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冷たい方程式

"手がブラスターから落ち、目の前の現実が不意に強烈な拳の一撃のように彼を襲った。密航者は男ではなかったー二十にもならない娘だったのだ。"1980年発刊の本書は、SF史上に残る表題作を含む、未だ文庫化されていない英米SFの中短編計7作を収録した傑作集。

個人的には、表題作を名前は知っていたのですが未だ読んでいなかったので手にとりました。

さて、そんな本書ですが。最近の設定や見かけはSF風味であっても中身はテンプレ的な作品とは違って、古き良きSF。【理不尽なまでに異なる他者との遭遇】が共通テーマとも思える作品たちが収録されているのですが、ギリギリの燃料しかない宇宙船に美しい密航者が現れる『冷たい方程式』植民地先の惑星で謎の疫病に襲われる『接触感染』虎よ、虎よ!で知られるベスターによる不思議な追跡小説『祈り』などなど【どの作品も先が読めない展開となっていて】オールドSFの面白さを充分に堪能させていただきました。

また、悪く言えば『何でもあり』と敬遠されたりする人も多いSFですが。私的には読書に感じている魅力【未知への扉を開ける感覚】はむしろ【秀作SFにこそ凝縮されている】と思っている事から、本書に収録されている中短編を読み進めながら、そうそう!こういった感覚を求めてました!と快哉を叫ぶような興奮がありました。

オールドSF好きはもちろん"異なる他者と出会う"短編を探している人にオススメ。

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