3図

ジョルちゃん、触らせないよ

プレミアリーグ第13節トッテナムVSチェルシーの上位対決。
ここまで無敗でプレミアリーグを突き進んできたサッリ・チェルシー。
今節はトッテナムの洗礼を受けることとなった。

先発メンバー             
トッテナムはデレ・アリをTOP下に配した4-3-1-2
チェルシーはジョルジーニョをアンカーに配置した4-3-3

ジョルジーニョを中心とした局所的な数的優位を活かしながらリズムよく前進するポゼッションを軸にここまで無敗で突き進むチェルシー。
トッテナムがどのような対策を計画し、迎え撃ったのか?

時系列ではなく、
4局面を中心に考察していきたい。
・組織的攻撃 
・ネガティブトランジッション 
・組織的守備 
・ポジティブトランジッション 


チェルシー攻撃(局所的数的優位 クローズ)
               VS
            トッテナム守備(ジョルジーニョ触れせないよ)

ボールサイドで数的優位を生み出しジョルジーニョを中心として3人目を見つけて前進していきたいチェルシーに対してトッテナムは中盤のdiamond(ダイアー・シソコ・エリクセン・アリ)をボール中心に圧縮して中盤の密度を高めてチェルシーに対して挑んだ。特徴的なのはデル・アリがジョルジーニョをほぼマンツーマンで消しにかかっていたことが挙げられる。常にジョルジーニョを監視し、プレスに出るときもカバーシャドウでパスコースを遮断し続けた。デレ・アリはCBからのパスだけではなく、レイオフのパスまでケアを徹底し続けた。また局面が反転したときにはアンカーのジョルジーニョの裏のスペースを使うことで優位性を保った。
ジョルジーニョをゲームから消すことに成功し、ジョルジーニョの弱点を露呈させていく。チェルシーはゲームのテンポを失い、リズムを奪われた。

中がダメならサイドから。前節同様攻略を試みたが、トッテナムはdiamondをサイドに密集させて、ボールサイドのスペースがコントロールされており、時間とともに強固になっていった。

中がダメなら外。外がだめなら逆サイド。

右で詰まって左に展開し、コバチッチがHSで前を向いてボールを引き出し左サイドに展開していくが効果的な展開を生み出すことができない。M・アロンソが前を向いてボールを持っても、アザール&モラタの動き出しが少なく、DFラインに動き出しで圧力をかけられないことが終始続いた。ゲーム序盤にサイドからのクロス、前半37分にはアザールの個人技でシュートまで持ち込むがそれ以外効果的な攻撃を生み出すことがほとんどできなかった。

後半に入るとチェルシーはトッテナムのdiamondをボールサイドに寄せてからシンプルに逆サイドに展開するようになるが早く変えてからのボールを持っていない選手の動き出しと展開のアイディアが乏しく決定機を作り出すことはできず。0-3になった終盤にサイドからのクロスでジルーがヘディングで1点を返すにとどまった。
トッテナムの「ジョルちゃん、触らせないよ」コンセプトは1試合を通して大成功したと言える。

ジョルジーニョ、アリに相当苛ついてる‼

ジョルジーニョが定位置に固執せずにプレーして、HS落ちをしたり、モラタの近くでプレーを開始していたらどうなっていたのか?
またその変化に対してトッテナムはどのような変化をみせたのかが興味をそそられる。
ジョルジーニョが対策を立てられ始めているサッリがジョルジーニョという個性をどう活かしていくのか?今後が非常に楽しみ。

コバチッチ→バークリーに代わってからはバークリーがトッテナムの二アゾーンを積極的に攻撃してCFWのアザールやジルーを追い越す場面も見られた。ジルーに対してシンプルなクロスからゴールを奪ったことを考えても、前半始めにトッテナムはクロスからピンチを多くを迎えていたので早い段階で考え方に変化を起こしても良かったのではないか。

トッテナム diamond &アリのジョルジーニョ監視


チェルシー ネガトラ(hexagonでのカウンタープレス)
             VS 
         トッテナム(ポジトラ(前線3人のライン間への侵入)

チェルシーはボールロスト後、hexagon(FW3ーMF3のユニット)を圧縮してぶつけてボールの回収を試みている。しかし後方のDFラインのポジショニングの基準がDF同士の距離感にあるので前進して守備をするMFとの間にできたライン間が大きくなってしまう。
トッテナムはこのチェルシーの構造を理解しており、ボール奪取後、前線3人がライン間に素早く侵入してボールを引き出し攻撃に移行する場面が試合を通じて多く見られた。
トッテナムがZ1まで押し込まれているときのチェルシー後方のDFのトッテナムFWへの警戒が薄く、前半からソンに何度もカウンターでピンチを与えてしまっていた。トッテナムの3点目はZ1でのボール奪取からSBの裏のスペースを突いた素晴らしいカウンター。このトランジッションのフェーズでもトッテナムの計画通りに物事が進んでいるように見受けられた。上がったSBの裏をカバーする役割はアンカーのジョルジーニョが担っていたがソンに振り切られてしまい、失点の要因になってしまった。チェルシーは試合を通して被カウンター時に人は揃っていることが多いが役割がはっきりしていないためカウンターからピンチを招くことが多くみられた。


