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子どもたちの可能性、夢は無限大

昨日(8月17日)の夏の甲子園3回戦、島根県代表の大社高校と西東京代表早稲田実業の試合、球史に残る名勝負でした。

野球が大好きな私なので、試合自体を語り出したら、このnoteで本当に伝えたい部分にいくのに相当文字数をかけそうなので(汗)、この試合をご覧になってない方に試合の概要を動画で見てください。

試合後のインタビューで、大社高校の石飛監督が涙を流しながら、
「この子たちの可能性、生徒の夢は無限大だ。」
という言葉に、「これぞ教師の仕事の醍醐味だ!!」と感じました。


ただ今回の大社高校の大躍進は「ミラクル」でも「出雲大社の神がかり」でもありません。

石飛監督はインタビューの中で、
「子どもたちが本当に主体的に取り組んで、自分達の課題に向き合って、結果がまさかこの場で出るとは思いませんでした。」
という言葉に、今回の大社高校の大躍進の要素が詰まっていたと感じました。
それは、
生徒の課題解決に向けての主体的な取り組み×日頃の地道な努力×可能性を引き出す環境
だと感じました。

今回は教育者の視点で、なぜあのようなミラクル的な躍進ができたのか検証していきます。

1 生徒の課題解決にむけての主体性な取り組み

課題解決に向けての主体的な取り組み。
自分達の課題は何であり、そのためにはどんなことを優先的に取り組んだらいいのか。
課題発見、課題解決法などの技法はこの20年で様々な方法が知られるようになりました。
それ自体は全国どこの学校の野球部でも取り組んでいると思います。

大社高校の場合は、課題発見、課題解決法の精度がより詳細だったと思います。
そして、こうした課題解決に向けての主体的な取り組みを生徒に習慣化させるまで任せたのではと。

そのことを感じたのが、初戦の兵庫代表報徳学園戦です。
報徳学園は地元兵庫の代表で、2年続けて選抜準優勝校。
しかもエースはプロ注目の選手。

大社高校としては32年ぶりの出場の公立校。しかも初戦は地元兵庫の名門私立校。
そんな一見「差」があるという試合前の予想に反して勝利した後、
報徳対策について聞かれた時も石飛監督は、
「自分はわからない。子どもたちが話し合って対策を立てていた。」
と述べていました。

昨年優勝した慶應義塾高校もそうでしたが、
上からの指示に従って「練習のための練習」をするのでなく、
試合に勝つため、自分の技能を伸ばすために、自分達の課題を見つけ、どう解決するかとことん向き合って結果を出すことは素晴らしいことです。


2 日頃の地道な努力

では、大社高校が目指すべき野球は何か。
石飛監督のインタビューの中にも出てきた「1点にこだわる」という野球でした。

「1点にこだわる」というのが、正確なバントと、堅い守備です。

ここで数文字書いている文字の何万倍以上もバントや守備に力を入れたことでしょう。

この2つは一見地味なのですが、あのような大接戦の中では光るものがあります。
その象徴たるものが、延長11回代打で出た安松選手のバントです。
ただ安松選手はこの夏、地方予選も含めて初めての出場です。
あの緊張した場面で、初めての打席でしっかりと自分の役目を果たしたはすごいことです。

こうして確実にバントを決まられたのは、安松選手自身の「自己信頼感」が高かったからでしょう。
なぜなら11回の大社高校の攻撃前、ベンチ前で石飛監督が、
「この中でこで犠打を決められる人は手を挙げろ。」と問いかけたら、
安松選手は即座に手を上げ、
「三塁側に決めます」と言って、見事有言実行、しかも神バントと言われるようなフェアグランドギリギリのセフティバントを決めました。

「自己信頼感」は自分を信じられる感覚です。
自分を信じられるということは、勇気と自信を自分でつくることによって可能になります。

となれば、安松選手はチーム内における自分の役割を自覚し、
地道にバントの練習をして、いつ自分の出番がくるのかを待っていたのでしょう。
だからこそあの場面でしっかりと、自分の責務を果たせたのでしょう。

3 可能性を引き出す環境

これはあくまでも私の推測ですが、
延長11回の「バント志願」は、実は石飛監督が間接的に安松選手を送り出そうとしたのではないでしょうか。

石飛監督は間違いなく安松選手のバントの技量を把握しているはずです。
タイブレークも2回目で、エースの馬庭選手も150球以上投げてこれ以上延長をするわけにはいけない。
ただこの夏1試合も出場していない安松選手に、
「安松代打で出すからバントを決めろよ」と言って送り出すよりも、
「この中でこで犠打を決められる人は手を挙げろ。」と言ったおかげで、安松選手は自分から名乗り出すことができ、プレッシャーよりも自分の使命感の方が高まって打席に立てたのではないでしょうか。

この推測が外れだとしても、
自分が決めてやる!!
それを絶対に遂行することができれば、
その選手は成長できると考え、賭けに出た部分もあるでしょう。
いや、石飛監督はああ言ったら絶対に安松は手を挙げると思って言って、
その賭けが成功した・・
だからインタビューで涙ぐんだのでしょう。

また、今春の選抜大会から低反発バットになり、
本塁打の数が激減しました。
この低反発バットの影響は大社高校のようなチームには「追い風」となり、
長打はなくとも、確実なバントができることが有利になったはずです。

もちろん安松選手だけでなく、
11イニング、魂の投球で投げ切った馬庭投手。
プレッシャーのかかる場面で好守備を繰り返したナイン。
昨年の慶應義塾高校を思い出す、早稲田独特の応援の中でも
自分達がやってきたことを出し切れたのは素晴らしいと思います。

大社高校だけでなく、
甲子園の全国大会では毎年この大会期間中で急成長するチームがあります。
ただし、その条件は代表49校すべてに当てはまります。
個人的な技能は全国レベルですから、それほど大きな差はないと思います。
やってきたこと以上のものはどんな世界でも出せません。
出し切る差が勝敗を決めるとしたら、
甲子園という特殊な環境だからこそ、
出し切れるチームは短期間で成長できると感じるのではないでしょうか。


可能性を引き出すことが教師の醍醐味!!

大社高校とはスケールが違うけど、
私も子どもたちの可能性が広がる場面を何度も体験しました。

もちろんそこにたどり着くまでには、子どもたちも私も苦悩しました。
しかし、「このことを達成できたら、子どもたちはどう変わるだろう」と思いを寄せました。

そして、それが達成した時に、
「先生は君たちの担任(顧問)であることを誇りに思う。」
と言えることの感慨深さ。
教師の仕事の醍醐味です。

この言葉を言えるよう、
子どもたちと真摯に向き合ってきました。

昨日の試合、石飛監督の涙のインタビューで、
きっと選手たちと真摯に向き合ってきたのだろうと感じました。
しかし、まだ大社高校の試合が見られる可能性は準々決勝も含めあと3試合あります。
山陰の公立高校というでけで、6年前の金足農業高校のように、
全国を味方にしたと思ってもいいでしょう。

それをプレッシャーとせず、エネルギーに変えて
大社高校らしさを発揮してほしいと願っています。






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