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スタートアップが中小企業と一緒に2週間でフェースシールドを開発販売した話①

ものづくり系IoTスタートアップのピノベーションの代表 鳥羽です。
現在(6月後半)では少しずつ解消されてきたものの、4月中はコロナウイルスの広がりで医療物資などの不足の話をよく耳にしました。現在でも私の友人の看護師さんは、サージカルマスクを3勤務使い回すなど、十分とは言えない環境のようです。
ちなみに見出しの画像は、名古屋にある病床数500床前後の病院にて6月中旬に撮影したものです。

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開発の経緯

きっかけは非常事態宣言が出ている頃に遡ります。本業であるIoT事業の件で、お客様のところへ訪問することもなかなか躊躇われており、ピノベーションとしても、”今、社会のために何かできることはないか”と思っていたところ、知人からの紹介で

富永紙器有限会社(愛知県春日井市)の富永さんがフェースシールドを作りたいと言っているのだけれど、3Dプリンタがないので作れないから、ピノベーションさんの力を貸して欲しい

というお話をいただきました。

フェースシールドのフレーム部分を3Dプリンタや樹脂成型品で作る試みは日本各地で行われており、有名なところでは大阪大学がCADデータを公開しています。富永さんとつながったのも、ピノベーションがものづくり系のIoTをやっているため、3Dプリンタに詳しそうだからという経緯でした。

常識を疑え

最初に感じたのは、いきなり ”フレーム=プラスチック” というところへの違和感でした。既存製品の多くは、確かにプラスチックを使用しています。思い通りの形状に作れる加工性、消毒して繰り返し使える耐久性などの利点は非常に大きいです。私鳥羽自身も、プラスチックの製品設計や製品立ち上げを行っていたので、プラスチックには思い入れもあります。

一方で、プラスチックの締め付けには少なからず苦痛を感じる人もいます。私自身も、メガネの締め付けで肌が赤くなってしまうことがあります。また、サステイナブルが重要な時代に、非常時とはいえプラスチックの使い捨てってどうなんだろう、とか、3Dプリンタは急場を凌ぐのには非常に有益だが寄付ベースでやっていても持続的ではないのではないか、といったいろんな考えがグルグルしました。

それに富永紙器というくらいなので、富永さんは紙器のメーカーさんです。紙で作る方が圧倒的に早いんじゃない?など、富永さんとZoomで議論も重ねました。

とは言え、現場で使う方々の声を聞かないことには、本当に必要とされているものがどんなものなのかわかりません。そこで、富永さんに試作品を1日で作っていただき、試作品を持ってまずは私たちの大学院の先輩が経営されている病院へ行き、現場の方にご意見を伺うこととしました。

試作品を病院へ

4/23(木)にZoomで富永さんとミーティングをした後、さっそく4/25(土)に名古屋市北区の病院さんにアポをとって、富永さんと一緒にお伺いしました。病院はコロナ患者の受け入れはしていないものの非常にピリピリした雰囲気がありました。この病院では当時、品不足もありフェースシールドの入手が難しく、透明アクリル製の衝立なども品薄で入手できない状況ということでした。

まずは富永さんが作った試作品をつけていただきます。

結果はご覧の通りでひどい有様。
それに紙メーカーさんなのに一部分も紙を使っていないところに、富永さんの実直さを感じます。でも、試作品はこれで良いのです!まずはこれを叩かれ台として、現場の方々に忌憚のない意見をいただきます。

顧客と提供価値

我々スタートアップが製品を作るときは必ず「顧客と提供価値」、顧客は誰で、何を価値提供するか、を考えビジネスモデルを作り込みます。

私は更に「どうハッピーにしたいのか」まで考えることにしています。

顧客は誰で、何を提供し、どうハッピーにしたいのか

どうハッピーにするかを考えることで、的確な利用シーンの提案やユーザーエクスペリエンスまで考えることができるからです。この記事を書きながらも、どうハッピーに「するのか」と「したいのか」どちらを使おうと悩みましたが、「したいのか」の方が自分たちの世界観も入るので良いかと思います。

二話目に続きます。




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