トッテナム 攻撃(前線3人 + SBで相手DFラインを分断させる)
              VS
チェルシー 守備
(hexagonで中を締めて外へ誘導しSBがプレスで奪う)

トッテナムは徹底した二アゾーン攻撃を行っていた。チェルシーは両SBがウィングレーンで高い位置を取っている選手に対して食いつきやすい。特にアロンソはオーリエに食いつきやすい傾向にあった。またDFラインのヘルプをMF&両ウイングが行わない傾向があるため、ダイレクトにDFラインに大きな負担がかかることになる。トッテナムはボール保持時MF3人(ダイアー・シソコ・エリクセン)で中央にチェルシーMFを引きつけて、ウイングレーンで両SBがアザール&ウィリアンの裏で位置的優位を保ち、チェルシーSBを引きつけ、開いた二アゾーンへ中央に構えた3人(ケイン アリ ソン)のうち1人がHSから流れてDFを分断させスペースを生み出す攻撃を徹底した。
実際に1点目のFKも二アゾーンへの侵入から生み出された。

肝は二アゾーンが開いて飛び出したときにシンクロしてCB間へも矢印を出しているところにある。

二アゾーンだけならCBが対応すればいいが、CB間にも入ってくると逆のCBが引きつけられる。プラスDFラインが下がったときのチェルシーMFのシンクロした動きが弱いためにライン間も開いていってしまう。
その生まれたスペースの使い方が非常にうまい。

象徴的なシーン前半9分にソン・フンミンがエリクセンとのワンツーでバックドアを行い、ボレーを放ったシーン。
デイビスにボールが入り、アスピリクエタが前出た瞬間にケインの二アゾーへのランニング。ソンは開くのを待ってましたとばかりにCBの間へのスプリントを行ってチャンスを作り出した。
その時アリは?
ダビド・ルイスとM・アロンスの間を狙って動き出して、DFラインを更に分断させようとしていた。
何重にもなった分断作業。
チームのビジョンが共有されている象徴的なシーンだった。

また二点目のケインのシュートも3人の動き出しでDFラインに迷いを生みスペースを作り出した。ケインのシュートのタイミングも絶妙でケインーダビド・ルイスーケパが1直線になったときにシュートを放ったのでケパにとってはブラインドになっていたと思われる。このレベルのGKであればミスとして考えられるのではないか。しかし、絶妙なタイミング‼

またこの場面チェルシーは4-3のラインを組んで守備に移行し、ジョルジーニョがボールにアプローチしたときに脇を固めるカンテとコバチッチが絞って中央のスペースを埋めず、また近くにいたウィリアンもサポートせず、CBも強く出ることができない。結果的にジョルジーニョが空けたスペースを使われてゴールを生み出されてしまった。

ギャップ攻撃の動画の時もそうだがカンテ&コバチッチがジョルジーニョと距離を空けてしまうのでトッテナムにスペースを明け渡してしまう。
ジョルジーニョの動きに対してシンクロして動けていない傾向にある。

今節のチェルシーの組織的守備のフェーズでは「コンパクト」さがかけていたように思われる。
・MF-DF間の縦の距離
・周辺の選手の状況が変わったときの横の距離の変化(カバーリング)

この2点をトッテナムは利用し、さらに計画的に壊しに掛かっていたのではないか。

またトッテナムの攻撃は相手のDFラインの裏までほぼ確実に到達させていたのでネガティブトランジッション時にチェルシーを迎え撃てる状態であった。4つのフェーズをリンクさせタ上で前線3人 + SBで相手DFラインを分断させることを計画していたのではないか。


トッテナム ネガトラ(diamondの終結)           
                  
VS 
               チェルシー ポジトラ

試合を通してトッテナムはチェルシーのDFラインの裏まで確実に攻めて終わることが多く、チェルシーの表でボールロストすることが少なかった。Z3でボールを失った時にはボール周辺の選手がカウンタープレスを行いボールを回収を狙っていたがZ2でのボールロスト時にはDFライン&diamondはボールのラインより撤退して密度を高めて迎え撃った。後半になってチェルシーが逆サイドにシンプルに展開するするようになってからはソン・フンミンがサイドのスペースをケアするようになった。
逆にチェルシーはZ1でのポジティブトランジッションが多く、トッテナムに迎え撃たれた状態で組織的攻撃の局面を迎えなければならないことが多かった。アザールに早い段階でボールが渡れば時折カウンターを行える場面もみられた。

まとめ

トッテナムは4局面が整理されており、チェルシーの弱点となる構造を的確に突いていたのではないか。
・ジョルジーニョに触らせない 
・サイドから前進してきたときスペースの圧縮
・チェルシーカウンタープレス時の構造の理解
・チェルシー組織的守備の弱点
        
・トッテナムが優位性を持って組織的守備へ移行するために行うべき攻撃

完全に攻略されたというか分解されたとでもいうべきか。
2試合続けてジョルジーニョを封じられた。
ここから果たしてどのような変化をもたらしてくるのか。
それとも黄金の1パターンをさらに磨いてくるのか。

アザールのCFWも興味深い。

考えるだけでワクワクする‼

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