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おじさんと僕①

小学4年生夏

自由研究...

Aくんは『貝殻』を調べた。

貝殻って綺麗だよね。

色々な色があって、

種類もあって、

形も模様も色々。

皆にも知ってもらいたい。

夏休みの期間中ほぼ毎日

海の砂浜で貝殻を拾っては持って帰り

綺麗にケースに入れたものを

皆の前で発表した。

Aくんはこんがりと日に焼けていた。

対極的に、白や明るく光る貝殻たちは

数もさることながら

美しさや種類の多さに子ども達は驚いた。

Bくんも『貝殻』を調べていた。

おじさんが貝殻工藝の職人で

螺鈿(らでん)による

伝統的加飾器を作っていた。

螺鈿:

貝殻の内側にある地色に輝く美しい部分を薄く磨き、

柄や模様を表現する技法。

材料になる貝には

「夜光貝」「アワビ貝」「蝶貝」などを使用する。

おじさんから学んだ情報を

ノートに綴って発表した。

Bくんはおじさんの作る綺麗な螺鈿加飾器を

皆に自慢げに見せ、

Aくんに向かって言った

B「井の中の蛙大海を知らずって知ってるか?」

A『え?』

皮肉っぽく歯を見せ笑うBくんに

Aくんは少しショックを受けた。

意味は知らないけれど、

なんか嫌なことをいわれた気がしたAくんは

その日残りの授業は気持ちが入らず、

何を学んだかも覚えてない。

トボトボと帰る帰り道。

ふと目をやると、

Bくんのおじさんが歩いていた。

なんだかバツが悪くて、

Aくんは目を伏せて早足で歩いた。

おじ「あれ?Aくん」

声をかけられて、足を止めてしまった。

おじ「自由研究大変だったね。

 Bも大変そうだったよ。

 Aくんは何調べたの?」

と向いてもないのに、

言葉を続けるおじさんに、

仕方なくAくんはその日発表したことを話し、

持っていった貝殻たちをおじさんに見せた。

流れでBくんから言われたこともついでに話してしまった。

おじ「それは悪いことしたね。

 でも、大海を知らなかったのはBだな。」

A『え?』

おじ「君の拾った貝殻の中には

 磨けば光るやつも入っているよ。

 結局やっていること興味を持ったことは

 一緒なんだよ。

 井の中にいたのは、

 もしかしたらおじさんかもしれない。」

驚くAくんを置いて、おじさんは続ける。

おじ「長年貝殻磨いて削ってしてきたけど、

 君の貝殻を見て、

 まだまだ知らない貝があるんだなって気付かされたよ。

 井の中の蛙 大海を知らずって言葉にはね、

 続きがあるんだよ。

 されど 井の中を知る、されど 空の青さを知る、

 されど 天の高きを知る、されど 地の深さを知る、

 ただ 天の広さを知るってね。

 別にかえるを皮肉っただけの言葉じゃなくてね、

 自分の視野の狭さや自分の小ささを

 比喩表現するためでもなくて、

 本当は神様が他人を高く評価して

 比較するために用いたものなんだよ。」と

井の中の蛙大海を知らずの由来を話してくれた。

A『海の話だったんだ。

 なんかの大会で負けた話かと思った。』

おじ「え!」

二人は顔を見合わせて笑った。ゲラゲラ笑った。

池に落ちたらカエルと笑え…

後日...

「ごめんな。あんなこと言って。」

Bくんが謝ってきた。

『来年は一緒におじさんに螺鈿教えてもらおうよ。』

Aくんはニコッと笑った。

池に落ちたらカエルと笑え…

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