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インドへ

"三島(由紀夫)さんが生前ぼくに、人間にはインドに行ける者と行けない者があり、さらにその時期は運命的なカルマが決定する、というような意味のことを語ってくれたのを、この夢の光景を現実にしながらふと思い出した。"1983年発刊の本書は、著名美術家によるカルマに導かれた一冊。

個人的には、最早コンビニへ行くのと同じくらいに日常的になった海外旅行の前の時代。連絡もままならない【象徴的な非日常の場所】としてあった海外旅行を何となく記憶の片隅から思い出したいと思って本書を手にとりました。

さて、そんな本書はBRICsといった経済発展を遂げる前のインド。(篠原紀信に似ているらしい)【サイババやユリゲラーがまことしやかにカリスマ的に信じられ】高度経済成長の最中で流行したオカルトやスピリチュアルブームに傾倒していた時期の著者の眼差しによる【大変素直で偏った】インド旅行記となっているのですが。

読書や旅行記に正確さや効率を求める人は憤慨するかもしれないとしても、かつて、インドへ行く。それだけで【人生が大きく変わる】とほぼ同義語だった時代を知っている世代としては、念じるだけでUFOがほいほい現れ、また『もはやUFOはぼくのなかで現実の一部である。』と著者に言われると(うん、かっての)【インドなら問題ない】と納得してしまうのだったり。

また、私自身は【全くオカルトやスピリチュアルに興味はない】のですが。資本主義社会の中で、非人道的な効率性や拝金主義が蔓延する中で、本書で描かれているインドは、明治期に欧米人が描いた日本のように神秘的な【ある種の理想郷の様に昇華されていて】もし昔に訪れることができていたら。自分はどんな感想を抱いたのだろうか?と想いを馳せる一助にもなりました。

ネットやスマホがなかった時代にインドへ行った方や海外旅行に出かけていた人へ。また1980年代の日本の空気感を感じたい人にもオススメ。

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