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百年の孤独、株主総会(ニコン、テルモ、ソフトバンク等) / 投資家の日常は、いとをかし。 #12 2024年6月 後編 テキスト版

こちらのポッドキャストのテキスト版です。

前編はこちら



個人投資家に対するイメージの変化

renny:前編の最後に個人投資家に対するイメージが少し変わってきたんじゃないかな、というようなことを吉田さんからお聞きしたんですが、そういうふうに感じられるような出会いがあったんですよね。

吉田:まず、あんまりイメージが良くないなと思ってたっていうのは、昔はどっかに呼ばれて行って、個人投資家の吉田さん、みたいに紹介されると、紹介された相手はちょっとギョッとするのが分かるんですよね。

renny:僕もブログの名刺って、あの投資家rennyって書いていて、それを渡すとみんなにギョッてするわけですよ。専業の投資家って思われるんで、渡してすぐに本業は会社員ですみたいなやり取りをしてます。僕の場合は印象付けるために投資家って言葉を使っているようなところがあるんですけれども。

吉田:最近はそういうのがなくなってきていて、妻の友人とかは話を聞きたいから連れてきてとねだられているらしくて、イメージ変わってきたなって思ってたところ、今月ある人の紹介で、政治家を目指している同い年の方とお目にかかる機会があったんです。

renny:政治家志望の方ですか。

吉田:今は議員の秘書をされたりとかして、自民党から出たいそうなんですが、選挙区が席が空くのを待ってるみたいな感じの方で、いろんな立場の人の意見を聞きたいから、みたいな感じで私に興味持ってくださったみたいなんです。

renny:そうなんですね。

吉田:話していて面白かったのが、投資先の見つけ方と社会課題とか政治課題の見つけ方が、ちょっと思考回路が似てるねみたいな話になって。私は割と日常の中で投資のヒントが出てくることが多くて、たとえば去年、ポッドキャストでデクセリアルズの話をしましたよね。元々は母が人間ドックで骨密度が減ったという検査結果から、再生医療の会社にたどり着いて、その会社に出資してたのがデクセリアルズみたいな。そういう話とかしてたら、日常でピンときたところに社会課題に気づくことがあるのが似ているという話になったり、あとはこれからの日本をどうしたらいいか考えるために、日本の神話を勉強し直したみたいなことを話されていて、私も日本企業投資するには日本の文化とか歴史から入っていくところも似ていて、もしかしたら、世の中を読み解くための方法は意外と限られてるのかな、似通ってくるのかな、という気付きがとっても面白かったですね。

renny:政治家志望の方っていうのは、家系的に政治をずっとやってらっしゃる方ではなくて、全く政治のところじゃないところから目指そうとされてる方なんですか。

吉田:全然関係なさそうでしたね。

renny:そういう人が政治を志してくださると、明るい希望が持てるのかなというか、吉田さんと同い年なら政治の世界だったらまだまだ全然若手だと思うんで。今回の都知事選とかどうにかならんのか、と思ったりしますが、そういう紹介のされ方もあるっていうことは、個人投資家というか投資家のイメージっていうのは、違ったものをお持ちになってる方が増えてきてるっていうことの表れなんですかね。

吉田:その方は特殊かもしれなくて、rennyさんもよくご存知の田内学さんと親しいそうで、たぶん金融のことにアレルギーがないんだろうなっていうのはありましたね。

renny:そうですか。田内さんと関係をお持ちの方なんですね。それはなかなか面白いですね。本の話に戻って最近読み始められた本があるとお聞きしたんですけれども。

ガルシア・マルケス「百年の孤独」が文庫化

吉田:たぶん一昨日だったと思うんですけど、ガルシア・マルケスの「百年の孤独」が文庫化されて、たしかノーベル文学賞か何かのすごい有名な小説なんですよね。でも難解と言われてビビって、手を伸ばしにくかったんですけど、今回、文庫化されるにあたって、ずいぶん話題になってる印象だったので、この機会に読んでみようかと。

renny:この本読むためのガイドブックみたいなものまで出てるそうですね。

吉田:新潮社が読書ガイドみたいなのをWebサイトで公開してくれていて、途中で迷子になりかかったら、それを読めば戻ってこれるようになってます。

renny:ゲームの攻略本みたいな。

吉田:そんな感じです。まだ50ページぐらいしか読んでないですけど、挫折しそうな雰囲気は全然なく読んでます。

renny:ちなみに文庫本でページ数はどれぐらいなんですか。

吉田:600ページぐらいですね。

renny:なかなかの長編ではありますね。僕も「100年の孤独」っていうキーワードは、最近Xを見てましたが、恥ずかしながら本の名前は全く知らず、100年の孤独と聞いて、焼酎の銘柄を思い浮かべてしまいました。どっかで関係してるんじゃないかなと想像するんですけど、その焼酎も飲んだことないんで、さっき調べたら宮崎の黒木本店で麦焼酎でした。宮崎県というと芋焼酎のイメージがあるんですが、「100年の孤独」は麦焼酎ということで、僕は小説よりも焼酎の方に手を伸ばしそうです。100年の孤独を最後までお読みになって、どうだったかみたいなお話は、もしかしたら来月のこのポッドキャストで。

