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占星術殺人事件

"私はたったニ、三時間だったが、極限的に疲れてしまった。何の因果であんな半狂人と友達になってしまったのか。前世でよほど悪いことをしたのかもしれない"1981年デビュー作にして、御手洗潔シリーズ1作目の本書は国内外で高く評価さるミステリ傑作の改訂完全版。

個人的にはミステリに最近、興味があることから。ミステリ好きの友人にすすめられるままに初めて手にとりました。

さて、そんな本書は物語での現在となる1979年から約40年前、第二次大戦前の空気も色濃い1936年に起きたとされる『梅沢家・占星術殺人』密室で殺された画家が残した手記に記された6人の処女の肉体から完璧な女性『アゾート』を創り出す。その計画通りに、画家の死後に日本各地の山で6人の娘たちの死体が見つかった猟奇殺人事件。それに、ひょんな事から、占星術師の御手洗潔と親友の石岡和己が挑むことになるわけですが。

まず、冒頭から約50ページにわたって続く画家の独白的な手記部分が【とにかく読み辛くて不安だった】のですが。御手洗(と、石岡)が登場し、2人で掛け合いを始めてからは、急に読みやすくなった印象があって、以降は安心?してページをめくる事ができました。(また、最後まで典型的な『安楽椅子探偵』かと思いきや【272ページから京都・関西編】展開が始まるのも意外で驚きました。)

また本書の事件は、画家の殺人に使われる『密室殺人』や、家を出ていた娘、一枝殺し『時間差殺人』そして、6人の娘たちの『アソート殺人』と3つの謎解き要素から成り立っているのですが【既にトリックが有名すぎて?】金田一少年の『異人館村殺人事件』などでも、良くも悪くも流用されたりしたらしいですが。私の場合は白紙状態で手にとったので、度々挟まれる著者から読者への挑発?『読者はすでに完璧以上の材料を得ている』等があるにも関わらず、最後まで全く謎が解決出来ず、悔しかった。(流石に『石岡の推理』は明らかにミスリードを誘っている位は気付いてましたが。。)

『十角館の殺人』などの新本格ブームの先駆け的な一冊として。また『東西ミステリーベスト100』国内編2012年3位、イギリスの有力紙『ガーディアン』による『世界の密室ミステリーベスト10」2014の第2位など高く評価されている傑作としてオススメ。

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