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自家焙煎に挑戦したらコーヒーよりチャフがうまかっただなんて

コーヒーっていいですよね。リフレッシュのため。ひとりで考え事をするときの相棒。友人とのおしゃべりのお供に。いろんな時間を演出してくれます。コーヒによってつくられる時間が、私は大好きです。

そのコーヒーをつくる時間も、同じように大好きです。コーヒーが口に入るまでを逆から辿ると [ 抽出 ] <- [ 焙煎 ] <- [ 精製 ] <- [ 栽培 ] と並びますが、抽出は比較的お手軽に挑戦しやすい工程です。私はハンドドリップでコーヒーを淹れることが多いのですが、お湯を注ぐときに世界がドリッパーの円に集約していく時間はクセになっています。

ところで、好きなものって何でもいいから手当り次第に知りたくなりますよね。抽出からもっと先のことも知りたくなりますよね。どうやって作られるのか、その始まりに向かって興味の矢印が向きますよね。ゴールデンウィークだし、抽出の一歩前、焙煎もしてみたくなりますよね。やりましょう。

焙煎って??

コーヒーの生豆に熱を加えることで化学変化を起こし、私たちがいつも口にしているコーヒーの風味を引き出す工程が焙煎です。

5~6 年ほど前に一度手網を使って焙煎をしたことがあります。

手網に生豆をいれ、コンロの上で 20 分ぐらいひたすら転がすのですが

・止めることなくひたすら水平方向に網を振り続ける
・網とコンロ(の火)の距離を一定に保つよう調整し続ける
・手を動かし続けながら、豆の色や音、匂いで状況を判断する

ので、結構大変でした。慣れの問題なのかもしれませんが、慣れる前に脱落してしまいました。その理由が「チャフ(薄皮)の舞い踊り」。焙煎することでコーヒー豆を覆うチャフが分離して、かなりの量がバッサバッサと飛び散ってしまいコンロ周りがチャフ化粧です。奥さん激怒。

とネガティブな話から始めてしまいましたが「豆に熱が入っていくのを感覚としても理解できる」のは良い経験でした。焙煎序盤は豆に水分が含まれているので熱がゆっくり入り、水分が抜ける一線を超えると加速度的に進行していく、そうなると後に引き返しての調整が効かない一発勝負。思い出補正が多分に入っていますが、こんな感覚を今でも覚えています。

で、今回は家庭用の全自動電動ロースターを使います!!

クラウドファンディングで入手したっきり、使わずにしまっていた LITHON の電動ロースターをついに開封しました!!

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クリスタルガイザー比これぐらいの大きさ。


ハンドピック

まずは焙煎する前の生豆を準備します。数をこなすまでは失敗するだろうなーと思い、コスパ重視で調達しました。

5 つの産地の生豆が 100g ずつ届きます。

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豆の大きさや保有水分量が熱の伝達いに影響を与えるようで、豆の種類(ざっくり言うと産地)によって焙煎の難易度が変わるようです。ブラジルの豆は焙煎しやすいと聞いていたので、初陣はブラジルで飾ることに。

開封して即焙煎とはいかず、ハンドピックという工程を挟みます。コーヒー豆は農作物なので、豆の品質は均等ではありません。豆のグレードが高いと品質が安定するそうですが、グレードが低いものは欠点豆や小石などの異物混入が多くなってくるようです。おいしいコーヒーを飲むために良い生豆を選別します。

まずはトレイに広げます。生豆の青臭さも広がります。

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ダイソーで買ったトレイと滑り止めマットと生豆。

前回の焙煎ではハンドピック済みの生豆を購入したので、今回が人生初のハンドピックです。気合を入れて一粒ひと粒をチェックしていきます。 初めてなので正しい・効率のよい方法なのかわかりませんが、こんな観点で選別しました。

・まずは外見: 形が整っていない、青っぽい・黒っぽい、しわしわ、虫食いがないかチェック
つまんでみる: 豆が薄くないか(生育不足で痩せていないか)チェック
・味を想像: この豆、そのまま食べても美味しそうか?と想像する

