235回 ファッションレボリューション23


流行は繰り返すと言われる。
面白いことに、20年前に流行ったファッションが目新しく格好良く見えるのに反して、10年前の流行は古くさくダサく見える。
いまは「Y2K」と呼ばれる2000年代のファッションがブームとなっているそうだ。

この20年というスパンが興味深い。
若い世代が流行の中心を担うのはいつの時代でも同じだが、彼ら彼女らにとって、親の世代の流行である20年前のファッションは、どういう存在か。
もし18歳だとすると、10年前のファッションは8歳の時のことになる。まだなんとなく記憶に残っているので、それを古くさいと感じるのはよくわかる。それが20年前になると生まれる前の出来事なのだから、新鮮なのは当たり前だ。ネットで目にしたり古着屋で見かけたりすれば、興味を持つだろう。
そういうことなら毎年その時点から20年前のファッションが流行るのかというと、それはない。ファッションの流行というのは、ピークとなる前後数年間存在してるのであり、毎年毎年新しい流行が出現するわけではないからだ。
社会現象とはいかないまでも、それなりに印象的で記憶に残るような流行が起こるには、10年くらいのスパンが必要なのだと思う。

もちろん流行が廃れようがなんだろうが、それ以前からまたはそれ以降でも、このファッションが好きなのでずっと着ているという人がいてもかまわない。それはその人のスタイルなので、他人がとやかく言うことではないのだから。
ただファッションは常に変化する動的なものであり、流行はその時代の「空気」という曖昧だがある意味核心をついた本質を体現していたりする。そのためお洒落に敏感な人は、流行の気配に気づきそれをいち早く自分のファッションに取り入れる。
20年前のファッションの流行を取り入れるといっても、それはもちろんその当時のまま着るのではない。20年前の古着を着るにしても、コーディネートまでは同じにしないのがコツなのである。
20年のサイクルは同じところに戻ってくるわけではなく、緩やかに螺旋を描いて進化していくのだ。

ということで、スカートの丈の話になる。
先日ファッションデザイナーのマリー・クヮントが93歳で亡くなったというニュースが報道された。世界中にミニ・スカートの空前の流行を生み出したマリー・クヮント。デイジーを象った印象的なマークとは、化粧品などを通じてどこかで出会ったことがあるだろう。
1955年、それまでの窮屈なスタイルとは一線を画すファッションを世に出すべく、彼女はロンドンのチェルシー地区に「Bazaar(バザー)」というブティックをオープンした。
そこは単に服を売るだけでなく、新しい価値観を提唱する場所であった。「女性は好きな服を着て好きなことをするべきだ」という信条が体現されたマリー・クヮントの服は、動きやすいミニ丈であるばかりでなく、ジャージーなど新しい素材を用いて作られており、「スウィンギング・ロンドン」と呼ばれる1960年代のユース・カルチャーの一端を担った。

日本では1965年に帝人が日本初のミニスカートを発売したそうだが、やはり流行の火付けとなったのは、1967年に来日した「ミニの女王」Twiggy(ツイッギー)だろう。マリー・クヮントのモデルとして活躍した彼女のミニスカート姿を発端に、美空ひばりといった芸能人から津々浦々の一般人まで、日本全国でミニスカート・ブームが巻き起こる。
この流行がいかに凄かったかというと、女性警官の制服までもミニスカートになったというのだから、これは社会現象といっても良いだろう。JALやANAといった航空会社のCAの制服も、1960年代後半から70年代前半にかけて、スカートの丈が一番短くなっている。
この頃私はまだ小学生だったが、当時は所謂女の子らしい格好に反発していたため、殆どスカートを履かなかった。なのでミニスカートを履いた記憶はないのだが、反面ショートパンツはよく履いていたので、やはり丈が短いことが大事だと意識していたのかもしれない。

2015年頃からスカート丈はロングが主流になる。その前に流行った膝丈に続き、膝が隠れるミディ丈やふくらはぎまで届くミモレ丈、そしてくるぶしまでのマキシ丈と、長い丈の流行が続いている。
そうなると途端に、以前の膝丈のスカートが中途半端でダサく見えてくるから不思議だ。もっとも膝丈であっても、ロングブーツを合わせたりトップスを工夫したりすれば、お洒落に着こなすことは可能である。自分には膝丈がマストという人はそのままで良いと思う。
しかしいったんロング丈の潮流がやってくると、普通に売られている服はほぼその傾向になってしまうため、逆らうことはなかなか難しい。決まったスタイルを貫くデザイナーであっても、時代の「空気」は作品に影響を及ぼす。
よく言われるのが、「景気が良いと服はタイトでコンパクトになるが、不景気になると布の分量が多くなる」という言説だ。確かに80年代後半のバブル景気の頃は、布の量が極端に少ないミニのボディコンが流行った。90年代はミニスカートに厚底ブーツを合わせるスタイルが大人気だった。因みに極端な厚底ブーツを履いて転び足を骨折した症例が多発した時代でもある。
その後は長い不景気の時代が続いているため、徐々にスカートの丈は長くなってきたと考えられる。

昨年頃からZ世代と呼ばれる20代前半の若者の間で、「Y2K」と呼ばれるファッションが流行り始めている。「Y2K」というのは「Year2000=2000年」という意味で、その当時の平成ギャルスタイルを元に、現在のK-POPアイドルのファッションなどを取り入れたものである。
厚底靴にチビT、ローライズデニム、お腹見せ、ルーズソックス、そしてミニスカートが再び日の目を浴びているとのこと。
確かに流行は繰り返すのだなと思うとともに、景気も良くなってほしいものだと願っている。


登場したファッションアイテム:ミニスカート(miniskirts)
→「mini」の名称は、マリー・クヮントが大好きだった英国車の「Mini」に由来しているとのこと。クルマのミニはいまやすっかり大きくなり、ミニではなくなってしまった。
今回のBGM:「恋愛レボリューション21」by モーニング娘。
→言わずと知れた2000年の大ヒット曲。モー娘。の20世紀最後のシングルである。今聴いても凄い歌詞だ。


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