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術後の地獄は3日まで〜全身麻酔からの開腹手術体験レポート〜

これは、2015年9月1日 にFacebookのノートで公開した全身麻酔レポートです。もう5年も経つのに、いまだに「いいね」をくださる方が全国にいらっしゃって、きっと、これから全身麻酔での手術を受けるにあたって不安で押しつぶされそうな人がたくさんいるんだろうなと思い、このたびnoteでも公開することにしました。何かしらの救いになれればと思います。

以下当時のレポート全文です。少々グロい写真も載っていますのでお食事時は避けてご一読くださいませ。

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このレポートは全身麻酔で開腹手術を受ける前日から術後3日目までの治療の内容と体の変化をレポートしたものです。あくまで個人的な感想と主観に基づいた内容となっております。あしからず。

手術前日(月曜日)
婦人科の手術日は火・木と曜日が決まっている。
私は火曜日の朝一が予定日。従いまして今日は前日の準備で慌ただしい一日だった。
まずは恐怖の剃毛。おへその下から恥骨あたりまで無遠慮にジョリジョリされる。しかもきれいにツルっと剃ってくれるならまだしも、結構雑なので所々残っていてかなり不細工。そして剃り残しがチクチクして不快感MAX。

食事は残渣食という制限食。食物繊維豊富なおかずとお粥で腸の掃除をするのだそうだ。
あとは下剤で徹底的に腸の中を空っぽに。すっぱいポカリのようなどろどろした液体をたっぷり200ml、一気に飲み干せと言われましてもこれだけでもけっこうな苦行。しかし、食事は食べるのにそのまま下剤で出すって、矛盾してない?

午前の締めくくりは麻酔科の診察。術前検査に異常が無かったので全身麻酔で行いますとのこと。
全身麻酔といえば、羽交い締めにされて脊髄に太い麻酔針をぶち込まれる。あばれるぐらい痛いよー。とさんざん脅されていたので、おそるおそる麻酔の方法を尋ねてみたら、
脊髄に麻酔?そのようなことは一切いたしません。点滴による麻酔です。さらっと否定。あーよかった。これだけでだいぶ手術へのハードルが下がったわ。

そうこうしている間に下剤の効果があらわれる。ナイアガラの滝の様に止めどもなく便意に襲われて、この日はほぼ5分おきにトイレに駆け込まないといけなかった。ほとんど眠れず。
しかし最近の手術は様変わりしているらしい。数年前の母親の時は手術前日は水分補給をがっつりさせられていた。もっと昔は一晩中点滴しないといけなかったはず。
今は夜ごはん以降は絶食、12時以降は水以外は禁止。という以外、とくに制約がない。

手術当日(火曜日)
うとうとしてはトイレ。を繰り返して、5時には完全に起床。
大事なミッションであるメルマガの配信を終えて肩の荷がおりる。これで心置きなく休めるぞ。
手術は8時半から。今日はもちろん朝から絶食。不思議とお腹は減ってこない。

ところで「手術」といえば私のドラマ知識では、

ストレッチャーで手術室まで運ばれる
家族、そばで手を握りながら、大丈夫!ぜったい成功するから!
私、力なくほほえむ
手術室のドアが開き、握った家族の手が放れてしまう
私、力なく親指を立てて手術室に消える
手術室の赤いランプが灯る
家族、固唾を飲み込みながら手術室前の椅子で祈りを捧げる。


だとばっかり思っていたのだけれど、現実はそんなドラマティックなものではなかった。


8時半に病室に看護師が呼びに来る。
はい、石本さん、時間ですよー
あれ?ストレッチャーとかはないんすか?
ありませんねー。歩いておねがいしまーす。
家族を引き連れてぞろぞろとエレベータで手術室のフロアへ移動。
フロア全体が手術室になっていて、エレベーターを降りるともう目の前が大きな自動ドアになっている。自動ドアがガーっと開くと、大きなカーテンが引いてあり、中身は見えなくなっている。
同時刻に手術を予定している患者がぞろぞろとドアを通って中へ入っていく。
感動的な別れなどできる空気も余裕もなく、いってきまーすと手を振って他の患者さんと手術室の中へ。
カーテンの向こうがやたら白くて明るかったので、未知との遭遇で宇宙船に吸い込まれるような感覚。
家族たちは病室に戻り、そこでテレビをみたり、コーヒー買ってきたりリラックスしてお過ごしいただく。

