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とりにく。

今日、帰国してから初めてファミチキを食べた。

普段、コンビニは行かないようにしているけれど、今日の私は疲れ切っていて、ご飯を作る余力がなかったのだ。
どれくらい疲れているかというと、帰ってきて椅子に座ろうとしたら座り損ねて、漫画のようにすってんと転倒したくらいだ。痛い。。

タイカレーの缶詰だけ買おう。そう思って寄ったコンビニのレジ先で誘惑に見事に負けた。
レジ先におでんやら肉まんやら揚げ物やらを置く、あのコンビニの戦法。もう何年も見ているのに、うまいっ!と膝を叩きたくなる。

我慢できずに食べながら帰ることにした。
私に熱々を食べさせるためかのように雨が止んでいたから、傘もささなくてよかった。

いただきます。

サクッとした衣、あふれ出る脂。
口いっぱいに広がる鶏の旨味。
背徳感と幸福感が同時に押し寄せる。

日本すごいな。金さえ出せばこんな美味しいものを、困ることなく買えてしまうのだから。

吸い込むようにあっという間に食べ終わった。
ごちそうさまでした。

ふと、アフリカで鶏肉を買うのに一苦労したこと、やっとゲットした日に誰にも見つからないようにダッシュで家に帰ったことを思い出した。

というわけでアフリカの思い出記録の2回目、テーマは鶏肉です。


人生で鶏肉が買えない日常が来るとは思ってもみなかった。協力隊の生活には色々覚悟を決めて来たけれど、これは完全に予想外だった。

ニワトリはその辺を何匹も歩いている。盗まれないのかとか、誰の家のものなのか分からなくならないのだろうかとか、謎はたくさんあった。

ニワトリは卵から収入を得るための存在。産まなくなったらお祝い事やお葬式の日に捌かれるのを待つそうだ。
だからこの子達は、食用といえば食用だけど、日常的に食べられるわけではないのだ。

村の人たちのタンパク源は魚、豆、卵。
市場では魚が半生の干物のようになっていて、ハエがたかっている状態で売られている。それを自分で買って料理するのはハードルが高かった。

隣の家でご飯を食べさせてもらったときに、ちょっと魚を食べる。卵は高いのと飽きるので時々。
先輩隊員からチーズをもらった時には、泣くほど嬉しかった。

そんな生活を続けていたら、当然タンパク質不足。タンパク質が不足すると、指先から皮が剥けていくことを知った。

週1回のマーケットデーなら買えたよ!とか
冷凍庫のある店、探してごらん!とか
同期のみんなが肉についてアドバイスをくれたけれど、私の住んでいた村は僻地だったせいか、マーケットデーなんぞない。タクシーで2つ隣の街まで行かなければない。

冷凍庫のある店は2件見つけたけれど、どちらも冷凍庫として機能していなかった。巨大な収納ボックスと化していた。

鶏そのものを高額で売ってくれると言った人はいたけれど、そこまでして食べたいとは思わない。
東南アジアに住んでいた時に、命のお勉強は経験済み。捌き方も大体覚えている。でも後処理までは無理だ。

それに村で大金を使おうものなら、一瞬でその話は村中に知れ渡り、金をせびられる機会が増える。絶対に絶対に絶対に勘弁だ。


研修で首都に戻ったときには、奮発してゲストハウスでハンバーガーにかぶりついた。
すっかり肉を受け付けない体になっていたようで、即お腹を壊して痛い目を見たけれど、懲りずに首都滞在中はケンタッキーもバーガーキングも食べた笑

私たちの聖地、バーガーキング
かじりかけ


同期が全員が揃った日には、みんなで日本食レストランに行って、大はしゃぎしながら食べまくった。トンカツも親子丼も牛丼も、たまらなく美味しかったし、みんなでご飯を食べるってこんなに楽しいんだ。

口に合ったものを食べること
一緒に食べる相手がいること
食においてこんなことも大切な要素なんだなあと新しい学びがあった。

夢のような首都生活が終わり、保冷バッグを買ってソーセージを目一杯詰め込んで村に帰った。しばらくはそのソーセージで生き延び、ソーセージで生姜焼きやら親子丼やら作って自炊を楽しみました。

ソーセージ親子丼

そんな肉難民の私に、ついにチャンスがやってきた!!
1人で大きな街に買い物に出かけることになったのだ。

タクシーで30分のところにある街は、乗り合いバスのターミナルがあるので栄えている。
冷凍鶏肉はもちろん、きゅうりやじゃがいもなど、村じゃ買えない野菜も売られている。

それまでに2回この街に来ていたけれど、家具や生活用品を揃えるために、ぼられないようにボディガードについて来てもらっていた。
前述の通り、村の人の前でお金を使うところを見せるのは最小限にしたかったので、肉や嗜好品の買い出しはしなかった。

ところがですよ。今回は授業がなくなったから、教科書を買いに行くという口実ができたのですよ。ボディガードは農園に行ってるはずだから、おひとり様ですよ。
(過保護なので行くことを知ったら絶対について来た)

