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pixivFANBOXのPdMが振り返る、クリエイターとファンが楽しめる投稿企画が生まれるまで


自己紹介

こんにちは。ピクシブ株式会社のjovzです。クリエイターの継続的な創作活動を応援するためのファンコミュニティが集まる、月額制のサブスクリプションプラットフォーム「pixivFANBOX(ピクシブファンボックス)」のプロダクトマネージャーとして、プロダクト開発・サービス運営に携わっています。それ以前はWebディレクターとして、pixiv関連サービスのリニューアルや新規立ち上げ等を行っていました。

このnoteでは、pixivFANBOXで実施している「投稿企画」を例にとりながら、ピクシブのPdMが普段どのようなことを考えて業務に携わっているのかをご紹介します。

読んでほしいターゲット

以下のいずれかに当てはまる人を読者として想定しています。

  • プロダクトマネジメントの業務領域の中でも企画・マーケティングに興味がある

  • 創作活動やクリエイターを支える仕事に興味がある

pixivFANBOXについて

ピクシブではマンガが好きな人、絵が好きな人、手芸が好きな人、小説が好きな人など、あらゆる角度からそれらを愛する人・応援する人たちに向けて自社で20近いサービスの開発・運用を行っています。その中で私が担当しているpixivFANBOXはクリエイターの継続的な創作活動をサポートすることを目的に、好きな創作活動を続けたいクリエイターと、その活動を応援したいファンに向けたサービスを展開しています。サービス開始から5年が経過し、2023年9月現在では20万人を超えるクリエイターの方々にご利用いただいています。

職種説明

一般的にPdM職とは、チームと会社が正しいプロダクトをユーザーに届けるために、さまざまなスキル、ツール、チームを駆使し、プロダクト開発を推進します。ここで言う「プロダクト」とは、ピクシブにおいては主にユーザーに提供するウェブサービスのことを指します。

to Cサービスはpixiv、ピクシブ百科事典、pixivコミック、BOOTH、pixivFACTORY、pixivFANBOX、pixiv Sketch、VRoid など、to Bサービスは広告事業・金融事業などを展開しております。

プロダクトを取り巻く領域として「開発者」「ユーザー」「ビジネス」の3つが存在し、それらの領域の橋渡しを行うことで、プロダクト開発は前進します。

多くのPdMはプロダクト開発チームに所属し、ユーザー領域やビジネス領域との橋渡しを行います。時にそれぞれの立場から矛盾するインプットが集まることもありますが、それらにおいてもPdMが調整を行います。

例えば、ユーザーが満足する体験を設計しようとする一方で、ユーザーの注意を広告に寄せることも求められる、といったジレンマに対してPdMはよりよい解決策を検討し、プロダクト開発を前進させる役割を担います。

また、最初からエンジニアやビジネス領域などすべての領域に精通している必要はなく、各領域を必要なメンバーに担当してもらうこともPdMの職務の一部ですし、PdMとして自分で実際にプロジェクトを進行していく中で、各領域への理解を深めていくことができます。

プロジェクトを始めた時からの業務の流れ

pixivFANBOXと投稿企画

pixivFANBOXは、クリエイター自らが創作活動を応援してくれるファンを集め、継続的な支援を得ることで「クリエイターが創作活動を長く続けられるようにすること」を目的としたサービスです。

そんなpixivFANBOXでは3年ほど前から、クリエイター向けに投稿テーマを提供し、そのテーマに沿った内容をpixivFANBOXでクリエイターに投稿してもらう「投稿企画」というものを定期的に実施しています。

クリエイターが継続的な支援を得られるようにするための第一歩として、「定期的に投稿を行い、ファンの方に自身の創作活動やパーソナリティを知ってもらう機会を作ること」がとても重要です。

ですが、サービス運営を続ける中で、クリエイターの方から「何を投稿したら良いのかわからない」という声や「投稿できるようなネタがない」という声をいただくことが増えてきました。こういったクリエイターの悩みに何かしらの形で応えることができないかと考えて始めたのが投稿企画です。

投稿企画のポイント

これまでに20を超える投稿企画を実施していますが、その目的は「pixivFANBOXへ投稿するきっかけと投稿のネタをクリエイター向けに提供・提案すること」です。
そんな投稿企画を考える際には「ファンが楽しめるものになっているか」「企画を行う時期とテーマがマッチしているか」など、いくつか気をつけているポイントはありますが、なかでも最も大事にしているのは「投稿までにかかる労力が高くないか」という視点です。

pixivFANBOXは投稿の公開範囲を支援者限定にできる性質上、他の人がどんな投稿をしているのかがわかりにくい部分があるため、「ファンのためにリッチなコンテンツを投稿し続けなければ」と捉えてしまうクリエイターも多くいます。