なんだか世知辛い、さらっとした幕開けであった。

宇宙船にすいこまれた私はというと、そこは待合ルームのようになっていて、患者がそれぞれの担当医師とご対面。簡単な自己紹介を受ける。で、そこから歩いて自分の手術室に向かうのである。

長く伸びる廊下にいくつもの手術室がある。さすがマンモス病院。へー。すごいっすねー。こんなにたくさん手術室あるんだー。そうなんですよー。ちょっと意外でしょー。などと歓談しながら手術室に到着。
扉が開くと意外とこじんまりしたつくり。中央のストレッチャーに横になるとオペスタッフがぞろぞろ集まってくる。
手際よくベッドに固定されて、酸素マスクが装着される。
麻酔は手の甲から点滴で送られるのだが、朝から痛み止めパッチを貼ってくれているので麻酔針もまったくの無痛。
最近のペインコントロールは本当に良くできているなあと感心している間に、
はい、2回大きな深呼吸してくださいね−。だんだん眠くなりますよー。と言われる。

おお、きたきた。ここからが快感なのだ。
走馬燈で過去のシーンがよみがえったり、幻覚見たり、お花畑でステラとルナと再会か?!
などとワクワクモードに突入したのもつかの間、
2回呼吸が終わったところでプッツリ。全くの助走無しで意識がなくなった。

目が醒めるともう病室。両脇にナナとソウタが見守ってくれている。
麻酔が切れた直後はモルヒネ並のきつい痛み止めの副作用で幻覚を見る・・・という前情報があったのだが、それもまたガセか。
意識はすこぶるはっきりしている。
しっかりすっきりと目が醒めてしまっている。
今の医療はとにかくすごい。麻酔のコントロールとペインコントロール。神レベル。

手術は結局予定3,4時間というところ、倍近くかかってしまったそうだ。
1月に罹った腹膜炎のおかげで、病巣と腸が癒着しまくっていたため、ペリペリはがすのが大変だったそうである。
もちろん私にその自覚はないのだけれど。


卵巣と筋腫とばあばのゲンコツ卵巣と筋腫とばあばのゲンコツ癒着部分をはがしたせいか出血も多く800ml。術前に輸血用の自己血を採血していたのでそれを使う。400ml。
そんなこんなで、けっこう大変な手術だったらしく、摘出した卵巣と筋腫は全部で10個。すごい数だ。

卵巣と筋腫とばあばのげんこつ

卵巣だけで1キロあったらしい。筋腫もかなりでかい。母親のげんこつと並べての記念写真をみても、げんこつが一番小さい。
こんなでかいのがお腹に入っていたのか−。まるで胎児。そりゃあ臨月並に膨れるよね。納得。


とにかくこれだけとればスッキリするはず。今はまだお腹が腫れているけれど、一ヶ月もすればぺちゃんこ下腹に戻ってくれているはずである。
来年はまたへそだしルックが着れるぞ!
・・・と喜べるのはまだまだ先で、この後、地獄の苦しみが待っているのでございます。

翌朝まで絶食はもちろん、水も飲んではいけない。体をおこしてはいけない。これが何より苦しかった。
手術の後は痛い痛いというけれど、あれって、傷が痛い訳ではないんだということが判明。

何が痛いって、腰と背中、肩がバキバキに痛いのだ。


手術の傷跡は本当にすばらしくペインコントロールされている。たしかにきつい鎮痛剤なので副作用で2回吐いてしまったのは苦しかったけれど、それを除けば手術の傷の痛みなんて、ほんと、なんてこたあないのだ。


私は術前に、持病の腰痛やひどい肩こりに何のケアもせずに入院してしまった。これがだめだった。

身動きがとれない間、といっても、たかが術後の18時間ほどだけど、それでももう、いっそのこと殺してくれと思うくらいに痛い。もちろん眠れない。

家族が居てくれている間は背中に手をつっこんでさすってくれてたからマシだったが、夜中がきつかった。飛び起きて背中をゴンゴン叩きたい衝動に何度も駆られ、そのたびに看護師さんに押さえつけられる。

こんな時は、時間が経つのが恐ろしく遅い。1時間経ったかとおもったら10分しか経ってない。

そろそろ朝だろうと思ったらまだ夜の10時。気が狂いそうだった。

導尿チューブも最悪である。つねに尿意がある感じ。極めて不快。うーんときばったらシャーッと放尿。あの快感が懐かしい。
不快と言えば心拍数を計るために指先にはめるキャップみたいなの。これまた痛い。
長い時間同じ指にはめていると指がどんどんふやけていくのが分かる。けっこうな圧がかかるので苦しくなってくる。


