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隻眼の少女

"やがてみかげは再び右眼を開けると、自信に満ちた声で云った。『私の左眼は、真実を見抜きます』透き通ったその声は、風に乗って村人たちがいる川下へと消えていく"2010年発刊の本書は日本推理作家協会賞、本格ミステリ大賞W受賞、後期クイーン的問題に真っ向から向き合った傑作ミステリ。

個人的には気分転換にミステリを。また一貫して「問題作」を書き続ける著者作の中でも(賛否はあるも)評価の高い作品と知り、興味を持って手にとりました。

さて、そんな本書は横溝正史作品を彷彿させる昔からの伝承が残る山深き寒村を舞台に、金田一耕助もとい隻眼の美少女探偵・御陵みかげ、そして、ひょんな事からワトスン役"として彼女の助手見習いをつとめる事になる大学生、静馬が凄惨な連続殺人事件に挑む事になるわけですが。

ダブルカバー?で、以前のイメージモデルによる写真表紙に被せる形で全面カバー帯が美少女イラストになった本書、良くも悪くも導入部の設定も含めてさらに【如何にもライトノベル風】になっていて。実際にボーイ・ミーツ・ガール的な物語として『一部』は素直に読み進める事ができるのですが。。『二部』での景色がスピードをあげて一転するかのような飽きさせない展開に【そうきましたか!】とニヤニヤとワクワクが止まらなかった。

また、本書を通じて1990年代後半以降のミステリ、特に『新本格ミステリ』に大きな影響を与えた(らしい) 『作中で探偵が最終的に提示した解決が、本当に真の解決かどうか作中では証明できないこと』『作中で探偵が神であるかの様に振るまい、登場人物の運命を決定することについての是非』の2つの問題、推理作家のエラリー・クイーンの後期作品群に典型的に見られる事から【後期クイーン的問題】と呼ばれる用語について。初めて知る事も出来て。あまりミステリに詳しくない私は【雑学が増えたようなお得感】も感じたり。

ミステリ好きはもちろん、どんでん返し的な小説が好きな人にもオススメ。

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