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同志少女よ、敵を撃て

"すべての思いを込めて。再び敵に意識を集中させる。あの日撃てなかった母の、殺された村人の、ソ連人民と女性の怒りを弾丸に込めろ。"2021年発刊の本書は実在のソ連、女性狙撃小隊を描いた著者デビュー作にして、全選考委員が5店満点をつけて話題となった第11回アガサ・クリスティー賞大賞受賞作。

個人的には前評判の高さから気になって手にとりました。

さて、そんな本書は村で初めての大学進学も決まって平和に暮らしていた純朴なセラフィム、しかしある日、自分一人を残して村や家族がドイツ軍に蹂躙されてしまった事で、彼女は助けられた凄腕の女性士官、イリーナのもとで集められた同じく家族を失った少女たちと女性狙撃兵として育てられ、ドイツ軍との激戦区、スターリングラード、クルスク、ケーニヒスベルクと仲間を失いつつ転戦しながら、いつしか復讐相手を探す【凄腕の殺人者】として変化していくのですが。

まず、本書でも憧れの存在として登場する309人を射殺した実在の女性狙撃兵、リュドミラ パヴリチェンコの映画『ロシアン・スナイパー』を鑑賞済みであったり、子供時代にプラモデルで第二次対戦中のドイツやソ連の戦車や戦闘機といったものに触れていたこともあり、私自身は作中世界に入りやすく、著者の【新人とは思えない迫力ある戦闘描写】も含めて終始ページをめくる手がとまらないほど楽しませていただきました。

また、著者自身はインタビュー記事で押井守に影響を受けたと述べてますが。個人的には同じく【当事者ではない日本人が第二次世界大戦時のヨーロッパを舞台に描いた群像劇的作品】として深緑野分の『戦場のコックたち』と比較して読んでいる感覚があったり、また登場する女性狙撃兵たちが、ツンデレであったりお嬢様、百合属性があったり?と最近のアニメ作品のお約束設定を踏襲していることから映像化、やはり、アニメ化に向いているように思いました。

第二次世界大戦を部隊にした群像劇的な作品、あるいは女性同士の連帯や絆"シスターフッド"作品が好きな人にオススメ。

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