加えてエコノミー症候群予防とやらの圧力チューブが両足に装着されている。これが一晩中プシュープシューと足に圧力をかけてくる。音もうるさいし、チューブもじゃまだし、とにかくうっとおしい。

手術前と手術中は極楽だったが、術後は本当に地獄。もういやだ。
全身麻酔の手術はこりごりだと思った。

1時間ほど寝て、背中が痛くて目が醒めて、うがいして、吐いて。

・・・を繰り返しながら根拠もなく朝がくれば解放される、朝がくれば。と念じながら夜が明けるのをひたすら待つ。

病室に朝日が射し込んできたときは、おお!神よ!助かった!と思った。

朝が来たからといって何時に体が自由になるかなんて分からないんだけれど。

とにかくあと少しガンバロウという元気が出てきた。

術後1日目(水曜日)
7時半に家族が来てくれる。出勤前に早起きして(しかも起こされずに自分で起きたらしい)立ち寄ってくれるなんて、感動的。京大病院にはドトールがあるので、そこで買ってきた朝食を病室で食べている。かぶりつく姿を見るとこちらも少し元気がでる。全身チューブでつながれているので病室から出勤を見送る。

8時前に粉末ポカリみたいなのが出されるが、まだ飲まないでと言われる。
言われなくても飲みませんよ、そんなもん。と思いながら、いつになったら体が動かせるのか、イライラがつもる。


元気元気をアピールして、8時過ぎ、やっと体を起こす許可が出て、足のポンプが外される、心拍数のキャップも外される。水飲みオッケーがでる。背中を思いっきりガンガン叩く。傷に響くけど気にしない。傷より背中の方がよっぽど痛いんだ。
ひゃー!爽快爽快。これだけでだいぶ気持ちが軽くなったぞ。

トイレまで歩けたら導尿チューブ抜きますねと言われたので、かなり無理してすたこらさっさと歩くパフォーマンス。
おーすごいですね。余裕ですねと言われ、脱力。どっと疲れた。だけど導尿チューブだけはなんとしても抜いてほしかったので、がんばった甲斐あったよ。
これで点滴以外のチューブは撤去。はーすっきり。
体も起こせるようになったし、ここからはガンガン歩いてくださいとのこと。
おう、歩いてやるぜと思いっきり強がってみせる。

12時 昼はヤクルト1本
水飲みオッケーといわれたけど、いざとなると喉に違和感もあってグビグビ飲めない。気管挿管されていたから喉が腫れているのかもしれない。
なんとか1本飲み干したけれど久しぶりに胃にまとまった液体が入ったおかげで、痛い。そして気持ちが悪い。

水分を取るとすぐにトイレに行きたくなる。
導尿チューブを外したあとはそういうものらしいが、とにかく尿が自力で絞り出せない。いわゆる「きばる」ことができないのだ。
自分ではふつうにおしっこをしているつもりでいるのだけれど、筋肉が動いていないのか、はたまた膀胱の神経でエラーが出ているのか。
なにしろ便座に座ってから尿が自然に溢れ出てくるまでひたすら待たないといけない。最初のトイレは15分以上かかってしまった。
トイレは空調が効いていないので蒸し暑い。おしっこ待ちの間に気持ちが悪くなってくる。

そういえば子供の頃、おしっこがよく出るようにと親が耳元で「しーこいこいこいこい」とささやいていたのを思い出した。ナナやソウタの時は私が耳元でささやいていた。
ダメもとで「しーこいこいこいこい」とつぶやいてみると、コップに水がどんどん溜まっていくようなイメージが沸いてきて比較的スムースに尿が出る。ような気がする。導尿チューブのご予定の方は、是非一度お試しいただきたい。

18時 夕ご飯。全がゆにハヤシライス、カリフラワーのおひたし。うそでしょ?
ふつう、重湯からでしょ。しかもハヤシライスって、もう匂いからしてアウトでしょ。
ということで、がんばったけれど一口運んでギブ。食えるわけないじゃん、腹切り裂いた後にハヤシライスって!

