見出し画像

書店と民主主義

"知性とは、知っていることの量ではなく、知ることへの意欲の強度である。自らの知を完璧と思い込み『正義』に囚われて他者を排除する人たちは、知性から最も遠い。"2016年発刊の本書はジュンク堂難波店の名物店長による【紙の本の危機=民主主義の危機?】というテーゼを考える機会を与えてくれる一冊。

最近読んだ『私は本屋が好きでした』の著者、永江朗が本の中で"ヘイト本への向き合い方として理想"と本書を紹介していた事、また通勤途中にジュンク堂難波店には立ち寄る機会もあるにも関わらず、著者について知らなかった事から興味をもって今回手に取りました。

さて、そんな本書は著者が人文書院の公式サイトに連載しているコラムを中心に2014年後半から2016年初頭に寄稿した文章を収録、再構成しているのですが。ヘイト本、そしてクレームによるブックフェア中止問題など取り上げられている話題に関しては流石に時代の流れは感じさせつつも、とはいえ【自分の意見を表明すると同時に、違った意見の相手とも向き合う】個人としての顔の見える仕事ぶりや対応が伝わってきて(この辺りが名物店長と評される所以でしょうか)組織人として勇気づけられました。

また、ヘイト本問題に限らずSNSが日常化した時代。ふと気づけば【同じ価値観の人たちとばかり繋がっている】コミュニティが乱立し、結果として安易な依存による同質化【そこだけで共有している正義】をふりかざす人たちの歪な出現へと繋がっている気もする最近。当たり前と言えば当たり前ですが。民主主義が機能するにはコミュニティではなく、まずそれを構成する【個人が自分で引き受けて考える】必要性があることも読みながら、あらためて再確認させていただきました。

本に関わっている人はもちろん。民主主義について考えたい人、あと、ジュンク堂難波書店ほか、大阪市内の本屋をよく利用する方にもオススメ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?