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2024九大国語/第二問/解答速報

【2024九州大学/国語/第二問/解答速報】

出典は石川幹人『だからフェイクにだまされる──進化心理学から読み解く』。筆者の専門は認知科学。

問1「この協力集団の環境が、私たちに特有の感情や欲求を進化させた」(傍線部A)とあるが、具体的にはどういうことか、80字以内で説明しなさい。

〈GV解答例〉
狩猟採集時代における生存のために集団に属して役割分担し、子どもにもその役割を期待する環境が、人間に特有の自己肯定感と周囲から承認を求める欲求を育んだということ。(80)

〈参考 S台解答例〉
集団の役割分担に基づく密な協力を必要とする狩猟採集時代の集団の状況が、私たちに自己肯定感や承認欲求、達成感や満足感を積極的に受容することを推進させたということ。(80)

〈参考 K塾解答例〉
集団のメンバーの役割分担に基づき密な協力を行うという狩猟採集時代の集団環境が、自己肯定感や承認欲求や達成感や家族感を人々の心に生じさせていったということ。(77)

〈参考 Yゼミ解答例〉
密な協力を行う狩猟採集時代の集団にあった役割分担が、個性や能力の承認につながり、集団内の人間は自己肯定感や承認欲求、達成感や満足感を強めていったということ。(78)

〈参考 T進解答例〉
狩猟採集時代の集団における役割分担が、集団に不可欠な能力を保持すると思う自己肯定感や承認欲求、任された仕事をやり遂げた達成感と満足感を発達させたということ。(78)


問2「 "フェイク" が本当になっていく」(傍線部B)とあるが、そうなるための前提条件について説明しなさい。(5行)

〈GV解答例〉
行為主体の実力以上の難しい課題があり、主体の属する集団でその実現が期待されている。主体は自分にそれができると信じており、周囲にそれをアピールし、周囲もそれに任せる。主体は集団に対して責任を背負うことになり、それ相応の練習を続けていくことが条件となる。(125)

〈参考 S台解答例〉
「仕事を担当する力はいまひとつだな」と自分ではうすうす思っていても、自分を偽って「担当できる」と意欲的にアピールしてしまうと、周りの人々も「そんなに言うのなら」と本人の熱意に促されて "フェイク" にだまされたつもりになって担当を任せてみるという条件。(124)

〈参考 K塾解答例〉
「仕事を担当する能力はいまひとつだ」と当人がうすうす思うと同時に、自分は出来るという漠然とした信念を持ちつつ「担当できる」と意欲的にアピールし、また周りの人々も「そんなに言うのなら」と "フェイク" にだまされたつもりになって任せてみるという条件。(122)

〈参考 Yゼミ解答例〉
能力が不十分だと自分で気づいているメンバーが仕事を担当したいと申し出た場合、他のメンバーは、それがフェイクだとわかっていても、だまされたつもりになって任せてみる。このように、協力集団を維持するために、未熟なものにも役割を与え、一人前に育てようとする意識が働くことが前提条件になる。(140)

〈参考 T進解答例〉
本当は自分には困難な課題であっても、それに挑戦することを周囲に公言することで自らに社会的責任を課し、意気込みに欠けないように、また大人に見透かされないように心から「できそうだ」と自らを欺いて根拠のない自信をもとに挑戦を始めること。一方で、大人はそのフェイクに騙されたつもりで課題を任せること。(146)


問3「その背景では、自己欺瞞が一役買っているわけだ」(傍線部C)とあるが、具体的にはどういうことか、説明しなさい。(5行)

〈GV解答例〉
集団には誰もがやりたくない仕事もある中で、人間が周囲の励ましに共感し協力集団形成に成功したり、自身を鼓舞し未知の仕事に挑戦できるほど自己肯定感を高く維持できるように進化した背景には、できそうにないことをできそうだと思い返す心性が働いていたということ。(125)