部屋中ハヤシライスの匂いが充満してしまって、それだけでもう吐きそうだ。

微熱が続いているので体がだる重い。
しつこいようだが、ペインコントロールは本当にすばらしく出来ていると思う。傷の痛さは、横を向いたときや立ち上がるときぐらいで、基本痛みを感じるのは腰痛と背中痛だ。

そして2時間くらい眠って、起きたら尿意を感じてトイレに行って、しーこいこいこいとつぶやく。の繰り返しで術後1日目は終わった。

術後2日目(木曜日)
日にち薬とはよく言ったもんで、ほんとうに一日一日痛みが和らいでくる。昨日でキツイ痛み止めはなくなり、ロキソプロフェンに変更。
6時間おきに飲めるのだが、1回飲めば10時間くらいはいける。京大スゴイ。現代医学スゴイ。
ただ、お腹に炎症があるのか、下腹が張っているのと、微熱が続いている。これはしんどい。体がだる重い感じ。

熱が出るのはなんとかなりませんかと看護師さんに尋ねると、

あー、それはもう手術後はしょうがないですね。日にち薬です。ステロイドとか飲んでもらう訳にもいきませんしね。アイスノンで頭冷やします?

と言われて、やたらお薬漬けにしない方針に好感度アップ。

部屋の冷凍庫にアイスノンが2つ、入れてあったので枕代わりに使うことにする。気休めかもしれないがヒンヤリして気持ちいい。

定時に血圧と体温を測りにくる看護師さんが入れ替わり立ち替わり、ガスは出たか、ガスは出たかと聞いてくる。

ぶっちゃけガスと言えるガスは出ていない。
金魚の口からでる泡みたいなのがプクプク。のレベル。
バフっと思いっきりでないとダメなんだろうなあ。
案の定、今日から腸を動かす漢方を出しますとのこと。やっぱり腸の動きが芳しくないようだ。

とにかく気持ちのいいガスとウンコを早くださないと。らしい。

12時 昼ごはん。これまたどぎつい。トマトベースの海鮮パスタにお粥。マジの組み合わせですか?
パスタにお粥てどうなんでしょう。リアルに疑っちゃう。献立のセンス。

だけどガスを出すために=腸を動かすためにがんばって食べる。ものすごく胸焼けする。トマトベースのパスタ、しかも激マズとなればこれはもう拷問だ。なんとかほぼ完食するも、気持ちが悪くなってしまう。

そして18時、晩ごはん。この時からおかゆとはグッバイ、通常食へ。
すき焼き風の肉と焼き豆腐、インゲンのおひたし、ごはん。
全く食欲無し。0。むしろ気持ち悪い。なんとか豆腐を半口運んだが、これまたすき焼き風の甘い香りが吐き気を誘う。腸の為に。とは思うのだけれど、無理。断念。今日は晩ごはん抜き。

腸のお薬の甲斐あってか、19時頃にブハっとおならがでる。なんか詰まっていた穴に風が通ったみたいで爽快だった。でも、一度出だしたら止まらない。ブハブハでる。うれしい。けどはずかしい。一人だからいいんだけど。個室でよかったよ。

術後3日目(金曜日)
相変わらず2時間くらい寝てトイレに起きてを繰り返しながら、それでも熟睡感は得られた。5時ぐらいに完全起床。
この時間帯が一番体の調子がいい。熱が下がっているからかな。体が軽くてパソコン操作も苦にならない。まとめてががーっとメールの返事を書いてPCを閉じる。
テレビはあんまり見ない。画面をじっと見るのはやっぱりまだシンドイ。
もっぱらオーディオブックを聞きながらうとうと。の毎日。
7時過ぎにお腹がゴロゴロゴロっと鳴る。この感覚は!?とトイレに駆け込む。めでたく、お通じ開通。これでまた一歩前進。

それにしても今回初めて全身麻酔をしたけれど、全身麻酔をする=体を再起動する。なわけで、一度全ての機能が停止するので、完全に再起動するまでに時間がかかる。

中には再起動せず、目が醒めないケースもあるというが、そのリスクはよく分かる。

お通じが出たといっても腸の機能も肛門の機能もまだ完全に再起動していないので、これまた「きばる」ことができず、穴から物理的ににょろーんとブツが押し出されるのを待つほか無いのはなんだか情けないし、不安になる。

食事をする時が最も、ああ、アタシって再起動してんなあと感じる。

完全停止していた消化管が以前と同じように動くようになるって、すごいことなのだ。

まず水を初めて口にして、食道が動く。痛い。胃に入って胃が反応する。痛い。
十二指腸から腸に向かう間、胃に近いところから順番に腸が動いていくのが如実に分かる。これまた痛い。
そしてそれが便となり尿となり出て行くとき、肛門や膀胱が動く。最後まで痛い。

