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【日曜版】海外旅行に必要な薬の知識

日本では健康な人であっても、海外旅行をすると体調を壊すことがあります。重症なら病院へ行くほうがよいでしょうが、軽症ならなるべく薬でなんとかしたいですよね。

そんなときのためにお薦めの薬などについて掲載します。

ここに掲載した薬は世界中で買える薬が中心なので、日本で買って持って行ってもいいでしょうし、現地の薬局で買うことも可能です。日本と外国の薬には基本的にそんな違いはありません。同じ人間なので。

痛み止め

  1. アセトアミノフェン - 安全で世界中どこでも処方箋なしで安価に買える、非常に優れた薬です。一般名が二つあり、Acetaminophen, Paracetamolと言えば通じます。コンビニやスーパーでも売ってることがあります。有名な商品名ではTylenolなどがあります。

    海外では500mgが基本で、その量ならなかなか効果があると思います。解熱作用もありますが、消炎作用はありません。弱い弱いとよく言われますが、一回に1g投与すると強力な効果があるみたいです。最近日本でも1gの用量が認可されたみたいです。

  2. NSAIDs (非ステロイド系抗炎症薬) - ロキソニンみたいなやつです。海外ではDiclofenac (ボルタレン) のほうが一般的です。どこの国でも薬局で買えます。薬剤師にNSAIDsをくれと言ってください。種類としてはDiclofenac, Ibuprofenなどがよくみます。

    塗り薬はおすすめです。商品名でいうとボルタレンゲルはわりと世界中で売られています。

    飲み薬は胃を痛めるので、海外で飲むのはあまりお勧めはしません。海外で胃潰瘍とかになったら困るので。アセトアミノフェンで全く対応できない状態になったら医者に相談するのが私としてはお勧めです。

    おなか痛いとき、胃が痛いとき、吐き気がするときには逆効果になりがちですので、飲まないで!

胃薬

  1. プロトンポンプ阻害薬 (PPI) - 胃酸を抑える薬です。胃がむかむかするときなどに有効です。お酒の飲みすぎで胃が荒れたときにも効くと思います。

    なんとかプラゾールという名前のがこれです。これまで海外で買える定番の胃薬といえばH2ブロッカーのラニチジンだったのですが、ラニチジンは安全性に問題があるとされて、最近はもっぱらPPIを勧められることが多いです。H2ブロッカーより強力な効果を持ちます。

    NSAIDsを飲むときは、これも必ず一緒に飲みましょう!

  2. H2ブロッカー - 日本だとガスターという商品で有名なあれです。ガスターの一般名はfamotidineですが、海外で売ってるのあんまり見たことないかも…。まあH2ブロッカーもPPIも大して変わりないので、どっちかで!

下痢止め

  1. ロペラミド - Loperamideは世界中で使われている強力な下痢止めです。強力に下痢を止めますが、食中毒などのときに飲むとヤバいので、バス移動などのどうしても必要なときに限定して飲むのがお勧めです。

    下痢のときは基本は部屋で寝てましょう。ヤバければ医者へ。

    世界中の薬局で買えると思いますが、日本製のトメダインコーワフィルムという製剤はフィルム状になっており、財布などに入れておくといざというとき便利です。

  2. 次サリチル酸ビスマス製剤 - 個人的なお気に入りです。旅行者下痢症に効果があるとされています。衛生状態の怪しいもの、激辛なものを食べる前に飲むと、下痢を予防してくれる気がします。エビデンスは微妙です。

    日本では次硝酸ビスマス製剤が処方してもらえるそうですが、私はいつもタイでGastro-Bismolという商品を薬局で買ってます。

    X線に映るので、医者でX線検査の前に飲むとややこしいことになります。あと便が黒くなります。

  3. 日本の薬店で買うのであれば、ビオフェルミン下痢止めもありかもしれません。いろいろな生薬が入ってたりして、医学的にどうなのか、エビデンスはどうなのか、微妙なところもあるんですが、下痢止めのなかでは比較的安心して飲めるほうなのかなと。

避妊薬

  1. 日本と異なり、多くの国では女性用の避妊薬が薬局で買えます。とくにアフターピル(性行為のあとに飲む避妊薬)はほぼ薬局で買えると思って間違いないでしょう。使い方などは検索して調べてください。英語では「emergency contraceptive (緊急避妊薬)」や「morning-after pill」と言います。

ワクチン

  1. 海外旅行行くときに全員が打つべきワクチンは、A型肝炎です。世界では当たり前に蔓延している病気で、食事や水などから感染し、かかると一か月くらい寝込みます。

  2. 外国でセックスをする人、僻地に行く人は、B型肝炎ワクチンも必ず打っておきましょう。性行為や汚れた注射針などから感染します。

  3. HPVワクチンは女性は必須です。女性はとにかく若いうちに絶対打ちましょう。子宮頸がんを大幅に減少させます。男性も尖圭コンジローマという厄介な性感染症を防ぐことができるのでお勧めですが、男性は有料なので高いです><

  4. さいきんは髄膜炎菌ワクチンの一種(Bexsero🄬)が淋病予防に効果があるかもしれないという話題が盛んになっていますね。いまのところエビデンスは薄弱だと思いますし、値段もめちゃくちゃ高いし、打つと1週間くらい注射部位が痛いので、あまりお勧めしません。セックスとワクチンが大好きでお金に余裕がある人だけやってみてはどうでしょうか。

