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にごりえ・たけくらべ

"或る霜の朝水仙の作り花を格子門の外よりさし入れ置きし者の有りけり、誰の仕業と知るよし無けれど、美登利は何ゆえとなく懐かしき思ひに違ひ棚の一輪ざしに入れて淋しく清き姿をめでけるが"1895年"奇蹟の14ヶ月"中に発表された本書は吉原の子供の成長と淡い恋を描き、森鴎外ら辛口で鳴る文豪たちにも絶賛された名著。

それこそタイトルの様に【背伸びする年でもないので】告白すれば。5000円紙幣で目にしているにも関わらず、この24才と若くして夭折した近代初の職業女流作家の作品を読んだ事がなかったことから、今回はじめて手にとりました。

さて、そんな本書を現代訳を選ばず、あえて雅文体で書かれた方を選択してみたのですが。まず最初にこれが良かった。心の中で【声に出しながら読むと何とも風情や情緒深さかあって】当時の吉原の喧騒や子ども達の姿が瑞々しく浮かんでくるような心地よさでした。(もっとも頭で理解する『読みやすさ』としては、率直に言って一文一文が長く"和製フォークナーか!"と何度かツッコミながら読み直さないといけませんでしたが。。)

また、本書に関しては現代風にざっくり言えば【キャバ嬢が袖にした客に無惨にもバッサリ殺されてしまう】『にごりえ』が(おそらくは偶然?)先に収録されていたのも、何とも『たけくらべ』の子どもたちの【純粋さが強調される】読後感になって良かった。いやあ"汚れちまった悲しみに今日も小雪の降りかかる"(by中原中也)そんなセリフをふと呟けにけり。

なくしてしまった言葉や気持ちを感じたい人へ。また5000円札紙幣で文学話したい人にもオススメ。

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