置いてけぼりの世界③
「宝箱喫茶って何よ」
放課後、二人になった教室で初めて安藤に声をかけた。
「皆の宝物を持ち寄って飾って、それにあったメニューを提供したいと思う。」
私の案を言ってもクラスメイトは まぁこんなもんか という反応を示していた。けれど、宝物喫茶は違う。
皆の目が...それこそ宝物のよう輝いた。
「予算だって限りがある。家庭科室が使えないから料理は作れない。豊富なメニューなんて非現実的だわ」
「メニューは大量の駄菓子にする」
駄菓子...?
「1個十円とかだし。バラバラにして皿に盛り付けて出せばいいだろ。学生の文化祭だしな」
「でも、それじゃあお客は納得しない!」
味は愚か、写真映えさえしないじゃない。1番人気のお店はまず見た目だけは最高。だから私は...お洒落な外装を...提案したのに。
「なんで、駄目だったんだろう」
私が働くお店、結構人気なんだけどな。
安藤は駄菓子の検索をしていた手を止め、私を見た。まっすぐと。
「変わった思い出が欲しいからだよ。」
安藤はnamazonのサイトを開き、私に見せた。
「お前の服、もうランキング圏外になってるぞ」
「げっ!うっそー早い...」
「また買いなおすのか?」
「当たり前じゃない。恥ずかしくて外歩けないわ」
まーたあの悪が含んだ顔で笑われる。
「それはそれでいいと思うけど。俺、お前が先週着てた服覚えてねえよ」
「そ、それがなに?」
「人が他人を見るなんて、そんなもんってことだよ」
安藤が言いたいことがなんとなくわかった。悪く言えば、自意識過剰だって言ってるんだ。よく言えば...人の目を気にしすぎだって...言ってるんだ。
「だったらさ、自分達も楽しくて、同窓会でもみんなで話せるような。ずっと残る変な思い出作りてえじゃん。」
教室の中だから風なんて吹くはずがないのにざわっとした。
一位を買いつづければ。人気な物を持ちつづければ失敗はしない。
でもそれって、埋もれてしまうってことだ。
私は、クラスの皆が埋もれないように人気アイテムの中でも少しでも自分らしさを出せるようにしていた中で、輝いていると勘違いして1番の物を買いつづけた。
私...マネキンだったんだ。
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