吉田:かもしれないですね。

ニコンとテルモの株主総会

renny:それは楽しみにしたいと思います。6月と言えば3月決算の会社の株主総会が数多く行われるという月で、僕も実は1社、ニコンさんの株主総会に行ってきました。3月に買って、投資した理由は、今回4月に社長に就任された徳成旨亮さんって方が、以前ポッドキャストでもお話しましたが、北村慶っていうペンネームで本を書かれてて、その本を十五、六年前、投資を始めた頃に読んだ本で、すごく印象的な本の著者さんだったんですよね。

renny:その方が実は三菱UFJフィナンシャル・グループのCFOをされた後、新たな挑戦として、ニコンさんでCFOから入られて今回社長に就任されたので、どんな感じかなと。日本産の事業をどこまで勉強してるかっていうのはちょっとさておきですねそういう何ていうんすかね、きっかけをくださった方がどんなふうな総会運営をされるのかっていうのと、どんな株主さんがいらっしゃるのかなと興味があっていってきました。大きな驚きはなかったんですけれども、楽しみに見守りたいなというような株主総会でした。吉田さんは、株主総会、いかがでしたか。

吉田:会場参加したのはテルモだけでした。七、八年ぶりに社長が交代なので、動画中継じゃなくて本物見に行こうかなっていうのと、会場で製品の展示も同時にやるっていうことだったんで、それも見てみたいなと思って、カテーテルを触ったりして、こんな大きさなんだ、って楽しんできました。

renny:テルモさんの株主総会って場所は、どちらで行われたんですか?

吉田:明治記念館って、国立競技場とかあるあたりの、ちょうど今、都知事選で木が伐られるのどうのと問題になってる神宮外苑を横目に見ながら、明治記念館へ歩いて行ったって感じです。

renny:テルモさんの株主総会って毎年同じ場所でやられてるんですか?

吉田:毎年一緒じゃないかな。もう1回前の社長交代の時の株主総会にも参加しましたが、あの時も明治記念館だった気がしますね。

renny:そうですか。テルモさんと言えば、僕が保有しているスパークスさんのファンド「厳選投資」で、2014年か15年くらいからテルモさんに投資されていたんですけど、今年の3月決算の運用報告書を見ると、この1年でテルモさんの株式を全部売却されてたんですよね。

renny:類似企業でいくと、去年、投資を始められたオリンパスさんがあって、それと入れ替わったような感じなんですよね。業績も堅調に見えるので、どういう投資判断をされたのかってのは興味があるところなんですが、吉田さんはテルモさんを、かなり長い間お持ちになってる感じですか?

吉田:そうですね。もう10年ぐらいは持ってるのかな。

renny:そもそもテルモさんに投資しようと思われた理由って何だったんですか?

吉田:株価が割安に見えたのと、当時はまだまだ日本国内の事業がメインぐらいの感じだったのが、これから海外比率を増やしていく、みたいなタイミングだったような記憶がありますね。

renny:この分野で非常に存在感ある会社だと思うし、四季報の業績についての記事は最高益更新っていうのが見出しに書いてありますので、順調なのかなというふうに思うんですけどね。

ソフトバンク株主総会とNVIDIA

renny:あと株主総会というと、あちこちで紹介されてましたけれど、ソフトバンクグループの孫さんの講演ですよね。

吉田:投資してなくてもYouTubeで普通に見られるので、面白いことを話す年があるから毎年見るようにしてるんですが、なんか今年は結構ぶっ飛んだ内容だったなぁと。人間の1万倍賢い「ASI」を実現するのが自分の最後の仕事だと。今考えられている「AGI(汎用人工知能)」のもっとすごいAIってイメージで話されてました。それをロボットに組み込んで、いろんな作業をするような時代になるから、ソフトバンクは人類の進化に貢献する会社になるんだと。

renny:かなりSFチックですね。でも実現すると、前編のエピソードでもお話いただいた、AIをフル稼働させると、ものすごい電力が必要になってくるという課題考えると、人工超知能をやろうと思うと、さらにエネルギーの負荷がかかりますよね。

吉田:そのとおりですね。電力の他にも水を結構使うみたいで、Googleとかマイクロソフトのサステナビリティレポートみたいなのを読むと、水の消費量がAIの話が出てきたあたりからすごい増えてて、たぶん冷却用のための水消費で、これも心配なところですね。

renny:そういう意味では、省電力でパフォーマンス出せるような技術、例えば前編で出てきたNTTの技術なんかは、そういう面で貢献するかもしれないっていう見立てってことなんですかね。

吉田:そうですね。もう画期的な省エネ技術でもない限り、どうにもならないんじゃないかという状況なので。

renny:あと孫さんのお話には、NVIDIAも結構出ていたという報道もされてましたね。昨日のおおぶねの受益者向けのイベントでも、NVIDIAの話題が何回か出てましたね。NVIDIAに投資してませんっていう話がね。吉田さんは今もお持ちなんですよね。

