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教養としての『地政学』入門

"『人間の真の勇気はたったひとつである。現実を直視して、それを受け入れる勇気である』(中略)リアリズムで認識し、国家戦略をきちんと考えよ。この当たり前のことを、改めて教えてくれるのが地政学的な発想です。"2021年発刊の本書は、地球儀を隣に愉しみたい教養的一冊。

個人的には『わかりやすさ』には心理的に身構えるくせがあるのですが。著者の言葉からは博識さが滲み出てる印象があって好感を覚えている事、また地政学に関心があるので手にとりました。

さて、そんな本書は『地政学』が広辞苑でどのように紹介されているのか?に始まり、それがナチズム、旧日本軍部に【都合よく利用されてしまった不幸な過去があったこと】を紹介した上で。あらためて『ハートランド』を提唱したマッキンダーの『陸の地政学』そして『シー・パワー』を説いたマハンの『海の地政学』を踏まえて。ローマ教皇領やフランス王家、プロイセンが如何にして【サンドイッチの具にならずに済むか】と陸地で、【シーレーンで鍵となる半島や海峡を巡って】ローマ帝国から現在の最強国アメリカが互いの利益確保のために様々な権謀術数を繰り広げてきたかを解説。日本の【選べる現実的な選択】についても、自説を展開しているわけですが。

それほど世界史、特にヨーロッパ史に詳しいわけではないので、複雑に血縁関係が絡み合い、結果として似たような名前が続く王族同士の争いは【関係性を把握するのが大変】でしたが。しかし、著者らしく【現代風に噛み砕いた例え】が多用されているので、総じてわかりやすく実例を通じて『地政学のエッセンス』を学べた気がしました。

また、日本が世界史観点からは中心地から【最果てに位置し、特産物もないので】結果として特に交流するメリットが少ない(生活するには住みやすいが)国であったことが【歴史的には幸いしてきた面が多分にあった】事を確認した上で、これからについて。個人レベルでも『考えるきっかけ』を与えてもらったような読後感でした。

世界史、ヨーロッパ史について興味がある、理解を深めたい方へ。また空虚なれど耳障りの良い感情論や精神論ではなく【現実的な国家戦略】について考えてみたい方にもオススメ。

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