おしえる
おしえるの語源は愛惜しむだってさ。
洋服のお直し職人をていた頃、
全くの初心者だった自分に
一から教えてくれた大先輩がいた。
技術で言ったら雲の上の存在。
綺麗に、早く、心を込めて。
まさに職人の鏡だった。
細かく厳しく教えてくれるのも、
私の性にはとても合っていた。
人によっては落ち込んでしまう子も居たが、
私は誰よりもその先輩を憧れていたので
何でも教えを乞いたかった。
席が近いときは視界の端で、
いつも先輩の手元のスピードを意識していたし、
『こうやるのよ』と
手本を見せてもらうときは
丸ごと真似できるように
関節の角度までマジマジと見た。
その角度を真似したその瞬間は、
慣れずに諦めかけるが、
慣れた時に色々含めてこの角度がベストなんだと気付く瞬間は快感だった。
ぺーぺーだった私にもそのうち後輩ができて、教える立場になった時、『技術を伝える難しさ』を痛感した。
伝えられないモヤモヤがあり、
何度も間違えられる時はイライラしてしまう。
何で出来ないんだろう、
どう伝えたら出来るようになるだろう。
そう悩んでいた時に、
その先輩が教えてくれた言葉が
今現在、職人を卒業して
全く違う業種で店長になった自分の支えになっている。
『出来ない頃の自分って思い出せないもんだよね。だから教えるって難しいんだよね。』
さりげない一言だったんだけど、
私は目から鱗だった。
何でも出来ちゃうのに、
これに気が付ける先輩やっぱすげーなと思った。
それから出来なかった自分を
いかに思い出すかを意識し始めた。
それが後輩にとって
どういう影響を及ぼしているか分からないが、少なくとも自分の身の振り方は変わった。
モヤモヤもイライラも随分なくなった。
頑張って覚えようと意識高い子も、
働くスタンスがふわふわな意識低い子も、
みんな可愛く思えるようになった。
意識低かったあの子の成長は
何よりも感動させてくれるのだ。
だから、今日もありがとうって毎日胸を張って伝えられるようになった。
そしてだからこそ、
教えるとは愛惜しむ=愛することだと
知ったとき、とても腑に落ちた。
あの子は自分でもないし、
過去の自分とも違うが、
私だっていつの日かはほやほやの新人だったのだ。
教えると同時に先輩も成長させられるんだなとつくづく思う。よく聞く言葉だけど、本当そうだよな。
明日もがんばらなな!!
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