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双翼の日の丸エンジニア-ゼロ戦と飛燕の遺伝子は消えず

"本書は敗戦で根絶やしにされた日本人の"ものづくり"に懸ける創作魂の火を、世界を相手に、したたかにくすぶり続けさせ、やがて天高く燃え上がる炎へと昇華させた、"ゼロのDNA"、そして"飛燕の遺伝子"を受け継いだ二人の日本人エンジニアの不屈の物語である"2021年発刊の本書は熱い日本人技術者魂、そしてスポットがあたりにくい企業組織人の活躍を描いた良書。

個人的には、子供の時から飛行機、中でもプロペラ機にはずっと憧れがあったので"ゼロ戦と飛燕の遺伝子は消えず"というサブタイトルに惹かれて手にとりました。

さて、そんな本書は約200ページずつの二部構成、鼎談や解説もいれると計380ページで【二人の同期天才航空機設計者】ゼロ戦他の海軍機の傑作を手がけた『堀越二郎』そして飛燕他の陸軍機の傑作を手がけた『土井武夫』のライバル同士の切磋琢磨によって一気に【世界に追いつき、凌駕する】も第二次大戦の敗戦後、戦勝国であるアメリカによって【純粋な国産戦闘機開発をする道を絶たれた】戦後日本。

しかし、その航空機技術者たちのDNAはカメラやバイクといった形に【姿を変えて受け継がれていた】として『堀越二郎』の教えを受けた葛城衛、『土井武夫』の教えを受けた百合草三佐雄の二人の弟子たちの戦後の【アメリカ進出における悪戦苦闘】の"ものづくり人生"を丁寧な取材に基づき、かつ熱量溢れる文章で描いているわけですが。

まず。単純には『堀越二郎』に関しては脚色はもちろんあるも、ジブリ宮崎駿監督の映画『風立ちぬ』のイメージが半生として浮かんでしまうわけですが。まるで『その後の人生』を直接的続編として葛城衛の回想に重ねて楽しめる部分があって『堀越二郎』の想いは、こうして【確かに次世代に繋がっているのか!】と感慨深い気持ちになりました。

また、残念ながら『土井武夫』に関しては名前自体初めて知ったのですが。それでも、たまたま自身の学生時代の卒論テーマがホンダ創業者の『本田宗一郎』であり、またバイク好きでもあるので、ホンダのアメリカ進出のB面、そしてあの『飛燕』が"ライムグリーン"のカワサキ。"ニンジャ"映画トップガンのカワサキに繋がるのか!と胸熱でした。(いよいよ公開間近の『トップガン マーヴェリック』が俄然楽しみになってきた)

その一方で、残念ながら現在日本の"ものづくり"全体に関しては、スマホはもちろん、パソコンもMac、クルマに関してもテスラと、映画俳優やセレブたちが使い【所有欲を満足させる製品】がすっかり【海外勢に占領されてしまった】今、『堀越二郎』や『土井武夫』から葛城衛や百合草三佐雄へは確かにバトンが繋がったDNAが【果たして現役&次世代には繋がっているのだろうか?】と本書を読んで、応援したい気持ちと不安が入り乱れる『複雑な気持ち』になりました。

メーカーに勤務する方や技術者の方はもちろん『与えられた環境で結果を出し続けないといけない』全てのビジネスパーソン、組織企業人にオススメ。

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