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「メコンデルタにある水上マーケットの文化を復活させる」ある地元男性の地域活性の話

知り合いの新聞記者の方が、メコンデルタの水上マーケットの歴史や文化を守ろうと奮闘する現地の人へインタビューした記事をフェイスブック上で掲載していた。

通常、水上マーケットの観光記事だと、良いこと・美しいことしか書かれていないけれど、このインタビュー記事はメコンデルタの水上マーケットの現状や、人々を巻き込む中での葛藤、地道な努力、その「地域活性」物語が語られていたので、非常に学びが多く、重要な内容だった。国は関係なく、いつも一人の決断と信念から何かが始まっていくものだ。

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「水上マーケットの復活と活性化」

メコンデルタの川を何度も往復し、膨大な時間を費やしながらも水上マーケットの復活と活性化に向けた取り組みを行っているDu Ngoạn Việt会社の取締役会長であるPhan Xuân Anh氏へのインタビュー記事。彼はクルーズ・ツーリズムの「大物」とも言われている。

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Phan Xuân Anh氏は年間70.000人もの国際クルーズ船の乗客を受け入れており、新しいプロジェクトもまた「水路」に関連したもの、それは「水上マーケットの復活」に関わるものだった。メコンデルタにはいくつもの省で水上マーケットの営みがあり、今でも水路を使った農家や商人達の売買が行われている。ティエンザン省にあるCai Be Floating Marketもそのうちの一つで、氏はここの市場に商人や農家の人々を呼び戻し、観光客を呼び込み、その「価値」を継承したいと考えている。

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Q1.メコンデルタには地元の価値や文化を活用して観光客へ伝えることができる多くのユニークな特徴がある。その中で、なぜ、あなたは水上マーケットを選んだのですか?

A1.確かに、観光客を惹き付ける魅力がたくさんありますが、水上マーケットは異なる文化を持っています。外国人観光客は水上マーケットが大好きで、とりわけメコンデルタの水上マーケットは他のどのエリアとも似つかない異なる商業、文化があります。

その上、より多くの観光客は地元の人々の商業や生活により近い体験を好み、水上マーケットはこういった体験をするのにとても適した環境があります。

以前は、ミエン・タイ(南西部)(ベトナム国内でいうメコンデルタ・エリアの総称)には多くの水上マーケットがありましたが、昨今、交通網の発達に伴い、商人や農家の人々は水上マーケットに行かずとも商品や食料の運搬や売買が可能になり、水上マーケットには以前のような活気がありません。

多くの観光客は南西部の水上マーケットにとても興味を示していますが、実際に訪れた際はその閑散とした雰囲気に落胆しています。観光業でいうと、私たちはこういった「観光商品」にとても後悔しています。皮肉なことに、タイには純粋な地元の「水上マーケット」は無く、完全に観光客用に設備されたもので、ここ南西部には昔から継承されている地元の水上マーケットの売買があるのにも関わらず、閑散としている状況です。

その為、私はここにある水上マーケットを復活させ、価値を維持し、人々に売買の機会を与えたり、観光商品としての質を充実させていきたいのです。

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Q2.そして、なぜCai Be水上マーケットを選んだのですか?

A2.約3年前まで、Cai Be水上マーケットはとても多くの人々で賑わい活気があり多くの観光客を魅了していました。しかし、Cai Be橋ができ、交通網が発達し、売買の雰囲気もとても悲惨なものとなってしまいました。商人の船は減り、売買も少なくなっていきました。

他の水上マーケットと異なり、Cai Be水上マーケットは地理的にホーチミンに近く、観光客にとっても日帰りでも行ける好条件下にあります。Cai Beはまた多くのインドシナ・クルーズ船の停泊地でもあり外国人観光客にとっても訪れる機会が多くあります。

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Q3.氏は水上マーケットを復活させるという考えは多くの人々に指示されているが、一緒に活動を行っていく「仲間」を見つけるのは難しいことを話されていました。この件について、詳しく説明していただけますか?