途中でエラーがでると下痢になったり吐いちゃったりするから、jQueryの実行に似ているな。

いや、そんなツマランことを言ってる場合ではないんだけれど。

食べるという行為そのものも相当体力が必要だ。
食べ物を口に運ぶ筋肉、噛みきる力、咀嚼する力、飲み込む力。たかが病院のしょぼい食事でも、食べ終わる頃には汗がびっちょり。


そしてカロリー(熱量)というだけあって、食べた直後から熱を発するんだということも実感。
食べた後に体温を測ると軽く1度は上昇している。そして食べた直後から消化器に激痛が走る。体がだるい。お腹が痛い。


普段、ほとんど無意識に「食べる」という行為と「排尿便」の行為を繰り返してきたけれど、どんだけ体がフルパワーで働いていたのかということが身に染みて分かる。


犬や猫が(ほんとは人も)食べなくなったときは死ぬ時だ。というけれど、このたび我が身で実感した。
食べる行為が完結できないくらい体が機能しないということは生きることができないということなのだ。

痛みも苦しみも感じず美味しくゴハンが食べれて、トイレでプンときばったらおしっこやウンチがコロンシャンと出る。ということは、これすなわち、自分が最低限健康であることの証なのだと思う。

ふと今になって、ものすごく軽い感覚でステラやルナに全身麻酔の手術を受けさせていたことを激しく後悔する。
人間でこのしんどさなのだから、あんな体の小さい犬や猫が全身麻酔をするって、どんだけのリスクを抱えていたのか。想像するだにおそろしい。


全身麻酔をしたせいで、寿命が縮まったんではないかとも思う。そのくらい体を再起動させるって怖いことなのだと思う。
歯石を取るくらいで気軽に全身麻酔をしちゃう飼い主さん達は是非、その前に自分も全身麻酔を体験してみるといい。
麻酔後、どれだけ体がツライか、再起動ってどんだけ大変なことか、そして再起動を助けるためにどんなケアをしてあげたらいいか。ってのも、身をもって分かると思うから。

とまあ、思いの外、犬猫のセミナーのネタになりそうな体験が出来てしまった。転んでもただで起きないやっぱり私はわらしべ長者。

そして今日からシャワーが解禁。
はじめてまじまじと自分の傷跡をみることになる。


おそるおそる腹帯を外すと、おへそから恥骨まで一直線に切れ込みが入っている。

ん?一直線?すーっと一直線。

まるでカッターナイフで筋をいれたような、きれいな1本線。

ブラックジャックみたいな、あんな縫い目じゃない。たしかに妹が筋腫の手術をしたときは、傷口がブラックジャックになってたはず。

先生に聞いてみると、産婦人科では最近、溶ける糸で縫い目が見えないように縫うのが主流なんだとか。

ただし、すごく時間がかかるのだとか。ホチキスだったら、バチバチバチで一瞬だけど、この手法だと15センチくらい縫うのに3,40分かかるんだって。

なんとすばらしい!神対応に感動。そして感謝。

しかしながら、ルナの手術の時も思ったけれど、
人間界でも術後の傷ってそのままなのね。小さいテープでピンピンピンって留められているだけで、ガーゼとか包帯とか一切無い。
赤チンとかヨーチンで真っ赤になってるわけでもない。腹帯がなければ、リアルに傷に触れることができる。


でもこれって、たぶん、自然治癒力と先進医療が歩み寄ったってことなんだよね。あれこれ処置をしない方がいいってこと。
よろこばしいと思います。グロいけど。


ということで、シャワーのおかげでますます体が軽くなった。ここからは良くなる一方。気持ちも体も晴れ晴れとしている。

今回の教訓。
「術後の地獄は3日まで」
本当にしんどいのは術後3日目までだった。
そして苦しいのは傷の痛みではまったくないということ。現代医療、マジ神レベル。


苦しいのは自分の体の再起動に伴う苦痛。その一言につきる。


でも、3日をすぎると、うそのように体が軽くなる。相変わらず食べる行為はしんどいけれど、日に日に歩ける距離も長くなるし、起きている時間も長くなる。
背中もくの字に曲がっていたのがどんどん伸びてくる。いまやスーパーモデル並にすっと伸びた背中でキャットウォークも可能レベル。

あ、あと、手術前には腰痛や肩こりを治しておくべき。これも追加。ていうか、これが一番大事かもしれない。

最初の地獄を軽減できるかどうかは、術前の体のコンディションに左右されると断言できる。

そんなこんなで、長年溜め込んでいた嚢腫と筋腫も取れて結果オーライ。

その上、貴重な体験もさせてもらって、今後の意識改革にもおおいに役立ちました。ほんとうにどうもありがとう。

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