館に定着するなどの良い影響があったり"どのような状態にあり、何をしなければならないか"の具体的な共通化に大きな功績があった一方で、近年では本書が【貸出中心のみを強く主導しすぎてしまった】と、近年では映画化もされた『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』の様な付加価値をつけた情報提供【『レファレンス・サービス』が、役割としてより期待され、強調されつつある】ように感じていますが。

部外者としては、前述したように国内の【図書館の外部環境は変わらない】つまり、運営予算も少なく、読書離れがむしろ一層進んでいる。と肌感覚で感じているので。それはそれで貸出に加えて、リファレンスも!となると、図書館単体だと【現場の負担が増すばかりじゃないかな?】と(関係者に友人もいるので)『お節介な心配』をしています。

公立図書館はもちろん、私設で図書館活動をされている方にも、また本や読書が好きな方にも広くオススメ。

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