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聖なる怠け者の冒険

"内なる怠け者は眠れる獅子である。咆哮するかわりにあくびをする。南の島のヴァカンスを、不要不急の鉄道の旅を、終わらない夏休みを夢見る"2013年発刊の本書は第2回京都本大賞受賞作にして賑やかな宵山の京都の不思議な一日をテンポよく描いた物語。

個人的には、森見登美彦ファンの集いを企画したことから、勉強も兼ねて手にとりました。

さて、そんな本書は狸のお面をつけ、旧制高校のマントに身をつつんだ、正体不明にして自称"八兵衛明神の使い"『ぽんぽこ仮面』。一年ほど前から京都で人助けをしている人気者が、筋金入りの怠け者会社員『小和田君』を跡継ぎとして目をつけたことから物語が京都の名スポットを舞台にして、著者の別作品と同じく【スモールワールド的に展開していく】わけですが。

著者自身があとがきで(初めての新聞連載として)"一回一回を楽しんで読んでもらえるように努めた"と書いているように、リズミカルかつサービス精神旺盛な京都市内が舞台のドタバタ追跡劇を観ているような感覚があって終始楽しませていただきました。

一方で、精力的に人助けをする為に駆け回る働き者の『ぽんぽこ仮面』と対比する存在として、本書では謎の自信に満ち溢れつつ、すきあらば寝ようとする『小和田君』がいるわけですが。例えば『四畳半神話体系』の『私』などの無駄に多弁な主人公達と比較すると確かに新鮮ではあったものの、登場人物として魅力的、効果的だったかと言われると【こちらは賛否が分かれるのではないか】と思いました。(あと『宵山万華鏡』『有頂天家族』は先に読んでおいた方がより楽しめます)

森見登美彦ファンの人へ、また京都市内ガイド的に手軽に読める小説を探す人にもオススメ。

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