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【竹下隆一郎のSDG 1on1】第1回 〜SDGsって儲かるの?〜 ゲスト:藤野英人さん

「コンテンツの力で、経済と人を動かす」をビジョンに掲げ、サービスを開発中の新会社PIVOT。そのチーフSDGsエディターである竹下隆一郎が、この人と話したいというゲストをお招きして対談をする「竹下隆一郎のSDGs 1on1」。

初回のゲストは藤野英人さん。国内最大級規模のアクティブ投資信託「ひふみシリーズ」のCIO(最高投資責任者)であり、その運営を行うレオス・キャピタルワークス株式会社の代表取締役 会長兼社長(創業者)です。お金のプロの藤野さんとともに、SDGsとこれからのビジネスの関係について「SDGsは儲かるの?」という視点で話し合いました。
※今回の該当テーマ:「8.働きがいも経済成長も」(SDGs: 持続可能な開発目標17項目より)

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藤野 英人 / レオス・キャピタルワークス株式会社 
代表取締役 会長兼社長/CIO(最高投資責任者)


野村投資顧問(現:野村アセットマネジメント)、ジャーディン・フレミング(現:JPモルガン・アセット・マネジメント)、ゴールドマン・サックス・アセット・マネジメントを経て、2003年レオス・キャピタルワークス創業。「ひふみ投信」シリーズファンドマネージャー。JPXアカデミーフェロー、東京理科大学上席特任教授、早稲田大学政治経済学部非常勤講師、叡啓大学客員教授。一般社団法人投資信託協会理事。

これからの10年間、SDGsはグローバル的に儲けの源泉

竹下 藤野さんとは4月にclubhouseで対談して以来ですね。本日は来ていただきありがとうございます。 

レオス・キャピタルワークス代表 藤野氏(以下 藤野) 僕は投資家として、新しい会社を応援するのがライフワークの一つなのですが、PIVOTという会社ができて、佐々木さんや竹下さんたちの名前を聞いたとき、驚きとともに嬉しくなりました。自由や楽しさのあるような、令和っぽい雰囲気がしたのです。これからとても楽しみにしています。

竹下 ありがとうございます!新しい会社では、ハフポスト時代からこだわっていたSDGsのコンテンツ作りを行うのですが、最もよく訊かれるのが「SDGsって結局儲かるの?得なことあるの?」ということ。だからこそ今日は、お金のプロである藤野さんに、SDGsとビジネスの関係についてお話を伺いたい思っています。

早速、一番訊きたい事を訊いてしまうのですが、SDGsって儲かると思いますか?

藤野 それは儲かるでしょう。きっと、めちゃめちゃ儲かるんじゃないですか。日本ではGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人)が年金運用にESG(Environment, Social, Governance※)の観点を入れるべき、となってから、盛り上がりを感じます。それをきっかけにここ3年くらいでESG・SDGsを重要視している会社の株価が上昇しました。

それは日本だけではなく、国際的にはもっと進んでいて、特にこれからの10年間は、SDGsはグローバル的に儲けの源泉です。ここにお金が流れているので、ビジネスにおいて重要なイシューであるということは間違いないと思います。

竹下 確かに、私もそういう実感はあります。今では当たり前になっているITがそうだったように、儲かる儲からないということではなく、ESGやSDGsを前提にしないとビジネスが成り立たないのではないかなと思います。

ESG(Environment, Social, Governance)
環境、社会、ガバナンスという三つの重要なことを中心に社会を考えていこうというもの

ゲコノミクス/多様性を意識した市場を作ること

竹下 私はハフポスト時代に「#飲み会やめる」という企画をやってみたりして、藤野さんが、お酒を飲まない人のマーケットを分析した「ゲコノミクス」という本も面白いと思っていました。SDGsは、自分たちがこれまで気付いていなかった消費者の存在を明らかにする効果があります。

たとえばSDGsの目標3は「すべての人に健康と福祉を」ですが、アルコールの問題に取り組むこともSDGsです。お酒が苦手な人のことを意識すると新しいマーケットが発見されます。儲かるチャンスが生まれますよね。

藤野 僕は下戸なのですが、お酒飲まない人はどちらかというとマイノリティで、「お酒を飲むのは当たり前」と思われていたり、「お酒を飲まないなんて人生の半分くらい損しているな」と言われたりします。そういう面では、これからは多様性を意識して市場として扱うということが大切だと思っています。(「ゲコノミクス」では、ノンアルコール飲料など下戸の消費者を対象にするビジネスは3000億円の経済効果があると推測されている)

僕は「普通」っていう概念が嫌いなんです。仕事柄いろいろな人にインタビューをするのですが、みんな何かにコンプレックスがあったり、普通の人というのはいないんです。SDGsというのは、多様性を認めて、普通じゃない人がいてもいいということです。それがSDGsの中心的な考え方だと思います。

竹下 確かに、お酒を飲まない人もいるし、飲む人の中でも、お酒を好きなふりをして実は家ではお茶を飲んでいるという人がいるかもしれない。これまでは見えていなかった多様な価値観が、SNSなどによって可視化されてきたなと思います。

藤野 そうですね。マイノリティに対してみんなが興味と関心を示すということが、経済成長につながる大事なことだと思います。

サラリーマン資本主義を脱却するには

竹下 そのような個人の多様性に着目すると、ひとつひとつに対応しなければならないので、ビジネスがスケールしづらいと思うのですが、かえって儲からないのでは?

藤野 だからこそ、多様性のあるSDGs的な組織でないと、これからのビジネスに対応できなくなってくるでしょう。しかし、今の日本の大きな会社の社長さんは、そのほとんどが新卒からの出世競争で勝ち上がった人ばかりで、モノカルチャーなんです。

しかも、社長になっても任期は大体3~4年くらい。株を持っていないので、成功して大金持ちになるわけもないし、社長(就任)をゴールと捉えていると、それからはほとんど消化試合のようになってしまう。

そういう人たちは、”消費者とより良い社会をどう考えるか”という、長期的な目線があまりないんです。日本にはそのような構造的な問題であるサラリーマン資本主義があるから、海外から遅れをとっていると思います。

竹下 私も賛成です。藤野さんがおっしゃる通り、日本はサラリーマン資本主義が行き過ぎてしまっていて、海外と比較すると社外との対話が少ないと感じます。SDGsを重視している海外の企業は、自社のスタンスを明確にして、多様なステークホルダーとの議論が活発です。社会に向けてさまざまな方法で発信をしています。

だから、リーダー自身が自分の言葉でしっかりと発信できるスキルが重要になってくると思います。

藤野 そうですね、本当にこのサラリーマン資本主義を、根本からに変えないといけないですね。

竹下 そのためにできることはいろいろあると思うので、まずはリーダーが自らnoteで意見を発信するなど、身近なところからやってみてほしいですし、周りの方もそれを促してみるということからスタートしてみたらいいのかなと思います。

藤野さん、本日はありがとうございました。

藤野 またやりましょう、ありがとうございました。

<まとめ>
・SDGsは儲かる。世界的な流れで、お金が集まってきている。
・これからのビジネスは「多様性」がキーワード。きれい事ではなく、自分たちが気付かなかった「儲けのタネ」を発見することにもつながる。
・リーダーは自分の言葉で発信して、対話の機会を増やし、コミュニケーションスキルを鍛えていくべき。

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