業務改善プランナー

一般会社員のための副業の新しいカタチ

クラウドワークス社より、中小企業向けにクラウドソーシングを普及させるプロジェクトについて、プレスリリースが出された。(業務改善プログラム
自分は、昨年より、業務改善プランナーとして取組みを試行的に行いつつ、このプロジェクトの推進に関わってきた。
ここでは、なぜ自分が業務改善プランナーを行おうと思ったのか、また、このプロジェクトが、中小企業にもたらす効果と、副業をしたいと考える一会社員にとってどんな意義をもっているか、という点について書きたいと思う。


業務改善プランナーの役割

以前、「なぜ多くの中小企業に外部の支援が届かないか」という記事において、中小企業へ新しいサービスを導入することがいかに困難かという話を書いた。
業務改善プログラムとは、クラウドソーシングを活用して小規模企業の業務の効率化をはかるプロジェクトだが、ITに疎い多くの小規模企業が、存在を知って即座にクラウドソーシングを使えるはずもない。
業務改善プランナーが丁寧に課題のヒアリングを行い、使える状態までサポートして初めて活用が始まる。

中に入るとわかるのだが、そもそも少人数で運営する小規模な企業ほど、規模に関わらず発生する組織運営業務(経理とか労務とか主にバックオフィス業務)の負担は大きく、クラウドソーシングのニーズは本来高いはずだ。
にも関わらず利用が広がらなかったのには、段階的に以下3つくらいの理由があった。

①クラウドソーシングを知らない
日々の仕事に追われており、「業務改善を行う」という発想がなく、サービスそのものを知らない。
②自社の課題がクラウドソーシングで解消されるという発想がない
「時間が足りない→外出しできる業務も自社でやっていて、本来割くべきことに時間が割けていない→クラウドソーシングで解消できる」という考え方は、外の人間に指摘されなければ気づかないので、自らクラウドソーシングを活用しようという行動に結びつかない。
③オンライン上でのやりとりができない
クラウドソーシングの価値がわかっても、Webサイトを介して見ず知らずの人と出会ったり仕事を頼んだりするという感覚に慣れていないため、やり取りができない。もしくは、できる人が社長だけだったりするので、優先順位が下がって実施されない。

このような障壁があり、クラウドソーシングは、老舗の小規模企業には活用されていなかったのだ。
業務プランナーは、間に入って仕事の切り出しとクラウドワーカーとの調整まで行うことで、この障壁を乗り越え、社内担当者が活用できる状態にして渡す。
業務プランナーは、世の中に存在していたけれど、多くの小規模事業者が隔たれていたサービスをつなぐ役割を果たす。
これは、日本社会にとって、大きな変化を起こす突破口になり得るかもしれない。
なぜなら、数でいえば小規模事業者は日本の企業の大多数を占めているということと、後で述べるように、同じ経済を支えながら、違う世界で動いていた人たちの接点となる可能性も秘めているからだ。


今の社会には、営業が足りない

モニターをやってくれた会社にクラウドソーシングを導入しようとして、驚いたことがある。
経理データの入力を依頼しようと思い、ワーカーを募集したところ、2日で150人の応募があった。1か月分のデータ入力で、3,000円の仕事だ。
しかも、応募してきてくれた人は、この仕事にはオーバースペックとも思われる会計や経理のスペシャリストたちがたくさんいた。
それまで、この会社のために社員の募集を手伝ったことがあったが、その時には必死に拡散して1件しか応募がなかったのとは雲泥の差だ。
世の中にはこんなにも在宅ワークをしたい人が多いのか。。
圧倒的に働きたい人に対して仕事の供給が足りていない。

一方で、日本には、おそらくクラウドソーシングを活用すればかなり仕事が楽になる小さな会社が数百万社あるだろう。

情報発信が足りていないのではない。上述したように、情報は発信しても受け手が受け取れる状況にないと意味がないのだ。

圧倒的に足りないのは、サービスのデリバリーだった。つまり営業だ。
何かに困っている人に対し、それを解決するサービスを届ける。
その提供者と受給者の世界が、金額的にも人的にも隔たれ過ぎてしまっているのだ。
少しでも営業効率を高めたいサービス提供会社にとって、小規模企業は営業コストに見合う収益を得る相手とみなされず、どんどん進化するサービスから取り残されてしまってきた。
これは、クラウドソーシングに限らず、多くのWebを介したサービスで同じことがいえる。

進化についてこれる企業だけが残ればよいという発想もあるだろう。だが、残念なことに日本中の圧倒的な割合の企業がついてこれておらず、取り残された企業は経済規模で見ても無視できないほど大きい。

