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賭博者

"わたしは、今負けることがわたしにとって何を意味するかを、恐怖とともに感じ、一瞬にして意識した!この賭けにわたしの全生命がかかっていた!"1866年に発表された本書は、著者のギャンブル中毒、2人のファム・ファタールとの別れと出会いの実体験が充分に反映された特異的一冊。

個人的には『カラマーゾフの兄弟』といった長編傑作から文豪イメージの強い著者ですが。良くも悪くも奔放だった私生活を興味を持って調べているうちに『罪と罰』連載中と同時期に書かれた本書に行き着きました。

さて、そんな本書では架空の観光地に滞在する将軍家の家庭教師アレクセイがポリーナという美女に惹かれたり、"フランス野郎"に敵対心を燃やしたりといった【実際の著者体験】が反映された人間関係が描かれる被虐的な前半部分は正直に言って退屈だったのですが。

キャラの濃い【75才お婆ちゃんがギャンブルデビュー】して豪快に浪費してくるあたりから後半部分に関しては【ジェットコースター的な展開】でスピードアップしていくエンタメ作品として面白かった。(=実際に締切に追われていたのも同時に伝わってきます(笑))

一方で、私自身はギャンブルを嗜まない人間なのですが、本書で描かれているルーレットの様子、そして【活き活きとした心理描写】は賭け事好きな方にはどう感じられるのだろうか?そんな友人が近くにいたら感想を聞いてみたくなったりしました。

ギャンブラーな人は言うまでもなく。また大作ともまた違う【読みやすい一冊】を探す人や、著者の人生に興味ある方にオススメ。

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