〈参考 S台解答例〉
長老の激励の言葉に共感して、自信を持てるようになり、協力集団の形成に成功し、さらに未知の仕事でも挑戦できるほど自己肯定感を高く維持できるように進化した背後には、できそうにもないと思っていては意気込みに欠け、本心を見透かされてしまうので、心からできそうだと自分を欺くことが一助となっていたということ。(149)

〈参考 K塾解答例〉
長老からの励ましの言葉に共感し、自信が持てるようになり、協力集団形成に成功し、さらに自己を鼓舞して未知の仕事でも率先して挑戦できるほどの自己肯定感を高く維持できた背景には、素質があることの根拠がない状態でも自分の素質を心から信じるということがあった。(125)

〈参考 Yゼミ解答例〉
達成が難しい課題なのに「君なら絶対できる」という人の言葉に共感して自信をもったり、未知の仕事に率先して挑戦したりできるほど、人間は自己肯定感を高く維持できるようになったが、そのためには、自分に素質があることを示す根拠が何もない状態でも、漠然と「自分ならできる」と信じることが必要だったということ。(148)

〈参考 T進解答例〉
協力集団の成立には、本来は自信を持ちにくくやりたくないような仕事も割り当てる必要があるが、集団の長老が構成員に「君ならできる」と吹き込み自信を持たせることで、構成員本人も根拠がなくても自分ならできると本当に思い込み、未知の仕事でも率先して挑戦できるほど自己肯定感を高く維持できるようになったということ。(151)


問4「自己欺瞞が現代でもきわめて一般的であることは、次のような肯定的なスキルを問う質問の回答からも明らかになっている」(傍線部D)とあるが、「あなたの不親切さは平均以上ですか」という否定的な要素を問う質問をした場合、本文の論旨からどのようになると推論されるか、説明しなさい。(4行)

〈GV解答例〉
本文での「自己欺瞞」はできそうにないことをできそうだと思い返すことなので、「不親切さ」を問われた場合も自分は「親切にできる」と考える傾向が働き、当該質問に対して半数以上が「平均以上でない」と回答する。(100)

〈参考 S台解答例〉
文明社会の中で生活する現代人は、自己肯定感を抱くとともに、本当の自分を欺くことが承認を得る手段になっているので、自分が「不親切」であってもそうではないと偽ってしまうから、平均以下だとと回答する傾向が多くなる。(104)

〈参考 K塾解答例〉
協力集団の中で成長し自己肯定感や承認欲求を抱くようになる人々は、自分について否定的な要素を問う質問に対しては、自分には否定的な要素があると思いつつも、その質問を否定することが、平均よりも多くなる。(98)

〈参考 Yゼミ解答例〉
現代の人間は、自己欺瞞により自信や自己肯定感を高めており、実際は多少は不親切であると自覚していても自分は偽るため、「あなたは不親切か」という否定的な要素の問いに対して自分は平均以上と回答する割合は、低くなると推論される。

〈参考 T進解答例〉
自己欺瞞により自己に対する評価は潜在的に肯定的な傾向にあるため、否定的な要素を問う質問に対してはそれを否定しようとする人が多数となるため、平均以下と回答する人が多数を占めると考えられる。(93)


問5「現代社会の生活は狩猟採集時代とは大きく様変わりしている。それでも私たちが自己欺瞞の習慣を維持しているのは、どのような理由からだろうか」(傍線部E)とあるが、その「理由」を説明しなさい。(5行)

〈GV解答例〉
現代社会において自己欺瞞を要求する承認欲求の源泉である密な協力集団が希薄化した一方、狩猟採集期に培われた承認欲求自体は残り、金銭を媒介に満たそうとしても、それは周囲との競争を強いるので、生涯にわたり根拠の薄い自己の能力を主張せざるをえないという理由。(125)