もしも「pixivFANBOX限定の作品をつくって公開しよう」といった主旨の投稿企画があれば、ファンの方は嬉しいかもしれませんが、クリエイターにとっては投稿するまでにそれなりに労力がかかるものになります。

もちろん、ファンが喜ぶリッチなコンテンツを投稿し続けられるなら一番なのですが、それは決して容易なことではありません。「もっと創作活動に割ける時間を増やせるように支援を集めたいと思って始めたのに、だんだん更新することが負担に感じるようになり、結果的に創作活動の足枷になってしまった」という、誰も望まない状況にもなる可能性すらあります。

そのため、ファンからの支援を集める場所であるpixivFANBOXにおいては、どれだけ簡単な内容でも良いので「クリエイターのことがもっと知れて、応援したくなる」ような投稿をしていくことが何より大切で、投稿企画においても、そこを意識するようにしています。

例えば、過去に行った「#みんなで自己紹介」という投稿企画では、クリエイターに自己紹介を書いて投稿してもらいました。自己紹介は案外pixivFANBOXを始めたタイミングでサラッと書いて終わりになっている方も多く、新規のファンからするとどんな人なのかを知る機会が限られてしまう場合があります。また、自分にまつわることであれば誰しも書きやすいため、更新が滞りがちだったクリエイターでも、活動内容に限らず参加しやすいのではという思いがありました。

またその際、こちらで自己紹介用に5つの質問を用意し、それに応えれば参加できる形にしました。これもなるべく気軽に企画に参加してもらえるようにという考えからです。

結果的に1カ月弱で1,000件以上もの投稿が集まりました。この企画参加をきっかけにpixivFANBOXを始めてくださったクリエイターも多く、最初の一歩をつくることにも貢献できたかと思います。

投稿企画で提供する投稿テーマは「こういう内容で投稿してもいいんですよ」という、ある意味で私たちサービス運営者からクリエイターへのメッセージでもあるので、企画を通して少しでも投稿してみようという方が増えてくれたら幸いです。

投稿企画の案出し〜実施

ピクシブ社内では、FigmaやNotionといったツールを用いてアイデアをブラッシュアップしたり情報の整理を行っています。

投稿企画においても、チーム内でFigjamを使って投稿企画の案を出し合います。投稿企画を始めた頃はなるべくユーザー体験を損わないよう注意しながら、参加を促すための導線設計も行いました。

決まった企画内容をNotionにまとめ、それを元にデザイナーにクリエイティブの作成依頼をしたり、企画開始に向けたタスク進行を行ったりしていきます。
また、何度もこのプロセスを繰り返す中で、Notionテンプレートを用意するなど省力化できる部分は省力化していき運用コストを減らすことも行っています。

効果検証

過去のすべての投稿企画は投稿数や参加者数などのデータを計測し、効果検証を行っています。それらを元に参加条件やインセンティブなどに変化を加えながらどうすればより良い企画にできるのか、日々改善を続けています。

得たスキル、経験、思考

投稿企画に限らず、直接クリエイターの方からお話を聞いたり、SNSでのユーザーの発言やお問い合わせなどから「ユーザーがどこに不満を感じ、何に困っているか」を認識するところからプロダクトの改善につながることが多くあります。そのため、何かをリリースした後も、問い合わせやSNSでの反応を注視し、自分たちのねらいとユーザーの受け入れ方との間にズレがないか、意識的に確認するようにしています。

PdMとしての苦労や失敗

これは最近特に実感することなのですが「長く同じプロダクトの開発・サービス運営を続けるほど、過去に自分が行った選択に自分自身が苦しめられる経験も増えていく」ということです。

当時スピード優先で割り切って作った仕組みや機能が、ユーザー数の増加や市場の変化などの要因によって運用コストが高くなったり、開発効率を落とす元凶になったりすることがあります。

もちろんユーザーに早く価値を届けたいという気持ちはこれからも変わりませんが、後々困らないようにドキュメントを残しておいたり、定期的に仕組みや機能を見直すことも重要です。それは自分に限らず、今後サービス開発に携わる未来のチームメンバーも助けることになるものだと思っています。

PdMを目指したい人へ

プロダクトマネージャーに求められるスキルは多岐に渡りますし、プロダクトの性質や置かれている状況、チームメンバーの構成などによって何が重視されるかも異なってきます。
ですが、何より大事なのは「プロダクトを持続可能な状態にすること」であり、そのために何ができるかを考えて行動できる力だと思っています。私自身も未熟な点ばかりですし、チームメンバーやユーザーに迷惑をかけてしまうこともありますが、この先も自分ができることを増やしていきながらプロダクトに貢献したいと思っています。一緒にがんばりましょう!

ここまで読んで、少しでもプロダクトマネージャーという職種やpixivFANBOXというプロダクトに興味を持っていただけたら、ぜひこちらからご連絡ください。一緒に働ける日がくることを楽しみにしています。


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