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ジオン軍の失敗

"よく知らないマシンについて議論するのではなく(中略)より我々が知見を持っている『なぜMS-06Rー1A高機動型ザクが失敗したか』を取り上げて、考察を進めていきましょう。"2009年発刊の本書は『製品開発における戦略の失敗』について。研究者が"わかる人しかわからない"潔さで描いた良書。

個人的には2021年現在劇場公開されている『シン・エヴァンゲリオン劇場版:||』を見た"世代の人たち"が"青春でした!"と盛り上がっているのにジェラシー感じて(嘘)ガンダム世代の1人として手にとりました。

さて、そんな本書は情報セキュリティ、ネットワークを専門分野とする研究者がファーストガンダムに登場し敗北するジオン公国が開発したプロダクトたち【ザクに始まりジオングまで】11モビルスーツを題材にして、技術者にとって最も関心の高いテーマの一つである『失敗する製品が世にでてしまうのはなぜか』を技術開発史の視点から丁寧に考察しているわけですが。

まず、最初に言いたいのはファーストガンダム(機動戦士ガンダム)という【作品自体を知らない人】にとっては『あんなの(前述の内容紹介は)飾りです。偉い人にはそれがわからんのです』といった感じで、率直にいって本書は終始【わけがわからない】と思うのですが。

逆に著者と年齢が近く、かつ【ミリタリーを少々嗜み、ガンダムシリーズにはドップリ】な私みたいな属性の人にとっては、専門書の体裁をとって大真面目に解説している裏に込められたガンダムという作品自体に向けた愛【ジオンのエンジニア(あえて言おう"哀 戦士"たちであると!)に向けた『私の手向けだ』的な気持ちがびんびんに伝わってきて】ひたすらに胸熱です。

また、それを踏まえた上で、さらに暴走すると。まあ本書を読んで、あらためて連邦はアメリカ軍。ジオン軍のザビ家はナチス、軍自体は旧日本軍的なイメージが反映されていると再確認させられるファースト世界ですが。

ザクの初期の成功による過信と失敗。例えば脱出装置すらない構造には【零戦をミリオタ的に当然に重ね合わせては涙したり】また、本書は資料として公式百科事典はもちろん、富野小説ネタまでとりあげているので【シャアには艦艇攻撃時に2秒ほど直進コースをとる癖がある】といったさらりとした文章に『認めたくないものだな。自分自身の、若さゆえの過ちというものを。』と誰得的に?ニヤリとしてしまったり。

あ、あと、ジオン軍の【全ての失敗が『ジャブローへの固執』にある】というのも、なかなかに面白い視点で大笑いでした。(確かに水陸両用モビルスーツとか、ビグ・ザムの開発に関しては、事前リサーチ。誰かちゃんとやっとけよ。。ですしね)

社会人や家庭人をしてるけど。内面はやっぱりファーストガンダムが好き、大好きな世代の人へ。また閃光のハサウェイまでの宇宙世紀補完資料的にオススメ。漫画もあります。


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