SHIRO✳︎機関車と積み木の国✳︎


しろとくろは積み木の国にやってきました。

大きなお城が中央に立ち、その周りに小さな家が並んでいます。小さな木やトンネルもあり、お城や家の周りを木のレールが一周囲んでいます。

木の機関車が木の小人や積み木を乗せて走っているのが見えました。

木の小人たちは、家の周りで何人かで協力して積み木を運び新しい家を建てたり、木を植えたりもしています。

素敵な国だなぁ、、

しろが思わずそう呟きました。

もっと近づいてみようと進んだ時、ふとレールの横に止まっている別の機関車があることに気がつきました。

その周りに何人か小人がいましたが、少しすると皆その機関車から離れて行ってしまいました。


しろとくろが近づくと、どうやら機関車は泣いているようで小さな泣き声が聞こえてきました。

「ねぇ、どうしたの?」

おそるおそるしろが声をかけると、機関車はしろとくろに気がついたようでした。

「やぁ、こんにちは。
君たちお客さんだね。
申し訳ないのだけど、一人にしてもらえないかな。」

しろは少し悩みましたが

「うーん、そうした方がいいのかもしれないけど。でも君泣いているよね?
泣いている理由はわからないし、きいていいかどうかもわからないんだけど
放ってはおけないんだ。」

それから少し間をおいて

「もしよかったら、話聞かせてもらえないかな?もしかしたらなにか力になってあげられるかもしれないし。」

と声をかけました。

機関車はしろとくろを見て悩んでいるようでした。

しばらくして、少しずつ話しはじめました。

「ありがとう。君たちはとても優しいね。
さっき小人たちも、そう声をかけてくれたんだけど、、
話すのも怖くて、、
思わず追い返してしまったんだ。

話したらバカにされたり、否定されるかもしれない。
それが怖くて言えないんだ。」

また大粒の涙をこぼす機関車を見て、しろはどうしようと少し戸惑いましたが、少しずつ機関車に近づいていき、そっと頬に手を当てました。

「大丈夫。ぼくはバカにしたりしないし、否定もしない。信じて。」

そう優しく語りかけました。

機関車はそのしろの言葉に驚いたのか目を大きく見開き、しばらくしろを見つめました。

「ほんとうに?」

機関車の問いにしろは大きくうん!とうなずきました。

それから機関車はまた、少しずつ話し始めました。

「ありがとう。
ぼくの名前は、ティム。
この積み木の国で荷物や国のみんなを運んでいたんだ。
それがある日できなくなってしまったんだ。
後ろを見てくれる?」

言われた通り後ろに目をやり、しろとくろは気がつきました。
荷台のタイヤが取れてしまっていたのです。

「ある日壊れてしまって、タイヤもどこかに行ってしまってね、ここから動けなくなってしまったんだ。
小人たちには怪我をさせずに済んだんだけど、危ないところだった。
今はこうやって立っているのが精一杯なんだ。

1番悲しいのは、、荷物も小人たちも運べなくなってしまったこと。
ぼくがここにいるのは、大切な荷物や小人を運ぶためなんだ。
それができなくなってしまった今、ぼくになんの価値がある?
役に立たない機関車なんて必要とされないし、価値もないんだ。」

しろはだまって機関車の話を聞いていました。


この機関車は誰かの役に立ちたがっている


そして、それができない自分は価値がないと思っているんだ


言葉からそれがひしひしと伝わってきました。

なんと言葉を返そうか、、

しろは考えましたが、いい言葉がすぐには思い浮かばず、しろは機関車をやさしく抱きしめました。

それから言いました。

「自分には価値がないなんて、思いながら過ごすのは辛いよね。
でも、たとえ走れなくなったってきみが価値がない存在なんてことはないんだ。
なんにもしなくてもただここにいるだけで、十分価値があるんだよ。
もちろん、ぼくやくろやここの国の小人たちひとりひとりもね。」

機関車は黙っていました。

「それに、、なにか方法を考えれば、きみも生まれ変われるかもしれないよ。
ぼくが考えてみてもいいかい?」

「そんなにうまくいくかな?
それに、、会ったばかりのぼくにどうしてそこまでしてくれるの?」

「それは、、、ぼくは出会った人みんなに笑顔になってほしいと思っているからだよ。」

しろが答えると、機関車はまた驚き

それから

「きみはすごいね。
そしたら、、きみに頼んでもいいかな?」

しろとくろは迷わず大きくうん!とうなずきました。


さて、どうしたら動けなくなった機関車を生まれ変わらせることができるでしょう?

