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美女と竹林

"いざ、理想の竹林実現へ向かって第一歩を踏み出すのだ。『二十一世紀は竹林の時代じゃき』登美彦氏は言った。『諸君、竹林の夜明けぜよ!』"2008年発刊の本書は独特な文体で知られる著者が愛する竹林の伐採からとめどなく妄想広がる不思議感覚的エッセイ。

個人的には、暑い夏が続く中、とりとめなく読書がしたいと思って、未読であった本書を手にとりました。

さて、そんな本書は『四畳半神話体系』や『夜は短し歩けよ乙女』といったアニメ化された作品でも知られる"京都作家"の著者が、これからの時代は多角的経営だ!目指せ竹林経営者!と子どもの時から惹かれている竹林伐採の機会ができた事をきっかけとして(伐採自体は進まないままに)妄想をひたすら拡げていくのですが。

良くも悪くも感覚的に書き始めては(行き詰まって)無理やりな大団円に毎回持ち込むも、独特の文体からあまり気にならない著者らしく、本書でも作家稼業でのエピソードや、親友の明石氏や担当編集との脱線しまくるやりとりが何とも良い味をだしています。

一方で、タイトルの回収には悩んだようで、途中から『美女と竹林は等価交換関係にある』と、こちらもかぐや姫から著者憧れの本上まなみ、そして番外編で鍵屋家の赤ちゃん(ちぃちゃん)とかなり強引にまとめているのですが。ゆるゆるでも、筋肉作家『マッスル・トミー』やMBC(モリミ・バンブー・カンパニー)が実現しなくても。だがそれで良し!『登美彦さん。そのまま君の道をひた走れ』とエールを送りたくなります。

著者ファンはもちろん、殺人的な暑さや殺伐とした毎日に疲れた誰かに。清涼剤的にオススメ。

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