すべてが混ざり合う感覚
朝から雨が降っていた。
どうりで頭が痛いはずだ。
起きてカーテンを開けた時の薄暗い灰色の空は、
気分をほんの少しだけ憂鬱にさせる。
ベランダの塀の上からコンクリートを伝って一滴の雨だれが落ちてきた。
右に左に少しずつうねりながらゆっくりと落下していく。その後は黒っぽい茶色のシミとなって描かれていく。
重力に従って落ちているのだから当たり前、と言われればそうなのだけれども、
それは、まるで生きているかのように、少し太い線を描いていた。
水滴は生きているのか?ただの物質?
普通に考えれば、水滴が生きているなんて絶対にありえない。
水滴の描く線の色は茶色?黒?
別の人が見たら違う感じ方をするかもしれない。
自分の見ている色が絶対に正しいとは思えない。
絶対って何?この世に絶対なものってあるの?
誰かの正義は誰かの悪、って言葉もよく聞くけど
この世に絶対的な正義とか悪なんて、果たして本当にあるんだろうか?
猫ちゃんが遊ぶ段ボールに乾燥したうんこがあった。「やってくれたな…」
そしてため息。少しのイライラ感。
でも、「うんこが落ちていた」という事実はそれだけのことであって、その事実にイライラの感情を与え、これは悪い事と決めたのは私。
私の感情。
猫ちゃんは困らせようとそこにうんこを落としたわけではなく、きっと気づかずにくっついていた物をそこに落としただけなんだから悪ではない。
私の都合に合わないから、私が「悪い事」と決めただけ。
そんな事を考えながら、その臭い物を片付ける。
この件を「絶対に悪いこと」って思ったけれども
絶対ってなんなんだろう?
絶対なものなんてあるんだろうか?
自分が見ているもの感じているものが、他の人も同じように感じているかなんてわからない。
私にとっての感情なだけ。それは絶対じゃない。
不変的にそこにあるものは絶対と言うかもしれないけど、物質だって絶対にあるの?
この私の体は?絶対的なものなの?
私が物質である事は絶対だと思っていたけれども、この本を読んだらわからなくなってきた。
絶対的に存在するものなんてないんじゃないだろうか?すべては移り変わっていく。
あるものもなくなり、ないものもあったりする。
正義と悪、物質と無、すべての境界がグレーになってきて、混沌としてくる。
すべてが混ざり合ったような、すべてが本物ですべてが虚像のような。
ただ、絶対、疑いようもない確かな事があるとするならば、今この世界に今の自分が生きていると言うこと。
生かされているという事。
きっと、意味があって、「今」の現実を、「今」の身体で味わっているんだろうな。
雨だれからそんな事を考えた朝。
今日もこの現実を楽しもうと思う。
明日が絶対に訪れるとは、限らないのだから。