A3.このプロジェクトを進めていくにあたり、とても多くの時間やプロセスを費やしました。ビジネスの観点からのアプローチを進め、(同じ水上マーケットを観光ビジネスとして展開している)ミトー市の業界人や旅行会社の人々とも話しを進め、ほとんどの人々が「良いプロジェクトだ」という考えでした。

ただ、一緒にこのプロジェクトを進めていける「同僚」を見つけることは不可能でした。なぜなら、彼らは「良いプロジェクトだ」とは言いますが、実際に自らがこのプロジェクトに関わるには「出口が見えない」難しいものだと考えていたからです。ミトー市ですら、観光客が多くは無い状態で、いかにCai Beに観光客を連れてくるのか、そもそも、どうやって水上マーケットでの売買を止めた人々を連れ戻すのか。現実的に考えると「不透明」な部分が多く、実行するには難しかったのです。

私は、Cai Beの観光関連事業者のマネージャーやホームステイ運営者にも、水上マーケットの復活プロジェクトの話を持ちかけましたが、なかなか事が進みませんでした。しかし、こういった地道なコミュニケーションがとても重要な、プロジェクトを前進させてくれることに繋がります。

どいういうことかというと、こういった地道な会話から繋がったツアーガイドの人々が、Cai Be水上マーケットのボートの漕ぎ手の人々や地元の人々と繋げてくれ、ここから一緒に働いてくれる人々への交渉を始めることができたからです。

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Q4.水上マーケットで商売する人々をまたこの地に戻ってくるよう説得する方法を詳しく教えていただけますか?

A4.最初の「ステージ」はとても難しかったですが、次の「商売人を市場に戻ってきてもらう」ようにするのはより一層難しかったです。地元の船乗りが「橋代わり」となってくれて、2019年6月から私が直接Dong Hoa Hiep村やTan Phong島へ行き人々と話し、交渉することができました。最初は、誰もが首を横に振りました。なぜなら、彼らは市場を離れてからとても長い時間が経っていたからです。

私と、船乗りの方は地域の人々やその家族等に「水上マーケットでの商売に戻り、私たちと一緒に働きたい人」がいないか、探し続けました。

水上マーケットでの商売人が市場を離れる主な理由は、ビジネスが「昔ほど良くなくなった」というものです。その為、私は彼らが水上マーケットに戻るべき理由、価値や文化を守り受け継ぐ意義、観光客へのビジネス機会などを説明し続け、300万VND/人/1ヶ月の初期サポートを提案しました。

数ヶ月後、ようやく私たちのプロジェクトに賛同してくれる人が現れました。ただ、ここで新たな問題にぶち当たります。当時、水上マーケット運営はとても貧弱で、当然ながらすでに人々はボートを売っており、新しいボートを購入する費用もありませんでした。

私たちは、早速ボートを購入し水上マーケット用に改造して準備に取り掛かります。海外からの観光客が一番のピークを迎える10月までには間に合わせたかったからです。その上、もし10月までに実施できれば、約1ヶ月のサービス改善も含め、11月の国内観光客を含めたピーク・シーズンに万全の体制で挑むことができるからです。

私たちはTra Vinh、Soc TrangそしてSa Decの市場(同じメコンデルタの他の省の名称)を精査し、18-30トンの古いボートを購入、修正し、商用に貸し出しました。1隻のボートは60-90万VNDです。幸運にも、すべての物事が予想通りに進み、2019年10月から人々は水上マーケットに戻ってきました。

現在、私たちは16隻の18-30トンのボートと10の小型ボートを持っています。水上マーケットで販売されている商品は主にジャガイモ、スカッシュ、スイカなどの農産物で、魚介類や飲食物も含まれます。