業務改善プランナーが丁寧にサポートすれば、小規模企業でもきちんと利用できるようになり、仕事の依頼が継続発注されるのだ。

問題は、誰がこのデリバリーコストを負担するのか(業務改善プランナーの担い手になるのか)?という点だ。

それが、一般会社員の副業だと思う。


なぜ副業の業務改善プランナーが必要か

昨年あたりから大企業でも一気に副業が解禁されて、世の中は副業・兼業の話題であふれている。
副業の情報サイトも充実してきて、NPOの支援から、地方活性のプロジェクトまで、挑戦しようと思えば機会はたくさんある。
だが、そういった機会で会う実践者たちは、副業解禁前から動いていた活発な人たちや、元々スポットでの仕事がしやすいWeb制作やデザインなどのスキルを持つ人たちだ。
東京で大多数を占める、特に専門的なスキルはないけど、5年10年会社で働いてきました、いろんな仕事をこなしてきました、という人たちにとってはまだ上述したような副業案件はハードルが高く、解禁されたものの結局何もしてなかったり、アンケートモニターやちょこっとバイトなどの旧態依然とした副業を試したのみだったりする。
要はゼネラリスト向けのちょうどよい副業案件がないのだ。

業務改善プランナーは、そういった、いろんな仕事をしてきました、まがりなりにも10年いろんな人と関わりながら仕事をしてきました、という人でもできる、というかむしろだからこそできる仕事だ。

自分も副業で企業支援に関わり始めたころ、自分のようにコンサル会社で働いた経験もない人間が何の役に立てるのか、不安だった。
しかし、思った以上に役に立つことができる。

やってみてわかったのは、ほとんどの小規模企業で求められているのはMBAで学ぶような戦略やマーケティングではなく、日々の業務改善だ。
そこでつまずいているから業績が悪くなっており、日々の仕事が回るようになるだけで、劇的に組織は改善する。
専門的な売上拡大策や新規事業開発は、日常が円滑に回るようになってから外部の力を借りてやればいい。

ここが、本職のコンサルタントだと、お金をもらっている手前、何かを提供したり提案しなければならなくなるが、ほとんどの小規模企業がそれをいかせない。

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それに対し、業務改善プランナーは、「今社内の人が困っていることを少しでも楽にすること」が目標なので、何かを足すというより、引いていくイメージだ。

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水をせき止めていた石を除いた細い川のように、難しくはないが負担になっていた仕事が減っていくと、組織が面白いように流れ出す。
流れてくると次の本当の課題が見えてきたりするので、そうしたら次のことを考えればいい。
とっかかりとして、「日常業務を楽にすること」は、プランナーにも企業にも無理がないし、プランナーが企業に役に立てることでできる関係性が、次にさらに進んだ支援や、事業展開を呼び起こすことにつながる。

こういった業務プランナーの効果を深堀りして考えていくと、以下のような可能性が浮かび上がってくる。

①大企業世界と中小企業世界に人的交流が生まれる効果

経済というものはお金の流れである以上、必ずどこかでつながっていて、単独で成立する世界などあり得ない。
ただ、人間の接点が少ないことで、ほとんど分けられているように感じることは往々にしてある。
製造業でいえば、小規模事業者の取引先も一つ元請けに近いだけの中小企業で、いわゆる大手企業の調達担当以外の社員が、直接部品を製造している会社の社員と会うことはほとんどない。
大手企業の社員にとって、小規模事業者の窮状は、新聞記事の数字の中にしか存在しない。
そうこうするうちに、おびただしい数の小規模企業が廃業し続けている。
自分の周りには、そういった小規模企業を支援したいとか、買い取って事業再生させたいと考えている優秀な人も多くいるが、普段彼らが小規模事業者と会う機会がないのだ。
事業承継の問題も、生産性向上が進まない問題も、物事を客観的に捉えて戦略をたてる仕事をする人と、手を動かして実務を担う人が分かれすぎていることが生み出している弊害に思えてならない。これらの人が接点を持つことで生まれてくる機会の効果は計り知れないと思う。
業務改善プランナーを行うことは、ごく自然にその入口に手をかけることになるのだ。

②ゼネラリストを専門職化する効果

もう一つ。これは業務改善プランナーの担い手側のメリットだ。

いわゆる総合職として働く一般会社員は、自分の専門性が何かと問われて困る人も多いだろう。独立したときに、スキルとして稼げる自信がある人はどれだけいるだろうか。

バクッと総合職とくくられている人のスキルは様々で、日本もジョブ型の雇用が拡大していくにつれ、「何ができるのか」が問われる機会は増えてくるだろう。
いわゆるホワイトカラーの仕事はどんどん自動化されていく。残るのは、同じように業務として行いながらも、普遍性を持ち、組織に貢献できる力だろう。
業務改善プランナーの仕事は、多様な人から課題を聞き出す力、ボトルネックを見抜く力、業務を整理して設計し直す力と、一部分を担いながら、組織全体の改善を理解していく奥が深い仕事だ。
こういった業務は、今ゼネラリストの皆がやっている仕事と地続きでありながら、その能力を磨きあげ、一つの専門性として位置付ける能力に昇華できる。
副業を通して、ゼネラリストの専門職化を実現することができるのではないかと思っている。

話が大きくなったが、以上の観点から、業務改善プランナーには、日本の社会に影響を及ぼす可能性がある機会になると思う。

ちょっと抽象的な話が多くなってしまったので、次回は、実際に業務改善プランナーが行っている仕事の実例を通して、どんな仕事なのかを説明していきたいと思う。

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