吉田:はい。そろそろ売った方がいいのかな、ってずっと悩んでたりしますね。

renny:今日たまたま見つけたんですけれども、ベイリーギフォードの長期投資の方のファンドで、三菱UFJアセットマネジメントさんから新しいレポートが出てて、NVIDIA投資を決めたのが2016年で、その頃どうして投資を決めたのか、そのときの見立てはどうだったのか、ことが説明されていました。またイルミナという遺伝子解析の会社を、去年かな、そのファンドは売却していて、売却に至るまでの過程をすごく具体的に説明されていて、これは一読に値するかなというふうに思いました。

https://www.am.mufg.jp/fund/topics/__icsFiles/afieldfile/2024/06/27/253406s_240627.pdf

renny:そういう意味でNVIDIAは持ってる人はどうしようか悩ましいし、持ってない人は持ってない恐怖と戦わなきゃいけない。

吉田:そうなんですよね。株価上がってこれは行き過ぎだろうと思ったところで、業績発表があって業績が株価についていくみたいな状態がずっと続いてるんですよね。そうなるとNVIDIA自体はそんなに割高に見えないけれども、NVIDIAにつられて株価が上がっているような周辺の半導体関係の会社が割高に見えてくる。そんな感じで訳がわからなくなってきちゃったっていうのがありますね。

renny:しばらくはアメリカの株式市場はNVIDIAに振り回されそうな感じはありますよね。

吉田:そうですね。時価総額が世界一というのは、さすがに行き過ぎだなと思って。だから最近、本当に困り始めましたね。

renny:このまま利益成長も遂げて、10年後にさらに利益倍になるような会社なのかどうかとを考えると、どうなんだろうっていうようなとこありますよね。

吉田:ソフトバンクの総会で孫さんが言ってたのは、もう1回過去に戻って選択ができるとしても、自分はArmを選ぶみたいなことを話してました。それは今後証明されますみたいな感じで。

renny:それはポジショントークというかそういう願望でしょうけどね。このほかの会社の株主総会はいかがですか?

最近の株主総会の傾向

吉田:中継で五、六社見てたんですけど、最近の傾向として3月決算だと5月中に、アナリストやメディア向け決算説明会がある企業が多くて、それをIRページに動画で載せちゃう会社が増えてきたんですね。そこで説明してた内容の短縮版を株主総会で出してくるみたいな企業が増えていて、だから決算説明会の動画の方がレベル高いし、質疑応答も変な人が混ざってないから、やり取りがちゃんとしてるし、私にとって株主総会の重要性が薄れつつあるような気がしました。

renny:吉田さんがご覧になってた会社はネット中継をやれるようなところだから、時価総額の大きな会社なんじゃないかな、と想像するんですけど。

吉田:そのとおりです。

renny:そうなると中小型の会社はもちろんIRミーティングをやってらっしゃるとこあるんですけれども、物足りなさが出てくるので、株主総会では個人投資家の方がそれなりに意欲を持ってコミットされてるような会社が多かったりするんで、株主総会に行くと勉強になるなっていうなとこありますね。

吉田:株主総会に行かないと情報がないような会社は行った方がいいですよね。

renny:だから大きな企業はIRの動画の方が、内容的にも質疑なんかにしてもストレス感じないのかもしれないですね。

吉田:だから大きな会社は、経営陣が変わる時だけでいいかなとは思うようになりましたね。

renny:今年の株主総会もいろいろ株主提案が出たようで、昨日は東洋証券が株主総会前に議案を差し替えたとかっていうようなニュースもありましたね。

吉田:そういう株主提案の総会とかにはまだ出会ったことがないですね。

renny:今日もテレビ朝日ホールディングスの株主総会でもひと悶着あったみたいなことが報道はされてましたけどね。僕もそんなにややこしい総会に出たことないんで、どういう感じなのかっていうのはちょっと興味があるものの、わざわざそんな会社の株買うことっていうのもあんまりないですよね。

吉田:ないですね。

renny:でも、吉田さんのがお持ちのひらまつさんなんかは、小さい会社で、しかもいろいろある会社ですね。

吉田:今回の総会で経営陣刷新されて、社内の取締役は1名でその人が代表取締役になるんですけど、カンロ飴の会社を立て直した方、あと残り3名の取締役は弁護士さんに、主な出資先というか潰れそうなとき出資してくれたパチンコ屋のマルハン、あと介護サービスの会社の元社長って、もうレストランと何も関係ない人たちになっちゃって、これからどうするつもりなんだろうと。

renny:なんかもう近々MBOも考えないといけないしんどいところに来ているのかもしれないですね。

吉田:そうですね。レストランも実際に食事をしてみると、今後も店舗が削減されていくんだろうなという感じはありますね。

renny:なるほど。来月のテーマは去年もとりあげたJリーグクラブの決算ですかね。

吉田:そうですね徐々に出始めていて、7月に全部揃うのかな。

renny:揃ってるようであれば、またJリーグクラブ財務業績を見てみたら面白いのかなと思っています。


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