観光客が多いときは、より多くのボートを水上マーケットに出し、活気を出しています。現在、毎日約40-50隻のボートが運営しています。

水上マーケットを活気づけ幸せにするために、ジャックフルーツや熟したプラムをボートに入れて売る人々もいます。より多くの人々が売買すればするほど、彼らの生活の改善と観光客の満足を向上する機会が増えて、喜びも増えます。

近い将来、まだ苦労している家族や、何か新しいビジネスを始めたいと思っている若者が、水上マーケットで何か新しいことをして、市場に出ることを願っています。私は、適切な計画を立てることや、より多くのことを行いたいと考えている人々にアドバイスを行い、サポートを行っていきます。

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Q5.ということは、つまり人々にボートを持ってきてもらって観光客に見せるのでしょうか?

A5.そういうわけではありません。観光客に魅せる水上マーケットは伝統的な水上マーケットとは少し異なります。長い間、水上マーケットと言えば人々はボートが集まり、それぞれ販売しているものを竿につけ、運搬しながら売買を行う場所だという考えでした。

しかし、外国人観光客は違う考え方をします。水上マーケットは売買のボートが市場に集まり、物品の販売やエンターテイメントの場所です。

そのため、私たちが船を改造する際、観光客がボートの上で飲食を楽しめるよう、テーブルや椅子を配置し、お皿を多く用意しました。また観光客がボートから魚が泳ぐのを見ることができるようデザインしました。

通常、水上マーケットは正午までしか行われておらず、遅くに来た観光客は水上マーケットを見ることができません。人々の協力のもと、他のボートが売買を終了した後も、いくつかのボートに残ってもらい観光客用に売買を続けてもらっています。

ツアーではなく個人で来る観光客のために、私たちのクルーズの観光客も含めて水上マーケットへ連れて行きます。ほとんどの観光客は喜んでいます。


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Q6.他の地域でも水上マーケットを復活させる動きが見られますが、あまり成功していないようです。この件に関して、氏の考えや経験を共有していただけますか?

A6.以前お伝えしたとおり、一番重要なのは人々に水上マーケットでの売買に戻った後の生活が良くなると信じさせることです。その為、ボートは美しく、かつ農産物の売買や人々が乗船するのに快適なものでなければなりません。

訪問者もとても重要です。市場の売買に活気が無いとき、人々は訪問者に農産物を販売し、収入を得ることもできます。私たちはCai Be水上マーケットで外国人観光客の呼び込みに力を入れています。

加えて、訪問者は「環境衛生」を非常に真剣に考えている為、注意を払う必要があります。昨今、私たちは近くの運河に小さなボートを配置し、ゴミを集めて衛生を確保しています。

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Q7.氏はこのプロジェクトの総費用は10億VND以上と言っていましたが、氏は人々からはお金を受け取っていませんよね。このプロジェクトはチャリティーのようなものでしょうか?

A7.このプロジェクトは「水上マーケットを復活させる」という重要な目的があります。水上マーケットは南西部のユニークな文化であり、地域の人々のより良い生活を支援します。このプロジェクトを行うことは、企業のCSRの一環のようなものです。ただ、この水上マーケットの復活は、同時に私たちにとってより優れた観光商品を訪問者に提供することに役立ちます。

以前は、誰もが「この水上マーケットは悲しすぎる」と不満を述べていましたが、今では満足しています。つまり、この目的地のサービスの質は向上し、より多くの訪問者にとって魅力的なものになりました。このような観点から、私たちは質の高い観光商品に投資をしています。旅行関連のビジネスでは質の高い商品が不足していることが多いので、これは良い投資です。

近い将来、私たちは投資を続け、ココナッツ・キャンディーやナゲット等の村々での地元製品の販売も支援したいと思います。(これらの地元製品も徐々に減少しています)

私たちは、今後も観光業のノウハウの情報共有、観光商品をより一層観光客にとって便利で魅力的なものにするためにどのようにして開発していくか等のアドバイスを行っていきます。この細かなステップが観光業全体の質を良くし、デスティネーションの競争力強化に繋がります。

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