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ロンドンはいいところ、らしい|ロンドンモンサン2016 #1

モン・サン=ミシェルのついでにロンドンに行った。国をまたいだ「ついで」は、移動距離が長い分、両国の空気をたらふく味わうことができた。

前年にパリに行った僕は、モン・サン=ミシェル行きのバスを「次は乗ってやるからな」という思いで見送っていた。この思いを成就せねばならない。

モン・サン=ミシェルに行くのは決まりとして、他はどうするか。パリはおおよそのところはすでに観た。ならば、フランスの永遠のライバルであるイギリスを観ておこう。ユーロスターで移動すれば時間的にはそれほどかからないだろう。

一筆書きの移動ルートをもとに、各地の宿を手配して思った。

「これ、どこかで何かが崩れると、後の予定が全て狂うな、、、」

不安とともに「そうなったらちょっと面白い」と思いながら、僕はExpediaのボタンを押した。

KLMオランダ航空 アムステルダム滞在なし

今回の旅の目的はモン・サン=ミシェルだ。でもその前にロンドンに寄る。さらにその前にトランジットでアムステルダムに3時間ほど滞在する、予定だった。

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今回の航空はKLMオランダ航空だ。そのためアムステルダムでトランジットがある。ロンドン直行便よりも若干安く、ついでにアムステルダムも少し観られるぞ、と考えたのだ。アムステルダムの東インド会社を主目的に。

成田空港を出発したKLMオランダは、12時間ほどでアムステルダムのスキポール空港に到着する。この機内で、担当CAさんが、仕事で会ったことのある人で一人で驚く。聞くと、臨時スタッフとしてときどきCAとして勤務しているとのこと。意外と世界は狭かった。

ところで僕は、12時間ぐらいなら一度もトイレに立たないでも大丈夫という、謎の特技?がある。国内の夜行バスで鍛えられた賜物だ。トイレに立たないでいいので、席は基本的に窓側をおさえる。そして到着するまで微動だにしない。今回の旅もその例にならっていた。

そんな僕を訝しんでか、または親切心でか、一度目の機内食の時間に、隣に座っていたインド系の母娘が声をかけてきた。察するに「トイレに行きたいときは遠慮なく言いなさいね」的なことだと思う。だが、そんなことで席を立つほど、夜行バスで鍛えられた僕はヤワではない。「Thank you.」とだけ返して再び微動だにしない。

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その後数時間、険しいロシアのシベリアの山々の景色を楽しむ。シベリア送りとはよく行ったもので、こんなところに送られるのは、当時も今も、並大抵のことではない。

そんなことを思っていると、二度目の食事が運ばれてくる。すると、再び隣の母娘に声をかけられた。

「トイレに行かなくて本当に大丈夫なの?気にしないでいいからね?」
「ありがとう、大丈夫(本当はちょっと行きたい)」

到着まであと1、2時間。我慢できないことはない(我慢しなくてもいい。)

そんなやり取りの後、飛行機はアムステルダムに到着した。到着後、知り合いのCAさんに挨拶した後、全速力でトイレに向かう。隣の母娘には「ジャパニーズクレイジー」に見えたと思われる。

スキポール空港 寄り道失敗

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スキポール空港は、ヨーロッパでも3番目に大きいが、同時に分かりにくい空港として有名だ。到着してトランジットの一時入国をしようとしたが、どうにも場所が分からない。そして、トイレで安心したと同時に偏頭痛が襲ってきた。原因はおそらく水分不足だ。少し休めばラクになるだろうと、ドリンクを飲みながら、しばし休憩をする。

1、2時間ほど休んだころ、体調はほぼ回復。しかしながら、ここから一時入国は、時間的リスクが大きいため、残念ながら諦める。空港から市街地までが近いことで有名なスキポール空港だが、さすがに厳しい。東インド会社、観ておきたかったので、リベンジを誓いながら、ロンドン行きの便まで待つ。

ロンドン行き いいところ情報

アムステルダムからロンドンは、1時間半ほど。日本で言えば国内線ぐらいの距離だ。そのため飛行機も小さい機体。機内は、当たり前ながら周囲はヨーロッパ系の人だらけ。

異邦人な自分が面白いと思いながら、席を探すと、自席に大柄な男性が座っている。何度も席を確認し、つたない英語で「そこは僕の席なんですが」と伝えた。男性は人の良さそうな笑顔で「Oh, sorry.」と、隣にある本来の席に移ってくれる。優しい人で良かった。さすがイギリス、紳士の国だ。

ただこの大柄な男性、どうにも人が良すぎるようで、飛行機からイギリスが見えるようになってくると、

「ロンドンが見えるだろ?アレがオレの国なんだぜ。いいところだろ?」

と、やたら話しかけてくる。共感したいのは山々だが、時刻20時すぎ。外は真っ暗。いいところかどうかの判別をつけるには、僕のレベルが足りない。

間もなくして、ロンドンのヒースロー空港に到着した。大柄な男性は笑顔で「Enjoy your trip!」と言って、手ぶらで去っていった。英国紳士は荷物が少ないらしい。

ロンドンのホテル シャワー狭すぎ

時刻は21時ごろ。ロンドン市内にはバスで行く予定だったが、乗り場が分からない。というよりも、おそらくそこにあっただろう窓口が閉まっている。これは困った、ともたもたしていると、空港スタッフの女性に「Train Train」と言われる。こちらが分からなさそうな顔をしていると、彼女が指をさして「アレに乗ればいける」的な説明をしてくれた。言われるがまま、ロンドン地下鉄ピカデリー線に乗り込み、ロンドン中心部のビクトリア駅に向かう。

予約していた宿はビクトリア駅近く。時刻22時ごろに、ようやくホテルについた僕を、帰り際だったらしい女性スタッフが部屋に案内してくれた。

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この部屋、広いのはいいが、古くてボロい。そして、シャワー付きトイレ付きではあるものの、そのシャワーがトイレの一角に申し訳程度についているのみなので、直立不動でぎりぎり便座にかからない程度の広さ。これは辛い。ついでにお湯の出し方が分からない。これで一泊13,000円。ロンドンのホテル代の高さにあらためて驚く。

機内で出会った大柄な紳士の、「オレのロンドンはいいところだぜ!」は、実感できないまま、ベッドだけは広い部屋で眠りについた。明日は「いいところ」を実感できるように。


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