〈参考 S台解答例〉
現代の文明社会は、狩猟採集時代のような密な協力集団が希薄になり、お金を稼ぐことを目的とする市場原理によって競争関係が生じ、自己肯定感を高めてアピールし、周囲の承認を得ることが一生を通じての仕事上の活動原理となったので、生涯にわたって自己欺瞞を保ち根拠の薄い自分の能力を主張せざるえなくなったから。(148)

〈参考 K塾解答例〉
狩猟採集時代のような密な協力集団が希薄になった、お金を稼ぐことが個人的な営みになっており周囲の人々の競争関係が生じやすい現代社会では、自己肯定感を高めてアピールし、周囲の承認を得るという一連の活動が一生を通じての仕事上の活動の原理となっているという理由。(127)

〈参考 Yゼミ解答例〉
現在の文明社会では密な協力集団が希薄になっているが、市場原理に基づく社会では周囲の人々との競争関係が生じやすく、自己肯定感を高めてアピールし、周囲の承認を得ることが個人の活動原理になるために、たとえ根拠が薄くても「自分は仕事ができる」と信じる自己欺瞞が現代人の習慣になるから。(138)

〈参考 T進解答例〉
狩猟採集時代のような密な協力集団が希薄な現代では協力集団による承認欲求は満たされず、代わりにお金を稼ぐことで基本的な生活を支え、人間関係を構築して承認を満たす。そのため、市場原理に基づく現代の文明社会では、周囲との競争を生き抜くための一生を通じての仕事上の活動原理として自己欺瞞に基づく自己主張が必要になるため。(156)


問6「こうした状況でアイデンティを模索すると、どの集団に所属する自分も自分らしく思えず、集団と関わるそれぞれの自分が仮の演技してるように感じられる」(傍線部F)とあるが、それはなぜか、説明しなさい。(6行)

〈GV解答例〉
現代社会において密な協力集団が希薄化した一方、複数の集団に所属して多様な人々と関わる生活が奨励される中で、かつてのように集団への責任と成長を伴った自己欺瞞ではなく、異なる集団ごとに承認を得るためだけの自己欺瞞がもてはやされた結果、自己の実態からかけ離れた「アイデンティティ」が併存することになるから。(150)

〈参考 S台解答例〉
アイデンティティは本来協力集団に自分ができる仕事を示して承認を得る手段であり、仕事のスキルを磨く責任を伴った自己欺瞞の発揮でもあったが、協力集団が希薄になった現代社会では、複数の集団に属して、様々な人と関わる生活が奨励される状況になり、アイデンティティを維持するには、集団ごとの数多くの自己欺瞞が不可欠になり、集団ごとに自分を偽る演技することになるから。(177)

〈参考 K塾解答例〉
生まれ育った協力集団への帰属が希薄となり、複数の集団に所属していろいろな人々と関わる生活が奨励される現代社会で、それらの所属集団へのアピール材料であるアイデンティティの確立を目指すと、所属する集団ごとに自分らしさをその都度作らねばならず、一貫した自分が持てなくなるから。(135)

〈参考 Yゼミ解答例〉
アイデンティティは本来、仕事のスキルを磨くための自己欺瞞が伴う、生まれ育った集団から承認を得るためのアピール材料であったが、協力集団が希薄になった現代社会では、人は複数の集団に所属しており、それぞれの集団で異なる自分らしさをアピールすることになるため、集団が数多くの自己欺瞞が不可欠になり、どの集団でも自分を偽っているという感覚が生じるから。(171)

〈参考 T進解答例〉
協力集団が希薄になった現代社会では、生まれ育った集団への帰属意識を得ることが難しく、市場原理に基づく競争を勝ち抜くために生涯にわたる根拠のない自己主張が求められ、不必要に自己欺瞞が高められる。さらに、複数の集団に属して人間関係を広げて生きることが奨励されるため、アイデンティティの維持のためには集団ごとに複数の自己欺瞞が必要になり、混乱して自分を見失うため。(179)

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