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短歌の友人

"短歌や俳句や詩などの韻文が、小説のような散文に比べて、一般に難しいと思われがちなのは、書かれた情報に圧縮がかかっているからだ。それらを読んで味わうためには、圧縮された情報を読者の側で解凍しなくてはならない"2007年発刊の本書は現代を代表する歌人による初の歌論集。

個人的には若者の間で短歌ブームが起きている中、ちょっとかじってみようかな?と名前こそ知ってはいたものの初めて著者の本を手にとりました。

そんな本書では、著者いわく"短歌を読むことから生まれた思考の流れ"が全7章でそれぞれ『短歌の感触』『口語短歌の現在』『〈リアル〉の構造』『リアリティの変容』『前衛短歌から現代短歌へ』『短歌と〈私〉』『歌人論』として収録されているわけですが。

普段短歌を嗜まない私でも、著者が章ごとに【何度も繰り返すかのように丁寧に優しく】短歌作品について文学的な説明を加えてくれているので、初心者にとってのコツはもちろん、近代以降の短歌のモード『生の一回生』の原理など、斎藤茂吉から"前衛"塚本邦雄、現代といった【短歌の時代に応じた変化】についてもわかりやすく学ぶことが出来ました。

また寺山修司、俵万智。そして最近の受賞した若手歌人についての評論も新鮮かつ的確に感じた一方、自身最初の歌集を出したあとの石田比呂志の批判にショックを受けたと同時に『私自身がはだかにされた感覚』があった話など【つくり手であるからこその視点や感覚】が本書には充分に反映されているように思いました。

著者のファンや短歌好きはもちろん(私のような)短歌初心者にもオススメです。

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