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菜根譚

"人は有字の書を読むを解して、無字の書を読むを解せず。有絃の琴を弾ずるを知りて、無絃の琴を弾ずるを知らず。迹を似て用いて、神を以て用いず、何を以てか琴書の趣を得ん。"混迷を極めた明代末期に生まれた本書は処世術の最高傑作のひとつに数えられる中国古典、清言の書。

個人的には田中角栄や吉川英治、川上哲治や野村克也といった錚々たる人物たちの愛読者として名前だけは知ってましたが、未読だったので手にとりました。

さて、そんな野菜の根『菜根』というタイトルに解説によれば"堅くて筋が多くて咬むのが大変"【=咬めるのは真実がわかる人物】である、あるいは"貧困な暮らしイメージがある"【=貧困に耐えうる人物】である。という意味が込められた随筆集である本書は、前集222条では主に【人付き合いや世渡りについて】後集135条では隠居後やスローライフでの【心の在り方について】がそれぞれ、簡潔なれど味わいのある言葉で書かれているのですが。

原文だと雰囲気はよく、またニュアンスは伝わってくるも細かいところはわからない部分を本書は【現代訳も併記してくれていて】16世紀〜17世紀頃といった何百年前に書かれたとは思えないくらいに現代日本社会に生きるビジネスパーソンである私にも響く、不明な点が多くもおそらくは【官僚として勤めるも政争に巻き込まれて不遇なまま引退した人物】と思われる著者らしい言葉が心地よかった。

また、マスメディアやSNS、youtubeといった【仕組まれたシステム】によって、確かに恩恵を受ける人々が沢山いる一方で【いいね!やフォロワー数、再生回数=その人の価値】といった『承認欲求地獄』にハマっているような人も沢山生まれている現代社会ですが。本書を読み進めていくと、それらが『実につまらない生き方』であることがよくわかって、心のデジタル・デトックスに癒されました。

感動ポルノやハイテンションな自己啓発本に疲れた人や、人生の午後に差し掛かった人にオススメ。

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