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ものづくりは最高の社会経験

僕がミヤノカバーワークス(MCW)を立ち上げて、10年になる。今年15歳の息子は、物心ついた頃から【父親=カバー職人】だった。小学生の頃は「大きくなったら、お父さんの跡を継ぐねん!」と可愛いことを言ってくれた彼が、小学4年生の時、夏休みの自由研究にカバーを作りたいと言い出した。いくら父親がカバーを作る様子を見て育ったとはいえ、そんなに簡単にカバーを作れるわけがないけれど、得るものがたくさんあると思ったので快諾した。

難しい工程はもちろん手伝ったけれど、ほぼ一人でカバーを作らせた。教えても当たり前のように失敗するんだけれど、できないことを怒ったりはしない。ただし、手を抜いてるのがわかったら、厳しく叱った。その際には、なぜ手を抜いたらいけないのか、しっかりと説明する。手を抜くことにより生じる品質への影響、カバーと引き換えにお金をいただくことの難しさ、そしてそこに生じる責任など。最初は泣きべそをかいていた彼だったけれど、そのうち黙々と手を動かすようになり、結構しっかりとしたカバーが完成した。

小学生の自由研究として考えれば、この時点で大成功なんだろうけれど、どうせなら、職人というビジネスを体感させたいと、僕は思った。だから、自分の作ったカバーの魅力を、レポートにまとめさせた。

2代目レポートまとめ

カバーの実用性を証明するには、同じ条件(コース、風向き、機材)で、カバーの有無で何度も走りながらデータ取りする必要がある。彼のレポートは、ベストパフォーマンスで走れる状態で、カバー無→有→無→有の順に4回走り、それぞれの平均値を比較している。テスト前には、先入観(カバー有利)を捨てて走れ!とアドバイス。結果、かなりしっかりとしたデータが取れたと思う。約5.5kmのコースで平均速度が1.2kmアップという結果は、自転車競技の世界でいえばとんでもない機材効果になる。小学生の息子が自分の手で作ったカバーホイールが、マスプロメーカーも驚くようなスーパーホイールになったこと。もし有能な営業マンが、うまくブランディングしてくれれば、息子は立派な事業を立ち上げることができるのになぁ、と、著しく営業能力の劣る父は悔しく思うのだった。

そんな息子も今では、全然別の職業を志す中学3年生。でも、その職業はやはりクリエイティブなものだし、志望理由もしっかりと地に足のついたものだ。また、僕が行き詰って悩んでいる時も、幼い頃はただただ慰めてくれるだけだったのが、今ではとてつもなく素晴らしいアイデアをポンと出してくれたりするようになった。そう、カバーホイール職人ではないけれど、ものづくり人としてしっかりと2代目を継いでくれたと実感しているし、そしてカバーホイールを自らの手で作った経験が彼の成長を大きく後押ししれくれたと、僕は信じている。

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