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サロメ

"お母さまなんて関係ない。ただ、わたしだけの悦びのために欲しいの、銀の大皿に載せたヨカナーンの首が。"1893年に出版、聖書をアレンジした内容の背徳性により禁止令も出された世紀末文学の傑作を平野啓一郎が宮本亜門公演の為に新訳した本書は、読みやすく、また"少女"として解釈されたサロメの瑞々しい魅力が新鮮。

個人的には、本書に関しては随分と昔に読んだ記憶があったのですが、ビアズリーの挿絵やギュスターヴ・モローの絵画により妖艶かつ凄惨な“宿命の女”=ファム・ファタルのイメージの強いサロメを芥川賞作家でもある平野啓一郎氏が【どう新訳しているのか?】に興味をもち、今回手にとりました。(そういえば、漫画・アニメの「MARS RED」でも引用されてましたね)

そんな本書は、80ページの読みやすい言葉づかいで新たなに翻訳された内容に加え、注釈が約40ページ、訳者の解説が約30ページ、原作者のオスカーワイルド専門家の解説が約60ページ、宮本亜門による公演話が10ページ、さらには年表と、現時点での決定版とも言える【お得感溢れる内容】で、予想以上に新しく楽しむ事ができたのですが。

やはり、前述の様にファム・ファタルのイメージの強いサロメを、平野啓一郎の解説によれば【一旦解き放って】"10代の清らかな少女"として解釈、新たにイメージを提示した事に関しては、些か賛否両論あるかもしれませんが印象的で。個人的には【すれ違う視線の物語】である本書に新たな魅力を付加してくれた点、特にクライマックスシーンに関しては【より劇的になったのではないか】と思いました。(公演でサロメ役を務めた、多部未華子にもぴったりなイメージですね!)

森鴎外や三島由紀夫、そして平野啓一郎と古典新訳を比較したい誰か、また著者の生涯と重ねて世紀末文学を堪能したい誰かにもオススメ。

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