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帝国主義論

"すなわち、帝国主義は過度期の資本主義である。いや、もっと正確に言うなら、死に至る資本主義である。"1917年発刊の本書は、第一次世界大戦下において実体的な富の生産という経済的本質を失い、必然や不可避的に詐術や独占、寄生化してしまった資本主義、帝国主義に経済学的分析から警鐘を鳴らしていて、現在でも刺激的。

個人的には、歴史上始めて社会主義革命を成功させたと評価される一方で、1991年のソ連崩壊により否定的見方も存在する著者の本を未読であった事、またGAFAなどの独占的なグローバル企業が影響力を増す現在社会をより理解するのにも参考になるかもと思って本書を手にとりました。

さて、革命前に書かれた正式名称が『資本主義の最高の段階としての帝国主義ー一般向け概説書』である本書は、19世紀後半から20世紀前半にかけて自由競争から始まった資本主義が如何にして【金融独占による帝国主義化】へと至るかについて。著者の亡命先であるスイス、チューリッヒの図書館蔵書を活用して、思った以上に難解な理論書というよりは【誰にでもわかりやすく】(起きていた)第一次世界大戦についても【世界の分割及び再分割をめぐる帝国主義間の闘争】であると指摘しているわけですが。100年前に書かれたとはいえ、現在の資本主義の必然的閉塞、及びかってのイギリスやフランスから【米中を中心とした現在の世界覇権争い】を理解する上でも鮮度を失っていないと感じました。

また。本書で指摘している"分散化が意味しているのは、実際のところ、巨大な独占体が集中化を進め、おのれの役割、意義、実力を強化することなのである"と、決済の仲介を主な業務とするはずの銀行が【なぜ変質化、独占化していくか?】についてのくだりは、GAFAに限らず現在のIT企業の多くが【多角化およびブロックチェーンや電子決済といったフィンテック分野に参入している】理由の説明にもなっていて、こちらも歴史は繰り返す的に近未来を考えるのに役立ちました。

今だから、あえて姿を消した社会主義を考えたい誰かに。また著者よろしく"資本主義社会の「自由」は、依然として古代ギリシャの都市国家のものと変わらない。それは、奴隷主のための「自由」なのだ。"と日々憤りを覚えている誰かにもオススメ。

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