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#04 におい


いとこから桃を貰った。


うちにいっぱいあってさ、と2つ ❥ ❥
桃色の桃、ってわけじゃなくて
ちょこんとクレヨンで塗りくわえたような
ほっぺだけ赤いみたいな感じの桃で
白いネットにくるまってコロンとかわいい。


ダイニングテーブルのど真ん中に置いてみた。

携帯やらテレビやらお菓子食べるやらの、なんとなくの時間を過ごして
そんで疲れたから机に突っ伏した。

そしたら桃のにおいがきた。
甘くてみずみずしい、桃のにおい。
ふわんと
わたしの鼻元をかすめた。

わたしはまた2つの桃に気を取られ、じぃと見つめて、桃のにおいだと思い
また意識を逸らした。
で、数分後また戻される。



これが置物で
「桃です」という においがしなかったら
きっとある一定の時間が過ぎたところで
机と桃が同化して
「桃です」という認識がじわじわと薄れていくんだろうな。
で、もともと空気であったかのようによく馴染んでしまう。

「桃です」
と話しかけてくるから
あ、桃があるや
って常に思うことができるんだろうな。


におい、って凄いや。
人の記憶を呼び起こす効果があるっていうしね。

忘れっぽいわたしにとっては
思い出させてくれる
優しい存在なのではないか。

優しいのかな?


夏のどまんなか
熱気にくるまった空だけど
意味わからんほど元気な青ともくもく雲で
やわらかな桃色のにおいを感じながら
だからなおさら 
なんか、ちょっと切なくなった。


食べるの楽しみだけどさ
❥❥


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