社会人になったキミへ。
社会人になったキミはつらそうだった。いや、今もつらそうだ。
キミと出会ってから5年の仲だけど、キミがあんなにも苦しみ、もがいているのをわたしは初めて見た。だから、とっても戸惑った。半分学生で半分社会人みたいな中途半端なわたしが、キミとどう向き合えばいいんだろうって。
結果として、キミとオールしてぶつかって泣いて、抱き合って、それで紅茶飲んで、朝4時くらいに川辺でラーメン食べるみたいな、ドラマチックな時間を過ごした。真正面からキミと向き合えたことはわたしたちにとって必要な時間だったと思う。
というのは、わたしの自己満足かも笑笑
実際、キミがどう感じとったかは、時間が経ったら直接聞くことにしよう。
・・・
と、思っていたんだけど、キミは社会人の洗礼で遠くに行ってしまってしばらく会えないから、いつも通り先に言いたいことを言わせてもらおう笑
社会人になったキミは
社会人になる前のキミは、ちょっと苦しそうだった。
多分それは、キミの周りの友達が社会人になっていないこともあったと思う。(わたしを含めて)
なぜか、社会人になるキミはわたしの周りでマイノリティだった。大学を卒業して看護に編入する子、大学院に行く子などなど。
もともと研究が好きで大学院に進むことも考えていたキミは、キミなりに納得して就職を選んだ。バリバリに仕事ができて、人を心から応援し、サポートできるキミが選んだ道だから、きっと活躍してゴリゴリに昇進コースかななんて考えていた。
研修中のキミは憔悴しきっていた。
今振り返ると、仕事が忙しかったのもあるだろうし、3ヶ月もホテルに缶詰にされていたのもあると思う。
でも、それだけじゃなかった。
キミは気がついた。自分の仕事が、本質的に人を助けることになっていないことに。
キミはいつも本質を見抜く力に優れていた。いつだってそうだ。
わたしの何気ないひとことを、漏らさず捕らえて、わたしの真意を見抜いてくる。たまにそれがわたしにとっても、キミにとってもつらいがあったりするのだけど、、、。素直になれないときがあるわたしをキミは幾度となく、そしてさりげなく救ってくれていた。
その姿勢や洞察力は、周りの物事に対しても、社会や世界規模になっても変わらない。それが、キミの取り柄で、わたしはそんなキミを心から尊敬している。
でもね。
どうやら、キミみたいに本質を捉えられる人、本質に気づいちゃう人はこの社会では「生きづらい」らしい。
この社会には、曖昧なこと、グレーなこと、そして闇に葬られたことがたくさんある。だから、そこで生きていくのはきれいごとではない。
気づかなければ幸せなことってたくさんある。
たとえば、仕事帰りにかーーっと飲むハイボールの原価が35円だってこととか、雲は食べれないこととか、わたあめはめっちゃ太るし虫歯になるとか、、、(いい例えが一個も思いつかなかった笑笑)
あ、そうだ。紙おむつが自然に分解されるまで450年以上かかることとか。
でも、気づかない方がしあわせかって言われたらそうではないと思う。
そうではないってわかっているけど、それでも本質に気づきながらそれを続けるのは本当に苦しい。
キミは何度も言った。というより、わたしに訴えていた。気づきながら、働き続けるのは本当に苦しいって。
日曜日の夜が怖くなったって言ってたね。寝るのが怖いって。月曜日が来て、それでまた1週間がはじまるのが。
もし、自分が働けなくなったらどうしようって。
もし、動けなくなったらどうしようって。
追い詰められていた。
そんなキミに、わたしができたことは週末「うちおいで」って誘うことだけだった。いつも遠慮がちなキミが誘うと毎回泊まりに来た。なんとなく、これはやばいって思った。
会社、やめちゃいなよ。
これは、わたしの癖だ。すぐに、やめちゃえって無責任に言っちゃう。あくまでも無責任な立場で。本当にキミが会社を辞めて無職になっても、ご飯食べにおいでくらいは言えるけど、経済的支援とかはできない。
それでも、やっぱり非常事態だと思ったから、会社やめちゃいなよって何度も言った。わたしの母親も言ってた。というか、もう少し踏ん張れなんて口が裂けても言えるような状態ではなかった。
唯一、わたしの父だけがいつになく真面目な顔で、そんな簡単に「辞めちゃえ」なんて言うもんじゃない。と言った。あんなに毎日働きたくないと、早くリタイアしておでん屋を開きたいと言っている父が。きっと、社会人として、父として、大黒柱として、何か思うところがあったのだろう…。ちょっと感動した。
キミは焦っていた。痛々しいほどに。
色んな人に、色んなことを言われるもんだから、キミはますます混乱していた。社会人の最初なんてそんなもんだとか。3ヶ月は続けろとか。ボーナス出るまではやれ。とか
逆に、辞めてやれ。とか、転職できるよとか、大学院受ければとか。今は色んな生き方があるよとか。
全部、正しい意見なような気がした。
そして、キミにはタイムリミットがあった。
研修が終わったら、配属先の地方に行かなくてはならない。それまでに、次の進路を見つけなければ。キミはますます焦っていた。
色んな人に相談し、色んな道を模索した。
その一方で、「自分で納得して就職を選んだ」という、自分にも縛られていた。
自分で決めたのに、自分で選んだのに、それができない自分がまた嫌で嫌で嫌で。
いつも、周りからも自分からも距離を置いて冷静に物事を判断するキミが、どんどん冷静さを失っているようにわたしには見えた。
