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あのオレンジ色のタワーには、いつまでたっても敵わない

上京して15年が経とうとしている。

高校生までのわたしは、電車の乗り継ぎすら危うい、何も出来ない子だった。住んでいたのは所謂都会と呼ばれる都市だけど、路線の数なんてたかが知れてるし、そもそも行動範囲は自転車で行ける程度。親も厳しく、花火大会はもちろん、夜に外にいるなんてあり得なかった。

あれから15年
わたしはひと通り何でもできるようになった。最初は半泣きになっていた東京の電車もスイスイ乗れる。夜に外を歩くことも、接待も出張も、ひとりでどこへでもいける。高層ビルが連なるオフィス街も、最初は圧倒されて目が回っていたけれど、そんなことももう無くなった。

良くも悪くも、この東京という世界に慣れたのだ。

でも、どれだけ慣れても、どうしても敵わないものがある。あの、オレンジ色のタワーだ。

20歳の時、初めて東京の夜景を見た。
今でもあの時見た夜景が、どうしても忘れられない。

こんな夜に、こんなに明るい
自分の知らない世界
この世界で、わたしここで生きているんだ

そう思ったら、涙が出た。
あのオレンジ色のタワーが、この世界に生きる人達の嬉しさや、苦しみや、楽しさ、悲しさ、希望も絶望も、全部見てるみたいで。
とてつもなく大きく、明るく、儚げに見えた。 
あの時の気持ちが、どうしても忘れられない。

月日が経って、色んなものに慣れた。
それでもあのオレンジ色を見る度に、心が大きく揺れる。これを書いている今も。


あのオレンジ色のタワーには、いつまでたっても敵わない。でも、敵わない間は、まだこの世界で頑張れるのかもしれない。

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