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「男に生まれたかった」を死語にしたい

東京に一人で住みたいと言った時、親に異常に反対された。
サークルの飲み会に参加するといった時、あまりいい顔をされなかった。
ナンパされた、と気軽な気持ちで報告すると、「気をつけなさい」と釘を刺された。
その度に思ったものだ。「なぜそこまで心配されなきゃいけないの?」

今ならその理由がわかる。本当に胸が痛くなる悲惨な事件の判決が、不起訴または無罪になる事例が、あまりにも多すぎる。平成も終わるこの時代の、先進国日本だというのに。

なぜ、強姦罪は軽視されるのか。

全く理解に苦しむ。
私自身はその様な目にあったことはないけれど、この罪に関しては特殊な(落ち度のある)一女性にあった悲劇で済まされることではない。なぜなら判決自体が、全ての女性が同様の目にあった場合でも救われることはないと、断言したようなものだったからだ。

"無理やり"テキーラを飲まされ、泥酔している状態の女性。8人もの男性に騙され囚われて、抵抗できなかった女性。高学歴の、または金持ちの男性に捕まってしまった女性。彼女たちはみんな、法によって救われなかった。私と、彼女たちの間に違っているところは何もない。私だって、彼女たちと同じ状況に陥る可能性は十分ある。なぜなら、これらの事件は女性たちが積極的に起こしたものではなく、極悪な男性からの一方的な作為によって起こされたものだからだ。

それなら飲まなければいい。スカートを履かなければいい。紛らわしいそぶりはしなければいい。馬鹿と言われないように勉強すればいい。

いまだにそんな意見を言う人がいる。そのような人はまさに歪んだ常識に囚われている。なぜならもしそうであるなら、酒を飲むことも、セクシーな服を着ることも、相手と恋人になるかどうか迷うことも、馬鹿でいることも、全て男性だけの特権ということになるから。これが、無意識のうちに蔓延る男尊女卑社会の常識の正体だ。

明らかに人権を侵害しているとわかる事例のおかしな判決をニュースでみて、当事者でない私も相当傷つく。きっと、たくさんの女性たち、理解のある男性たちは、同じように傷ついている。女性が被害者の女性を責め立てるのは、自分と差別化して、自分は大丈夫だという安心を得るためだと言われる。でも、残念だけどあなたは彼女になりうるし、彼女はあなたになりうる。違いがあるとすれば、運が良かったか悪かったか、ただそれだけ。

今、この国の歪んだ認知のおかしさに気づき始めている人が沢山いる。それはおかしい、と声をあげる人が増えている。
その度に、骨の髄まで染み込んだ価値観を覆すのは難しいという現実を突きつけられる。声を上げて社会を変えるのは容易ではないことを痛感させられる。
それでも、黙って我慢なんてしていられるか。
声を上げなきゃいけない。というか思わず声を上げざるはいられない。こんな世の中、絶対に間違っている。色んな偽の情報や、あたかも正論に見える間違った価値観が溢れるこの社会で、傷ついたこの心だけは、信用できると思う。まだ社会に出てもいない私でさえここまで傷ついているのだから、この問題は相当根深い。

あの時。私は女だから心配されたのだ。女というただそれだけの理由で。用心するのがスタンダードで、少しでも気が緩めば奈落の底に突き落とされ、さらに落ちた方が悪いと責められる世の中に生きているのだから。
人を信用しやすく、純粋な私は、そのことに21歳くらいになるまで気づかなかった。気づく前にもし何か事件に巻き込まれていたとしたら、私は救われもしなかっただろうし、むしろ相当な非難を浴びただろう。自分を責め、ざっくりと開いてもう閉じることができなくなった傷を負ったまま今を過ごしていたのだろう。
何度でもいうが、これは誰にでも起こる可能性のある「地獄」である。

今まで隠されていた間違った価値観による事件や常識が、次々と露わになってきている。リアルタイムでもどんどん生み出されている。それらを直視することはとても辛いけど、これまでのように、心に負った傷を見て見ぬ振りをする時代はもう終わりにしたい。待っているだけではダメだ。身近なことから変えていけるように、私も努力したい。そう思わざるを得ないほど、あまりにおかしい世の中だから。

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