しろとくろは考えましたが、いい案は思い浮かびませんでした。

「この国の小人に、聞いてみたらわかるかもね。」

くろがつぶやき、

「そうだね!」

しろも言い、ふたりで積み木の国の小人たちのところへ行ってみることにしました。

積み木を何人かで運び、家づくりをしている小人がいたのでしろは声をかけました。

「こんにちは。忙しいところごめんね。
ちょっと聞きたいことがあるのだけど、、」

それから機関車のことを話しました。

「あぁ、ぼくたちを前まで運んでくれた機関車だよね。彼はいつもぼくたちにあたたかく声をかけてくれてね、親切にしてくれたんだ。
みんな大好きだったんだけど、走れなくなっちゃってからすっかり元気がなくなってしまって、、
ぼくたちもなにかできることはないかと話していたんだ。」

「なにかこの国で困ってることとかあったりするかな?」

「うーん、、」

小人たちはしばらく考えたあと、ふいにひとりが

「できるかどうかわからないのだけど、この国にいる小鳥の夫婦が巣を作れる場所を探していたことがあって、、。
ぼくたちは家づくりで忙しいし、積み木も崩れてしまったら危ないからどこかないかなと話してたことがあったんだ。
いま、一時的に住んでもらってるところがあるんだけど、、
もしあの機関車の荷台の中で巣を作れたら、安全だし話し相手もできていいんじゃないかな。」

「それはいい考えだね。」

小人たちも楽しそうに言いました。

「その小鳥は、どこにいるの?」

しろが尋ねると、

「ぼくわかるよ!案内するね!」

小人が元気よく言いました。

積み木の城のすぐ近くにその小鳥の夫婦は小さな巣を作っていました。

「小鳥さん!君ときみの子どもたちの巣が作れそうな場所が見つかったかもしれない。」

小人がかけていき、小鳥たちに伝えると

「本当?」

小鳥の夫婦は嬉しそうに言いました。

「この国を前走っていた機関車の荷台が空いてるんだ。
その機関車が走れなくなったことを落ち込んでいてね、君たちがきてくれて住みやすい場所だったらとても嬉しいんだけど。
もしよかったら、荷台を見にきてくれないかな?」

「うん、もちろん行くよ。」

「素敵なところだといいわ。」

それからしろとくろと小人と小鳥の夫婦は揃って、機関車のところを目指しました。

急なたくさんのお客さんに、機関車はとても驚きました。

小鳥の夫婦は機関車に声をかけた後、荷台をよく見ていました。

それから

「この荷台、とてもいいわね。
居心地良さそう。
巣が落ちる心配もないし、風からわたしたちの子どもを守ってくれる。
雨除けだけあれば、問題ないわ。」

「それなら、ぼくたちがつくるよ。
ティム、いいかな?」

小人がティムに尋ねました。

ティムは不安そうにしろとくろを一度見ましたが、

「うん、ぼくのこの荷台でよければぜひ使ってよ。」

と言いました。

それから小人は仲間を呼んできて、機関車の荷台に屋根を取り付けました。
小鳥の夫婦は荷台の中で巣をつくりました。
しろとくろも手伝いました。

そして、小鳥の夫婦の素敵な新しい家が出来上がりました。

「みなさん、ありがとう!
こんな素敵な場所がすぐ見つかるなんて思ってなかった!」

「これで安心して卵を産んで、赤ちゃんを育てられるわ。」

それからティムの方を見て

「機関車さん、あなたがいてくれてよかったわ。これからわたしたち家族のことよろしくね。」

と言いました。

ティムはそれを聞き、戸惑いつつも照れくさそうに笑いました。

みんなその様子を見て、嬉しそうに顔を見合わせました。

ティムが言いました。

「みんな、本当にありがとう。
まさかこんなよくしてもらえるなんて思ってなかった。
ずっと悲しかったけど、でも走れなくなった、運べなくなったぼくでもいいんだってみんなのおかげで思えた。
こんな僕でも、まだやれることがあるってわかってよかった。

しろ、くろ、君たちに出会えてよかった。本当にありがとう。」

「もう、自分には価値がないなんて、思っちゃダメだよ。
きみのこと大好きな人がこんなにいるんだからね。」

しろがほほえんで言いました。

「うん、忘れないよ。」

ティムも笑って言いました。

しろとくろが積み木の国を後にしたあと、ティムの荷台に小鳥たちはたまごを産んだそうです。

たまごがかえるのを、ティムも小人たちもとても楽しみにしているそうです。

それからティムは小鳥の夫婦と共に、小人たちが訪ねてくるたび歌を歌い、楽しく過ごせているのでした。



✳︎ひとこと✳︎

最後まで読んでくださり、ありがとうございます💐

この物語は実際に私に言葉をくれたある恩人との出来事を取り入れました。

その恩人は、

当時なにかをがんばっていなきゃ、誰かの役に立てていなきゃ自分の存在価値はない

と思って、苦しい生き方をしていたわたしに

しろのように

なにもしてないそのままのあなたでもう価値があるんだよ。

と教えてくれました😃

そのメッセージはその後の私の生き方を大きく変えてくれました。

今度はこのSHIROの物語を通して、読んでくれた人の心に届きますように😌

そして息苦しい生き方をしてがんばり続けている人が、ほっとする肩の荷がおりますように✨


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