まぁわっかんないので、最後は生物としての勘に頼ります。

生豆を見るの久しぶりなので記念撮影。光り輝くように見えるのがチャフ(別名: シルバースキン)です(たぶん)。

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取り除くのはこんな豆たち。

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一豆にかける時間は 2 秒 ~ 5 秒、 1 時間かけて全 100g の豆を選別し、最終的に 6:2:2 ぐらいに分けました。

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素人目で「文句なしに大丈夫そう」と判断できる豆は多くはなくて、全体の 20 % ぐらいだったと思います。勘所がわからないので怪しいと思った豆は「迷う」に放り込み、後から良い順に「良さそう」コーナーへに移す豆を選別していきました。ロースターが一度に焙煎できる最大量の 60g になったところでハンドピックを打ち止めとし、焙煎に移ります。

子どもが気づいて乱入してきた図。「迷う」 -> 「良さそう」に移す豆の選定を手伝ってもらいました。

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さぁ、焙煎

ロースターの蓋を開けて生豆を投入します。

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蓋をセットして「中煎り」で焙煎スタート。生豆を入れたローストコンテナ部が回転し、かき混ぜながら加熱していきます。

2 分後: チャフが飛び始める
2 分ほど経過したところで、チャフが舞い始めました。ほとんどのチャフは蓋の内側のチャフコンテナに落ちていきますが、蓋の隙間から一部が飛び出てきました。この光景は久しぶりです。が、数枚程度で済んだので雲泥の差です。最高。

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8 分後: 生豆に色がつき始める
うっすら茶色くなってきました。(私の目が正しければ、)ローストコンテナの中央に来た豆が底に沈み、周縁から浮かんでくる形で対流しているようです。豆がどんどん流れているので、スマホがピント合わせに迷っていました。

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10 分後: 深い茶色に、香ばしい匂いも
豆の色が濃くなってきました。ロースト感のある匂いが広がってきます。

13 分後: 1 爆ぜ
「パチっ」と豆が爆(は)ぜる音がしました。若干煙たい感じもします。
焙煎が進むと生豆のなかでの化学変化が進み、その際に水蒸気や炭酸ガスが発生するそうです。内部に圧力がかかって豆が膨張し、耐えきれなくなったところで破裂することを爆ぜと言い、破裂音が聞こえてきます。

15 分後: 2 爆ぜ?
2 爆ぜの音が聞こえたような・・・ 1 爆ぜと違って音が小さいので、ロースターの音にかき消されてよくわかりませんでした。手網だと 1 爆ぜ、 2 爆ぜの音を目安に焙煎時間を調整するので聞き逃がせないのですが、全自動なのでよろしくどうぞです。

16 分後: 冷ましへ
ロースト感のある香りがしなくなりました。送風で温度を下げていくフェーズに移ったようです。手網焙煎では豆を広げてひたすらうちわで扇いでいたので全自動は楽で良いです。

20 分後: 終了
ロースターが停止したので、豆をお皿に移します。
おぉ〜〜〜〜〜〜〜、いい色!!

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どうでしょう?どうなんでしょう??

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焙煎直後はまだうっすらと温かく、コーヒーっぽい香りはしません。 5 分も経つとすっかり温度は下がりました。まだ香りは立ってきません。

ここで焙煎前後での豆の重量を比較してみます。

・焙煎: 58.2 g
・焙煎: 49.0 g   -> 16% 軽くなった

100 g の生豆から抽出用に使える量はだいたい半分になりました。なるほど。

1 時間後
コーヒーっぽい、というかコーヒーの香りそのもの!!
おうちで焙煎したったぜ!という実感が出てきました。嬉しい楽しい!!

「焙煎後、少し時間をおいた方がおいしい」教の教徒なので、抽出して味わうのは翌日のお楽しみにします。

1 日経過
期待は最高潮、ついにコーヒーを淹れます。保管ケースを開けるとうっすら表面に油が浮かんでいるものがチラホラ。あれ、なんだか雑味を感じる香りがするような。。。

中挽きにしてお湯を注ぎます。膨らみますね〜いいですね〜これが見たかったんです。

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いざ実食!!