性感染症予防薬

  1. 抗菌薬(ドキシサイクリン)や抗HIV薬(ツルバダ)などの薬があります。飲み方(いつ飲むか)が大事なのと、飲む前に性感染症の検査をしないといけないので、医者に行って処方してもらうことをお勧めします。

    日本でも自費で処方してくれる医師が東京ならいると思います。外国でも大都市ならセクシャルヘルスに特化したクリニックや医師などもいるとおもいますので、相談してみましょう。

乗り物酔い

  1. 私はさほど乗り物酔いしませんので、あまり詳しくありませんが、一般的には抗ヒスタミン薬が使われます。抗ヒスタミン薬は非常に基本的な薬であり、どこの国でも手に入るものですから「Motion sickness (乗り物酔い)」と薬剤師に伝えれば売ってくれるでしょう。

    眠気の副作用があるので、運転などをするときには絶対に飲まないでください。

吐き気止め

  1. 素人が買って飲めるような薬で吐き気を止めるのは難しいです。胃薬とか乗り物酔いの薬とかを早めに飲んで、吐き気が起きるのを防ぎましょう。

風邪

  1. 私は風邪薬(総合感冒薬)というものは飲みません。あれは一通りの症状に効くようにお薬をミックスしただけの素人用の薬で副作用も非常に強いからです。私は副作用の少ないアセトアミノフェンと葛根湯を飲むことが多いです。

  2. 風邪のときの強力な鼻水止めの薬は、コルゲンコーワ鼻炎フィルムαがお勧めです。これもフィルムなので日本から持ち歩いてもかさばりません。眠くなるので運転などするときは絶対に飲んではいけません。

  3. 咳止めですが、葛根湯や鼻炎フィルムでも多少効果あるかと思います。私は龍角散トローチを持ち歩いてます。いわゆる鎮咳薬というものは依存性もあり危険なのでお勧めしません。どうしてもひどいときは医者で喘息吸入薬を処方してもらうのがよいです。

    東南アジアなどのゆるい国では薬局で「asthma inhaler」と薬剤師に言えば喘息吸入薬を売ってくれます。でも種類がいろいろあるし、副作用もあるので、医者に相談するほうが望ましいです。

海外では買えない薬たち

  1. テプレノン (セルベックス、セルベール) - 胃粘膜保護剤ですが、日本でしか人気がないので、海外ではあまり買えないと思います。個人的には日本で買って持っていったりします。飲み会の前に飲みます。でもエビデンスは弱いかも。

  2. 漢方薬 (葛根湯とか龍角散とか) - 持ってくと非常に役立ちます。葛根湯(麻黄湯でも麻杏甘石湯でもいいですが)は風邪や風邪気味のときに身体の痛みやだるさを取ってくれるので重宝しますし、龍角散や麻杏甘石湯は咳やのどの痛みに効きます。

医者のかかりかた

  1. 海外旅行保険の窓口に電話すると、近隣のおすすめの病院を教えてくれます。世界中の大都市なら英語の通じる病院の一つや二つくらいあります。アジアの大都市なら日本語の通じる病院もあるので、行きましょう。

  2. 田舎で海外旅行保険でも分からない場合は、ホテルの人に聞きます。なんかしら助けてくれると思います。田舎すぎて、まともな医者がない場合は、薬局の薬剤師が、わりとなんとかしてくれます。

  3. 動物に噛まれた、食中毒、嘔吐、高熱、その他、普通ではない症状が起きたときは医者に行くべきです。腸チフス、マラリア、コレラ、狂犬病など、日本にはない致死的な病気が多数ありますが、医者に行けば高確率で助かります。素人がそういう病気を手持ちの薬でなんとかするのは無理ぽです。

  4. どうしても医者のいないような僻地に旅する場合は、あらかじめ日本か世界の大都市でトラベルクリニックを受診して、抗菌薬や抗マラリア薬などを自費で予防用に処方してもらいましょう。使い方をしっかり説明してもらってください。あとワクチンもたっぷり打っといてください。

  5. 最悪の場合、救急車やヘリで外国に搬送になります。数百万円~数千万円は覚悟しておきましょう。たぶん海外旅行保険会社が手配してくれると思います。

そういうわけなので、海外旅行保険にはきっちり入っておきましょう。

最近は日本でも既往症があってもネットで入れる海外旅行保険も増えてきていますので、よいとおもいます。

ただ既往症や、既往症の悪化による医療費は、旅行保険では保証されないのが通常ですので、そのぶんの薬や医療費は自分で用意する必要があります。

たとえば心臓病とかのような重篤な疾患のある人が、米国のように医療費が高額な場所へ旅行するのは現実的に難しいかもしれません。医療費はあっというまに数千万円から数億円になってしまうからです。


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