キミが言うことも、送ってくる文章も支離滅裂だった。それでもキミはなんとか前に進もうとしていた。そんなキミをただただ見守るしかなかった。それは、わたしにとってもつらかった。
そして、わたしに繰り返し言っていた。
すごく冷静な自分がいる。と
もしかしたらそれは願望だったのかもしれない。冷静でいたい自分を宣言していたのかもしれない。
キミが冷静さを失っていたとき、それは当たり前のことだと思った。どんな人だって、苦しい時に冷静でいられない異常が通常になるんだよ。
そんな状態だったけど、キミは少しカッコつけていた。わたしに対しても、キミの周りの人にも。ちょっと、ムカついた。今は素直に落ち込めばいいのに、なんでそうやって強がるわけ?って。
で、キミの異常事態に気づいた何人かから、メッセージが来た。みんなキミのことを心配していた。そして、わたしの「やばい」と、キミが最も信頼している人の「やばい」が合致したとき、わたしは腹をくくった。
キミに嫌われても、キミを泣かせても、絶縁になるかもしれないけど、キミと腹を割って話そうと。
本当なら、キミが自分で抜け出すまで、見守るのがよかったのかもしれない。でもキミにはタイムリミットがあった。キミと同様わたしも焦っていた。そして、何より直感が「やばい」と言っていた。
そして、2人で大泣きした
詳しくは、書かない。
最初に書いた通り、キミとオールしてぶつかって泣いて、抱き合って、それで紅茶飲んで、朝4時くらいに川辺でコンビニでかったラーメン食べた。それで、蚊に刺された。あ、岩盤浴も行った。汗ながしたら全部出るだろって安直な考えで笑
そのとき、キミは
自分が何者でもなくなるのが怖かったと言った。
自分には、何も無いということに気づくのが怖いと言った。
しまったと思った。
気づかなければ幸せなこともある。気づきたくない事実もある。
一番触れられたくない部分に、わたしは泥のついた手で、直接触ってしまった。
キミが会社を辞めたからって、何者でも無くなるわけでも、キミに何もないわけではない。キミはいるだけで最高だし、人に尽くすことができるし、なにより、キミはわたしにとってのラッキーガールだ。キミに会うと私の人生は好転する。(完全にプラセボ効果かもしれないけど、でもそうなんだよ。)
でも、社会からは何者かを求められるし、何もないとみられるかもしれない。
それでも、何者かでいないと生きていけない社会だから。
キミに必要だったのは
キャリアカウンセリングでも、コーチングでもなかったとわたしは思う。
コーチングは、1を10にしたり、80を120にするものだとわたしは考えている。
でも、キミは0だった。はっきり言えば、マイナスだった。
0に何かけても0で、マイナスに何をかけてもマイナスなように、当時のキミには何をかけても意味がなかった。むしろ、焦れば焦るほど、マイナスの値が増えていった。
キミに必要だったのはケアだったと思う。
これは、わたしがケアの勉強をしているからっていうだけなのかもしれないけど笑
ケアは、0や1になるまでマイナスを一緒に過ごすことだと思う。明けない夜を一緒に過ごすことなんだと思う。
人は、弱いときに、強いものに憧れ引っ張られる。これは、ニュートンのりんごと同じ原理なのかもしれない(まぁ、いつも通りそれっぽいことを適当に言っているだけだけど笑)
だから、キミはキミを導いてくれそうな人やものに惹かれた。そういうことなんだと思う。別にいい悪いじゃない。
それから、
キミは、金曜日の仕事終わりに新幹線に飛び乗って、実家に帰った。
いつだって計画的なキミからは想像もつかないことだけど、帰ってきたキミはスッキリした顔をしていた。
キミがどんな思いで、わたしの言葉を受け取ったかはわからないけれど、それでもスッキリした顔を見て安心した。
自分史上、一番お節介おばさんをしてしまった。
ごめん。放って置けない性格で。首突っ込んで、傷つけただけかもしれない。
と、無責任なこと言った自分に珍しく責任感じてウジウジして、さらに課題に追われている余裕がなくなっているわたしに、
キミは「日々をこなすだけで十分ちさは今を生きてる」と。
あぁ、キミには叶わないや。
なんでもお見通し。
・・・
わたしはこれから新幹線に乗って遠くに行くキミを見送りに、品川駅まで行った。
わたしは、らっきょう漬けを渡した。すぐ腐らないし、血液サラサラになるよって。
キミはわたしに紫陽花のドライフラワーをくれた。卒業式のときに欲しいって言ってたからって。
らっきょうとドライフラワーじゃ、釣り合わないじゃん笑笑
そういうところ、やっぱりかっこいいし憧れるんだよ〜。わたしもらっきょう漬けじゃなくて、サラッとドライフラワーあげられる人になりたいよ笑笑
•••
わたしはキミを見守っていたつもりでいたけど、本当はキミの方がわたしのことをずっと見守ってくれていたのかもしれない。
この話は別に美談でもなんでもない。ふたりの若者の備忘録。シモーヌ・ヴェイユの言葉で言うなら「殴り書きの剥き出しの生」だ。
キミの弱さを暴露してごめんね。
堂々巡りだけどさ、
犬かきで、鼻に水入るかもしれないけどさ、ふがふが言いながら、もがき続けよう。
⚠︎本人に掲載許可取りました。熱中症にはきをつけろよ、相棒。笑
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