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舞台「約束は昔日」千秋楽

先週の木曜日から始まった劇団さるしばいの舞台「約束は昔日」が千秋楽を迎えた。
全9公演。本日は増席しての超満員。

ノスタルジー溢れるセットとも今日でお別れだと思うと名残惜しい。
最終日なので皆さんの表情の機微まで余すところなく見たいが、大笑いして泣くので余りにも前だと気が引ける。
結局、初日と同じような位置の座席で観た。前過ぎず、私の視力で表情が分かるギリギリの距離。

最終日ということで演出の太田勝さんの前説も力が入っていた。時に笑いを織り交ぜて観劇の上での諸注意も伝える。
観客も千秋楽の成功を祈っているので拍手で応えた。

劇団さるしばいのオリジナル曲「M0」と共に舞台は開演。(“M0”とは舞台用語で開演直前に流れる音楽をそう呼ぶらしい。)

4回目の観劇なので物語の流れや展開は知っている。台詞も次に何が来るかなんとなく分かる。
それでも見る度に笑い、泣き、感動してしまう。
 
いつもはその時話している人の顔に視線が行くので、今日は台詞を聞いている登場人物の表情や話している人物の手元や足元も見てみた。

そこで初めて(もしくは改めて)気がついたこともある。

ネタバレになるので詳しくは言えないが
「この人の境遇でこの言葉を聞かされたら遣る瀬無いな」とか
「服を握りしめるくらい悔しかったんだな」とか。

言語外の表現を見て、人物達の感情がより深く染みこんできた。
(物語も佳境に入ると熱中して喋ってる人以外にはあまり目を向けられなかったが)

初めて見た時、展開と結末を知った上で見た時、視点を変えて見た時で受け取り方が異なるので同じ演劇を複数回見ても楽しめる。

加えて、舞台側も回を追うごとに変化して行くので見る度に驚かされる。

初回ではあったのに無くなったものもあれば、前回見た時までには無かったのに新たに付け加えられたものもある。
見る度に強度と言うか粘度と言うか密着度を増しているものや、人物の個性が少し変化したものもあった。

特にお笑いパートはその傾向が顕著に表れていて、千秋楽は全員がいつもより全力で笑わせに来てるような感じがした。(見られなかった回でもそうだったのかもしれないけど、前回見た時よりも全体的に笑いが強かった。)

いつも笑う場面ではいつも以上に笑ってしまう。危うく拍手笑いをするところだった。ここはお笑いライブの会場では無いのに。

今までギャグパートをやって来なかった人物までおもしろいことをやるものだから不意をつかれて爆笑。同一人物がそのすぐ後に私の涙腺を最も刺激する演技をするのだから女優さんってすごい。


この舞台は笑いと涙に溢れていた。
物語は悲劇で始まるのに、すぐその後にはコメディのような場面に切り替わる。

「悲劇と喜劇は紙一重」なんて言葉があるが、紙一重とも違う。悲劇的な出来事が笑いに変わるのとはちょっと違う。
日常に(人生でも良い)悲しい事が起きてもずっと悲しいことだけが続いていくわけではない。
その中に楽しいことも嬉しいこともあって、泣いた後に笑い、笑った後に泣く。それの繰り返し。泣き一色でも笑い一色でも無い。
そういう印象を受けた。


鳴り止まない拍手の中カーテンコール。
相変わらずアットホームで和気藹々としている。このチーム全体が本当に家族のような雰囲気で、だからこそ「絆」をテーマの一つにしているこの舞台に説得力があるのだと思う。

13歳の大渕心実さん(ここちゃん)と30歳の林さん(お笑いコンビすいっちひったー)がずっと何かを楽しそうに話している様子が印象的だった。

挨拶やグッズ等のインフォメーションが一通り終わると舞台袖に戻り、拍手の中再登場。

今回が初舞台の高倉さん(漫才コンビ三拍子)はカーテンコールを2回やることを知らされていなかったらしくキョトンとしていたらしい。

出演者全員で呼ぶと舞台袖から演出家の太田勝さんが登場。前説でも腰が低かったが、ここでも低姿勢だった。4年ぶりの本公演が成功に終わったことを喜んでいた。

最後は今回が初舞台のここちゃん、高倉さん、暢崇さんの3人で終わりの挨拶。1フレーズを3人で分割して言おうと試みるも、真ん中の高倉さんがここちゃんの分も言ってしまう一幕も。
ここちゃんが自分の顔を指差して「私の番!」みたいに訴えかけているのがとても可愛かった。
周りにちゃんとしろよみたいに言われて「言ったら終わっちゃうんだよ!」と言い返していた高倉さんも可愛い。

確かにとても名残惜しい。
全ての公演は行けなかったが、先週からの約10日間は舞台を見ない日も「約束は昔日」のことを考えて思い出し笑いや思い出し泣きをしていた。

舞台を見に行くことを思えば仕事にも身が入った。朝の満員電車も「これを乗り越えれば今日は萬劇場…!」と思えた。

それが今日でラストなのだから名残惜しくならないわけがない。登場人物の一人一人に会えなくなってしまうことが寂しい。

そんな名残惜しさを感じつつも、最後の最後の挨拶が終わってエンディングが流れ順番に帰って行く様子を見た時は「見に来て良かった」と言う気持ちでいっぱいだった。

素敵な舞台をありがとうございました。

アーカイブ配信は10/27(木)までチケットの購入と視聴が可能。

約束は昔日テーマソング「はぐるま」





やさしさの中
繰り返される笑いと涙
そばで見守り続けたあの子の想い
苦境に立たされても周りを励まし続ける強い人
分かろうとしないと見えない愛
選択は右か左か
期限まで時間が無いよ
自分で考える無駄の意味と生きること
つまりこのタイトルは「約束は昔日」

(劇中にあいうえお作文をやる流れがあったので“やくそくはせきじつ”で作ってみた。深夜の眠れないテンションで。)

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