・・・心の準備はできていたけど、おいしくない。。酸味はまったく感じず、焦げた苦味がザラザラと舌に残ります。。香りもいまいち。。。んーーー、、、失敗ですね。

豆の品質、ハンドピック、焙煎、抽出方法、どこが原因なのかはまだわかりませんが、初陣は敗戦でした。一つ一つの変数を変えながら改善していきます。一発でおいしいコーヒーができるとは思っていませんでしたが、少しだけ期待をしていたので口にした瞬間は落胆もありました。「プロって、だからプロなんだな」と納得。「世界は誰かの仕事でできている」というフレーズが頭をよぎります。プロはすごい。

ところでチャフってどんな味?

前日まで時間を巻き戻して。

豆を冷ましながらロースターの片付けを。チャフコンテナを取り出します。

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捨てるつもりだったのですが、じーーーーっと見てるうちに「どんな味がするんだろ?」と気になってきます。明日までコーヒーは飲めないし、せめてチャフぐらい食べてみるかと。

手に取って観察。
色、おいしそう。
香り、特になし、無臭。
感触、ふわふわ、うっすい、吹けば飛ぶ。

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一枚つまんで食べてみます。

(・・・・・・・・・・・・・・・)

(・・・なんか果物の酸味を感じる・・・若干甘いかな・・・あれ、紅茶っぽい?紅茶だこれ。・・・もしかして、おいしいんじゃないこれ・・・)

チャフ、意外とイケます。豆の種類で味は変わってきそうですが、この日のチャフは噛んでいると紅茶の風味が広がってきました。捨てるのはなんだかもったいない。

そういえば、某喫茶店でお冷とセットで「コーヒーのお茶」をいただいたことを思い出しました。苦味は無くて薄ーーい味だけど、言われてみればどこかコーヒーを感じるような。あれはもしかしたらチャフを抽出してつくったお茶なのかも・・・やるか。

チャフを淹れて飲んでみる

用事があったので一時中断し、焙煎から 10 時間ほど経過したあとでチャフを淹れてみることに。時間が経ったためかより強いフルーツの酸味の香りがするようになり、食べてみると紅茶よりレーズンっぽい味に変化していました。

抽出方法を考えます。ググるとチャフで抽出した先達のブログが数件ヒット。コーヒーの抽出と同様に高温でしっかり蒸らし・抽出されたようで、結果は「苦い」「渋い」「不味い」とまぁまぁ地獄な感じ。。

おいしく飲むことだけを目的として、なるべくサクッといく作戦に決めました。

氷 80 g + チャフの抽出液 20 gアイスチャフ
チャフの量は 0.1g 未満 (採れたチャフ全部入れてもそれだけだった)
・苦味・渋み・エグ味をなるべく抑えるため、抽出温度は低めの 82 ℃
抽出時間もなるべく短く 10 秒以内

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採れたすべてのチャフをセットします。

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お湯が 82 ℃まで下がったところで、チャフへ細く垂らしていきます。ほどなくしてレーズンの強い香りが立ってきて「お、イケるかも」と思った数秒後、「ゔっ !?!?」と渋くてエグそうな匂いが。。ちょうど目的の量の抽出も終えてたのですぐにドリッパーを下ろします。抽出時間はおそらく 7 秒前後。

できたアイスチャフを飲みます。うっすら黄色いチャフ色。気になるお味は・・・

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・・・

・・・・・・・いけるやん!!

そのまま食べるより若干味は濃く、舌の奥まで入ったときに酸味のある果実を感じます。紅茶とレーズンが調和したらおそらくこんな味。単体で主役となる飲み物ではないですが、口直しに少量飲むにははちょうど良さそうと感じました。自家焙煎をした者への特典でしょうか。「コーヒーチェリーって、そのまま食べるとこんな味がするんじゃなかろうか」とブラジルの農園に思いを馳せるなどしました。


楽しかった大人の自由研究

焙煎に係る工程を実際にやって見て触れて、初めて得られる情報が多くとても刺激的な時間でした。本丸のコーヒーよりチャフがおいしかったとは予想外でしたし、思ってもみなかったコーヒーの魅力を発見できた嬉しい自由研究でした。

おうち時間が長くなり、非日常を味わう機会が少なくなって悶々としていましたが、「いつかやろう」としまい込んでいた事をひっぱり出すのにちょうどよいですね。これを機に、もう少し焙煎のことを勉強してみようと思います。今回成功していたら飽きてしまっていたと思うので、失敗してよかったです。

次はどうやってコーヒー時間をつくろうか・・・楽しみです。


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