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可奈と会えるようになって、少しずつパワーを取り戻した私は趣味のイラストやダンス教室を再開し始めた。
当たり前だけど『子どもと会える』ことはパワーの源であり、逆にいうと会えないことは全てのエネルギーを奪う。
私はやっとバランスを取り戻し、夜も眠れるようになってきた。

裕太は「月に〇回、〇時間」などの決め事はしたくないと言い、土日のどちらか、タイミングが合う日に3人で会うことになった。

あとは、可奈の通院が月に1回程度、平日に行われたので同行するようになった。

いつも午前中に落ち合ってランチをして、夕方には帰った。
なるべくお弁当を作るようにして、母の味を思い出してもらおうと努めた。
可奈が喜ぶように、とキャラ弁にも挑戦した。

公園や市民館、ファミレスや水族館と、可奈を飽きさせないように様々な場所を提案した。平均で月に2~4回は会っていたと思う。

「こないだ花束作ってたの、あれ。良かったよ。」

初回の試行面会のあとに裕太に言われた。どうやら私は「試験」に合格したらしい。

お金は殆ど私が出していた。離れている間何もしてやれなかった分、何かしたかったのもあったし、裕太に得るものがあり、次回に繋がるようにという意図もあった。弁護士や裁判費用に比べたら安いものだと。

そのうち「保育園の運動会があるから来て。」と声がかかった。可奈が「ママも来て欲しい」と頼んだようだ。
可奈の頼みなら、裕太は断れない。

裕太が園の先生たちに「母親から虐待を受けていた」と説明していたそうなので気が引けたけど、運動会で頑張る姿が見たかったので、行くことにした。

初めて行く可奈の保育園だ。そこは、私が以前可奈を探しに行った園ではなかった。
ぞろぞろと体操着を着た園児たちが親御さんに手を引かれ、園庭に入っていく。ワクワクがこっちまで伝わってくるようだ。

裕太には「先生方にちゃんと紹介してね。」と伝えていたので、担任の先生が通りかかった時に「先生、可奈の母親です。」と紹介してくれた。

先生は私達の事情は気にしていなかったようだった。そして、可奈がニコニコしているのを見て、

「可奈ちゃん、嬉しそうだね〜。ママが来てくれて良かったね!」
と言ってくれた。

良かった。案ずるより産むがやすしだ。

他の子どもたちは、私の姿を見るととても驚き、ザワザワしていた。わざわざ私の顔を見に来る子までいた。

女の子が1人、近づいてきて「かなちゃん、お母さんいたんだ〜。」と言った。

可奈は幼稚園の中で「お母さんがいない、珍しい子」と子どもたちから思われていたのだ。その姿を思うと胸が苦しくなった。

可奈はどう反応するんだろう。不安に思い可奈を見ると、可奈は手を伸ばして「わたしのママだよ!」
と、誇らしげに紹介してくれた。
とっても嬉しそうで、良かった!!

初めて見る体操着姿の可奈。きちんと体育座りをしていて、ちゃんと並んでお遊戯をして、なんだか不思議だった。

やっと見れた、可奈の保育園姿。
成長を喜ぶと共に、空いてしまった時間の大きさを感じた。

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