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いのちのおと

ぽこぽこ。
ぐるぐる。
もぞもぞ。

小さな命が私のお腹の中で動いている。
いや、既におよそ100日間懸命に心臓を動かしていて、それを感じられるほど大きくなかっただけなのだけれど。

今までは、この小さな命の存在を考える余裕もあまりなかった。
自分の体調の悪さだとか、精神的な変化だとかで精一杯。

ぽこぽこ。
ぐるぐる。
もぞもぞ。

不思議な不思議な命の音。ここにいるんだと、教えてくれているみたい。


胎動を待つのは、まるで流れ星を待っているときのよう。
「あ!動いた!」と夫に報告しても、お腹に手を当てたときにはもう静かになっていたり。
辛抱強く待って、たまたま動く瞬間を一緒に味わえたり。

ぽこぽこ。
ぐるぐる。
もぞもぞ。

愛おしい命の音。この鼓動に自然と笑顔になる。


エンディングノートを2種類書かなければ、と思う。
自分の命だけが絶えるときと、この小さな命も一緒に絶えるとき。
周りの大切な人たちがなるべく困らないように。

命を宿すってことは、守るべきものが増えるってこと。
今までは、自分本位に生きられなくなるのが怖かったけれど、怖さとは少し違う感覚なんだな。

ぽこぽこ。
ぐるぐる。
もぞもぞ。

守る責任のある命の音。まだ、うまく言葉に表せない。


ぽこぽこ。
ぐるぐる。
もぞもぞ。

この音が、産声に変わり、いつか言葉が話せるようになったとして。
最初に聞かせてくれたこの小さな「いのちのおと」を、私はきっと忘れない。

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