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美しく、強く、優しい人々と出会うカントーのカイラン水上マーケット

雄大な自然と共に生きるメコンデルタの人々の生活に「水上マーケット」は欠かせない。まだ涼しく、日差しが厳しくなる前の早朝。またあの景色に出会うため、朝5時に起きて6時にBến phà Xóm Chàiという波止場へ向かう。

この波止場の隣の小道から、小型船が出港する。目指すは、カントー市街地から約6キロ離れた場所に集まるマーケットの中心地。

この朝早い生活は、カントーでは日常となった。

飾り気のない、素朴な人々の日常。でも、その日常は、世界の旅行者を魅了する水上マーケット。

私たちが起きる数時間前、カントー周辺の支流を通って、近くの村々から果物や野菜を山積みにした小型船が集まる。

朝6時頃から300隻程の船が集まり、約700mにわたる水上マーケットができる。船には、キャベツ、トマト、キャッサバ、ココナッツ、バナナ、イモ、パイナップルなどが積まれている。大型の船は卸商人の船で、小型船は農家の人々。農家から買い取った卸商はホーチミンやミトーへ売りに行く。

水上マーケットで特に魅力的な光景のひとつが「カーイ・ベオ」と呼ばれる竿だ。これは、ボートや小船の上で販売する品物を吊るした竹竿のことである。中には、白菜、キャベツ、イモなど数種類の商品がぶら下がっているのもある。

同業者同士は、だいたいエリアが固定されている。無言の、面白い秩序が保たれているようで、船同士の場所の争いや衝突は見たことが無い。

水上バー、水上カフェ、フーティウ、バインミー屋さんの船も中にはある。船の上で食べる朝食は最高だ。

メコンデルタの人々は高い値段をぶっかけたりはしない。それは相手が誰であっても同じだ。とても自分に素直な人々が多い。そして、購入した食べ物を船の上で食べながら、「おいしい!」と伝えると、「当然でしょ」と誇らしげに、満面の笑顔で答えてくれる。食を美味しそうに食べる人々を心から歓迎してくれる。ここでは、農家も卸商人も観光客も関係ない。

市場だけではなく、実際に船で生活している人々もいる。船の上には生活に必要なものは何でも揃っていて、洗濯板や全ての食器類、育てているハーブの配置や生活空間を器用に創造している。家畜を飼っている人々もいる。

私は、この生きる力が「美しいな」と思う。

ある船の上からは、ドンカー・タイ・トゥー(南西部民謡)の音楽が聞こえてくる。とても感慨深い。

船の上で、購入したパイナップルを切ってくれているボート漕ぎのお母さん。手先が器用だ。

カイラン水上マーケットは20世紀から100年以上続いており、現在メコンデルタには7つの水上マーケットがあるが、年々規模が小さくなっている。2005年に営業していた船は550隻程あったが、現在は300隻程。ひとつの理由は、メコンデルタ地域の経済の急激な発展及び交通手段の確立により、バイクなどで簡単に郵送ができるようになったこと。そして、もうひとつの理由は、ガイドの方が「8%の次世代しか親の仕事の後を継いでいない」と教えてくれた。これには、子供の意志はもちろんあるだろうけど、親の世代も子供たちには都市で仕事をしてほしいという願いもあるのだろう。

カイラン水上マーケットは、通常は少数の野菜や果物は販売されておらず、例えばパイナップルは50個以上から購入可能。(パイナップル10個は4ドル程(シーズンによるが昔はパイナップル10個1ドル程))数は少ないが、観光客向けに少数でも販売してくれる場所はある。

水上マーケットといえば、タイのイメージが強い。検索しても、タイばっかりが上位ヒットする。ただ、こちらはB to C(Business to Customer)であり、完全に観光地化されている。

カントーの水上マーケットは今でも地元の事業者達が商売を行っており、住んでいる場所に溶け込むことができる。(ただ、小型船で行くのをオススメする。そして、「こんにちは」「美味しい」「ありがとう」のベトナム語をマスターすること!)

メコン川の支流に新しく建設中の宿。

一方通行ではなく、私たちも「学び」の意識が必要で、こういった人々の暮らしや流通の仕組みなどを垣間見ることができれば、より一層興味深い探検になると思う。

カイラン水上マーケットの歴史や場所について紹介されていた本。

もっと、この水上マーケットの人々と歴史を知りたい。そして、伝えていきたい。この景色を、残していきたい。

メインの観光情報センター

カントー・ツーリスト(Can Tho Tourist) https://canthotourist.vn/
ニンキウ埠頭にある、メコン川のボートツアーをメインに行っている旅行会社。サイトはベトナム語でしかなく、実際にカントーに来た前日に訪れて、予約するのも一つの手。カイラン水上マーケットツアーは、ボート・ガイド料金込みでひとり19万ドン(約1000円)。ボートチャーターなら、1隻あたりひとりの場合92万ドン(約4600円)、ふたりの場合99万ドン(約4900円)、3人の場合104万ドン(約5200円)、4人の場合114万ドン(約5700円)

オープン:7時~18時(土日は7時~11時、13時~17時)

ただし、他にもオススメの人やツアーはたくさんあるので、もし予定されている方がいらっしゃったらお声がけください。

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