わざわざ一度家に帰り、大きいリュックに装備を変えてウキウキでタクシーを捕まえた。


生鮮食品以外の食品と生活用品が置いてあるお店がある。名はメルコム。日本の大きめな薬局のイメージ。
値段が決まっている分、ちょっとお高めのお店である。

まずは嗜好品をカゴに放り込む。
ミロ1杯分の粉だけで、村のマダムたちに囲まれてたかられて泣いたことがあるので、村では嗜好品は買わないと決めていた。

スプライト、オレンジジュース、お菓子。
ああ、選べることってなんて幸せなのだろう。

そして肉。ここには冷凍肉を置いているのだ。
手羽先と胸肉があり、手羽先の方がコスパがよかったのでお買い上げ。

トータル200セディくらい使った。
日本円で2000円くらいだけど、学校の先生のお給料が1200セディ。どれだけ高い買い物かお分かりいただけるでしょう。

きゅうりとじゃがいもも買った。久しぶりの野菜たちとの対面に店先で大興奮してたら、おばちゃんが面白がって安くしてくれた。ラッキー♪

本当はタクシー貸し切って、山ほど荷物積んで帰りたいくらいだけれど、見つかったらたかられる。だから、カバンに収まるだけ。

※たかられたことのない隊員はいないと思う。それくらいアフリカでは日常的なこと。だけど私の任地は治安が悪くて、荷物引っ張られるとか取り囲まれるとかザラだったので警戒度150%くらいで生きてました。


タクシーを降りてからダッシュで家に帰り、まずはスプライトで一杯。
本当は冷やしたいけれど、もう我慢できない。
喉を通るシュワシュワ感。甘ったるさ。なんて幸せなのだ。

その日の夜はもちろん鶏肉を食べる。

照り焼き 柚子胡椒味

手羽先だと思って買った肉は、手羽先と手羽元がくっついてるスタイル。なんか生々しいけど、お得感があっていいじゃないか。

砂糖と醤油の組み合わせは日本人の味覚のふるさとだと思う。匂いから幸せになれる。
私の住んでる村はムスリムの人がほとんどだったので醤油はNG。みんなが食べられないものを食しているんだぞ!という謎の背徳感もまたよかった。

骨は取っておいてスープに変身。これまた美味しかった!!


こうして肉の密輸を覚えた私は、村から1時間半くらいの観光地に隊員が訪れる度に遊びに行った。そして肉や野菜、ジュースやヨーグルトを詰められるだけ詰めて帰った。
あんまり買い出しに出かけると、それはそれでお金があることを示すことになるので、日本人が来るから会いに行くというのは最高の言い訳だったのだ。

おかげで私の食生活はずいぶんと安定して、指の皮も剥けなくなった。

それでも頻繁に買い出しに行けるわけじゃない。嗜好品は特に貴重で、1日1つだけと決めていた。
生きてるだけでえらい!という自分への毎日のご褒美だった。

このおかげで私は10kg痩せた。10kg痩せるとシートベルトが鎖骨に当たって痛いんだよ。

まあ、日本に帰って来てすでに7kg戻ったんですけどね。日本の空気にはカロリー含まれてるんですかね。


さらに帰国直前の年末、突然任地に串焼き屋台が登場した。パリピの兄ちゃんがソーセージと砂肝と鳥の足を売り始めたのだ。

謎のイルカのマッサージ機で遊ぶパリピ

肉が買えない私の任地で大革命である。
毎日賑わっていて、村の人たちもたくさん買いに来ていた。

謎のスパイスがまたご飯に合って美味しかった

アフリカ人は砂肝はあんまり食べないのかな?
1羽から1つしか取れないのに、串焼きになってお安く売ってるんだもん。砂肝好きにはラッキーな話!


アフリカではあんなにも鶏肉の確保に苦戦していたのに、今の私はコンビニでもスーパーでもサクッと買える。生肉どころか調理までされているものもあるのだ。

だけど、この日本の環境が幸せだとは言い切らない。

鶏肉が手に入らない代わりに豆でコロッケを作ったこと、ソーセージであらゆる料理を作ったこと、私はすごく楽しかった。
お隣家族が食べさせてくれるスープの魚だって大好きだった。
やっと鶏肉が手に入った時の喜びは、ファミチキを食べた今日よりもずっとずっと大きかった。

環境が変われば、幸せの形もコロコロと変わっていくのです。いろんな幸せの形があるから、人生が結構楽しいのです。

私はアフリカにいても鶏肉で幸せになれたし、日本でも鶏肉食べて幸せになれているよ。


最後に鶏肉以外の肉のことも少しだけ。
ムスリムの人も多いせいか、豚肉は外国人向けのスーパーでしか見なかった。あと豚肉売るよ〜って看板を出している専門店を見たことがある。

牛肉はスネの部分がたまにスープに入ってたけど、普通に食べることはなかったなあ。
というか、牛をあんまり見なかった。ヤギの方がたくさんいたし、ヤギ食べてる方が多かったかも。もちろんヤギは高級品。

いよいよ終わりますが、肉ネタだけで約4000字語るとは思いもしませんでした笑

今、口の中がハイボールとからあげモードなので、今度からあげ祭りをしたいと思います。

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